幼馴染のホッキョクグマがのんほいパークで喜びの再会。慈しみ合うように余生を過ごす2頭にほろり

東海ウォーカー

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愛知県豊橋市の「豊橋総合動植物公園 のんほいパーク」にいる、仲睦まじい2頭のホッキョクグマ。ともに27歳のメスで、名前はクッキーとキャンディ。本来ホッキョクグマは単独行動を好むというが、一緒に泳いだりじゃれあったりと、見るものをほっこりさせてくれる人気者だ。クッキーが苦手な魚の頭部分を残すとキャンディがそれを食べるなど、お互いを補い合うように仲良く、平和に暮らしているが、この2頭には知られざるストーリーがあった。

おでこにつむじがあるのがクッキー(左)、少し体が大きいのがキャンディ(右)


1994年に遠くドイツからやってきた3頭


1994年5月、2頭は、それぞれドイツの異なる動物園からのんほいパークへとやって来た。その当時のキャンディは1歳半、クッキーは1歳になったばかりと、人間でいうとまだ幼稚園児くらいの年齢だった。さらに1つ年下のチャッピーというオスもほぼ同時期にドイツから来日。同年にオープンの「極地動物館エリア」の目玉として、一挙に3頭がのんほいパークに登場することになったのだ。3頭は幼馴染としてすくすく育ち、並んで寝る姿を見せるなど仲良く暮らし、すぐに人気者になったのだという。

「見て!おっきい魚取れたよ!」とクッキー

撮影に応じ、間近で大サービスのキャンディ


キャンディ、国内で繁殖に取り組むため円山動物園へ


幼少期から長らく一緒に暮らしてきた3頭に別れが訪れたのは2011年3月のこと。キャンディが、北海道の札幌市円山動物園に旅立つことになったのだ。

その目的は”繁殖”。野生のホッキョクグマは絶滅の危機に瀕しており、2010年には日本でも「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」が発足。国内の動物園・水族館の中で個体を維持するべく、積極的に繁殖に取り組むための個体移動に関する取りまとめが行われた。繁殖において重要とされている、個体同士の血縁関係の遠さなどを鑑みた結果、キャンディに白羽の矢が立ったのだ。

2頭ともアジが大好物!狙いを定めているクッキー


愛知と北海道、離れたあとの3頭それぞれの暮らし


日本国内でのホッキョクグマの未来のために旅立ったキャンディ。のんほいパークの元ホッキョクグマ担当飼育員・白井さんによると、「キャンディは北海道の方たちにすごく愛されていて、元気に暮らしていました。いろんなおもちゃをもらったり、写真をたくさん撮ってもらったりしていましたね。本州では高いホッケが北海道では安く手に入るので、おいしいホッケをたくさん食べて、ここにいたときよりも体が大きくなっていました」と、新天地でも愛される存在になったのだという。

北海道のホッケで脂肪を蓄え、体重が約2倍になったキャンディ

そして、キャンディは円山動物園で出会ったオスのデナリともすぐに打ち解けた。相性も良かったらしく、2012年の暮れに初めて出産。2頭の赤ちゃんを産んだのだが、1頭は死産、もう1頭については世話をする様子も見られたが、自身で誤って踏んだことが原因となり亡くなってしまった。その後も2度の出産を果たしたが、いずれも死産。残念ながら、結果としてキャンディは繁殖に成功することはなかった。

一方、のんほいパークに残ったクッキーとチャッピーは、キャンディがいた頃には見られなかった繁殖行動をとるようになったが、こちらは妊娠に至ることはなかった。それでも2頭は仲良く悠々自適に暮らしていたが、2017年10月、チャッピーが腎臓の機能不全であることが発覚。懸命の治療により、一時は体調が回復したのだが、2018年1月に再び体調が悪化し、天国へと旅立ってしまった。クッキーは、キャンディに続きチャッピーとも別れることとなり、1頭で過ごす様子はどことなく寂しそうに見えたという。

クッキー&キャンディ8年ぶりの再会


2019年3月、円山動物園で繁殖に取り組んできたキャンディも、年齢や体調のことを踏まえ、余生を過ごすべく、古巣であるのんほいパークに戻ることとなった。キャンディにとって1歳半の頃から約17年間過ごしていた場所ということで、再び慣れるのに時間はかからなかった。

ただし、2頭は8年ぶりの再会、かつクッキーは直前の約1年を単独で過ごしていたため、2頭の再会は慎重に進められた。キャンディが戻って間もない頃は、午前と午後で交互に放飼場に登場する形式をとり、2頭が接触しないように配慮がなされていたのだという。

「8年ぶりに会うので、最初はお互いに距離感を保ち、近寄らなかったんです。今では一緒に横になって寝るくらいの関係性にまで戻ってきました」と白井さんは目を細める。様子を見ながら徐々に接触の機会が設けられ、今では昔のように仲のいい2頭の姿が見られるようになったのだ。

キャンディが戻ってきて1年、一緒に泳ぐ姿も見られるように

岩の上での食事を終え、遊び始めるクッキー


2頭の仲睦まじい姿を見にいこう!


現在、東海3県でホッキョクグマを見られる動物園はのんほいパークだけ。さらに、全国に視野を広げても、動物園・水族館で展示されているホッキョクグマの個体数は40頭を切っている(2020年9月時点)。さらにクッキーとキャンディのように仲良く暮らす2頭、というのはさらに希少といえるだろう。

1度は離れて暮らし、辛い死産を経て古巣へ帰ってきたキャンディと、幼馴染を亡くしたクッキー。慣れ親しんだのんほいパークで再会し、余生をのんびりと、気づかい合うように過ごす2頭。その心温まる暮らしを観に行ってはいかがだろうか。

※のんほいパークでは3密を避けるため、動物のエサの時間が不定期になっていたが、9月より再び時間を固定。ホッキョクグマは毎日11時と14時30分にエサやりタイムが設けられている。

2頭のじゃれあう姿はシャッターチャンス!

お食事タイムには、ダイナミックに飛び込む姿が見られるかも(写真はクッキー)


※「のんほいパーク」では、新型コロナウイルス感染拡大予防策として複数箇所にアルコール消毒を設置するほか、レストランでは席数を減らし、売店では飛沫防止カーテンを設置するなど、感染症対策を実施中。

●のんほいパーク 豊橋総合動植物公園 / 住所:愛知県豊橋市大岩町大穴1-238 / 電話:0532-41-2186 / 時間9:00~16:30(入園~16:00) / 休み:月曜(祝日の場合翌平日)、12月29日~1月1日 / 入園料:高校生以上600円、小中学生100円ほか

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