傷つけあう世の中に警鐘、優しい世界を訴え続けるマイメロディに見る”キャラクターの価値”とは
東京ウォーカー(全国版)

サンリオの人気キャラクター・マイメロディが、誹謗中傷をいさめるようなツイートを投稿し、反響を得ている。過去の投稿を振り返ってみると、世の動きに呼応して「癒やし」のメッセージを投げかけ続けている。近年、キャラクターはかわいいさだけじゃなく、役割やメッセージ性をもつものが人気を博している印象にある。キャラクターの祭典・サンリオキャラクター大賞が行われる直前の今、セラピー活動などを通してさまざまな形の癒やしを届けるマイメロディの活動から、現代におけるキャラクターの価値について考察してみよう。
誹謗中傷に警鐘を鳴らすツイートが話題「おそいとおもってもあやまろうね。ごめんね」
2020年5月30日、マイメロディ公式Twitterが次のような投稿をした。
「じぶんのかんちがいで だれかをきずつけちゃった。おそいとおもっても あやまろう。ごめんね。」
世間でインターネット上の誹謗中傷が話題となり、SNSとの向き合い方に不安が募る中、まるでそれに呼応するように癒やしのポエムが投稿された。このツイートには2万7000以上のいいねが付けられている。
そんなマイメロディは、現在「マイメロセラピー活動」を行なっている。毎週月曜日〜木曜日の19時48分〜19時51分には、TOKYO FMで「マイメロディのマイメロセラピー」という番組でラジオパーソナリティとして活躍。番組のリスナーから寄せられた悩みに答える内容がじわじわと人気を集めており、1週間の放送内容をまとめたものは、毎週金曜日にYouTubeでも配信されている。
同番組5月25日の放送では最近一人暮らしを始めたというリスナーが「ウイルスの影響で実家にも帰れず、友達にも会えず、大人なのに一人で大泣きしてしまうほどさみしいです」という悩みに対して、「寂しくて泣いちゃったときはね、お月様におやすみなさいと言ってから寝るんだよ」とマイメロディ独自の解決策で回答。リスナーを温かい気持ちにさせた。
マイメロディは直接的な言葉ではなくとも、疲れた心やすさんだ心に染み渡る優しい言葉でなだめてくれる。サンリオキャラクター大賞の投票受付期間が終了した翌日には「きょうは、な〜んにも しないよ♪」とツイート。休息することの大切さを促し、また、「いろんなことが べんりになると、わからないことが ふえてきちゃった。ほんをよむと、ヒントがつまっているね。」と自粛生活の中にあるポジティブな気づきを与えてくれたことも。おうち時間が増え、SNSを見ることが増えたもののマイナスな情報を見てはネガティブな気持ちになってしまっていたユーザーを癒やしてくれた。
マイメロディってどんなキャラクター?悩みを抱える女性に絶大な支持を誇る“癒やし”が特徴

マイメロディが誕生したのは1975年のこと。誕生当時は「LITTLE RED RIDINGHOOD」としてデビューし、マイメロディという名前はついていなかったが、誕生するとすぐに小学生の女の子たちから注目を集めた。しかし、1980年代後半ごろから積極的な新商品の販売がなくなり、いったん人気は伸び悩んだものの、1998年7月から放送された深田恭子のデビュードラマ『神様、もう少しだけ』で、主人公の女子高校生が好きなキャラクターとして登場したこともあり、同年のキャラクター大賞では人気が再燃。
その後、マイメロディは2005年から放送されたTVアニメ「おねがいマイメロディ」シリーズや、2010年に開設したTwitterが追い風となり、親子3代にわたって親しまれるキャラクターに成長。アニメを見ていた層がママとなり、今のキッズたちにも受け入れられている。現在に至るまで、10〜20代から人気を集めるアパレルブランドや、コスメやスキンケア商品などライセンスコラボをしてきたことが、その人気を裏付けている。
また、フリーアナウンサーの宇垣美里(※当時はTBS所属)が困難やつらい出来事をマイメロディになりきって乗り越えるという「マイメロ論」が話題になったのも記憶に新しい。マイメロディが発する飾らない等身大の言葉は、悩みを抱える年頃の女性から共感を集めることも多く、マイメロディのことを友達や家族のように感じるファンもいれば、自分の分身のように感じるファンもいるようだ。
このようにマイメロディの活動を振り返ると、現在の「マイメロセラピー活動」のみならず、45年間、女の子に優しく寄り添う存在として活動してきたキャラクターだったことがわかる。
「かわいい」から一歩踏み込み、“役割”を全うする現代のキャラクターたち

マイメロディに限った話ではなく、近年のキャラクターはただかわいいだけではない。生活に一歩溶け込む様子が人気を集め、時にはその個性を保ちながら我々が忘れかけていたメッセージを発信している。
例えば、日本のキャラクタービジネス界の“最前線”を走ってきたハローキティは2018年にYouTubeデビュー。キャラクターのYouTuber“CTuber”として、微笑ましいコンテンツを発信する一方で、国連とともにSDGsを積極的に推進し、変わりゆく世界で話題になっているものを“最前線”で発信。
また「ポケットモンスター」は、教育・保育・公共・医療施設内における子供向けの非営利使用に限定した、イラスト素材の無償ダウンロードサービス「ポケモンイラストラボ」を提供。ぬりえやイラストだけでなく、マナー啓発ポスターなど100種類以上の素材を公式サイトで公開し、子供たちの教育に役立てられている。
ネガティブだけれど可愛い「すみっコぐらし」のヒットも、「主役になることだけが幸せじゃない」という、生き方が多様化する現代の価値観にフィットしていることも人気の理由のひとつだろう。キャラクターの人気は、時代の変化や社会性も関係している様子だ。
また、エンタメ業界ではキャラクターの人気や個性を多次元で展開していく、IPビジネス化が推進。ハローキティがYouTubeの中でサンリオのことを「事務所」と呼ぶように芸能事務所化しており、キャラクターたちの個性を掴んで、伸ばすようなマネジメントがされている。現代のキャラクターたちは、ただかわいいだけではない。子供たちやファンに勇気を与え、メッセージの発信を通して、興味や関心を引くきっかけとなるタレントやインフルエンサーのような“役割”をもった存在でもあるのだ。
「新しい生活様式」において、暮らしのパートナーとしてのキャラクターを再認識

過去の取材でサンリオの担当者はマイメロディのことを「不安なとき、寂しいとき、うれしいことがあって誰かに話したいとき、良いときも悪いときもすぐそこにいて、どんなときも心に寄り添える存在になっていきたいと思っています」と教えてくれた。マイメロディの場合、キャラクターの本質は、人に寄り添って心に癒やしを与えること。それが形になったのがセラピー活動だ。
現在、マイメロディは先に紹介したラジオパーソナリティとしての活動のほか、マイメロディといつでも会話ができるアプリを通じて、トークルームでマイメロディと会話ができたり、電話をかけたりすることができるプラットフォームを展開。このほか、花の定期便サービス「LIFULL FLOWER」とコラボレーションした花とメッセージを届けるサブスクリプションサービスを提供し、多くの人をリアルに癒やす活動も展開している。
先が見えないコロナウイルスの状況、東京オリンピックの延期や経済の停滞、そして「新しい生活様式」にシフトしていく中、これまで以上に「見えないストレス」にさらされている現在。癒やしや安らぎを与えてくれる「キャラクター」の価値は、再び認識されていくのではないか。
文=於ありさ
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