バンクシー展のプロデューサー・アレクサンダー氏インタビュー「ストリートアート=破壊行為ではない」

関西ウォーカー

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キュレーター兼プロデューサーのアレクサンダー・ナチケビア氏

イギリスを拠点に活動し、ストリートアートで世界を魅了するバンクシー。彼の作品が70点以上集結する「バンクシー展 天才か反逆者か」が大阪南港ATC Galleryで開催中。

2018年からのモスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港、そして今年の横浜会場を経てついに大阪での開催に至った。今回、ロシア在住のキュレーター兼プロデューサーのアレクサンダー・ナチケビア氏にインタビューを行い、バンクシーの魅力はもちろん、このコロナ禍で開催する意義などを聞いた。

発表されたばかりのトイレの作品も再現展示!その狙いとは

消費社会を批判したユニークな作品も多数展示

EUの問題を投げかける「ブレグジット」


―「バンクシー展 天才か反逆者か」の見どころはどういったところでしょうか?

「バンクシーの作品というのはストリートアートであるが故に現在では残されていないものがあるのですが、この展覧会では世界中のコレクターの協力を経て、作品のオリジナルそのものが展示されているというところが見どころです。

さらに、作品だけではなくインスタレーションや動画、マルチメディアなどさまざまな形態で展示を行っているので、より一層バンクシーの世界に没入できると思っています。彼の作品はユニークなものもあれば、政治的に難しいことを投げかけてくる作品もあります。ぜひその多面的なものを感じてもらえたらうれしいです」

コロナ禍で発表されたトイレを再現展示


―ユニークといえばトイレの作品はこのコロナ禍で発表されて話題となりましたね。再現展示はこの大阪が初ということですが、いつ頃から展示しようと考えられたのでしょうか?

「インスタグラムで見た時から『再現しなければ』と直感で感じ、構想を練り始めました。というのもバンクシーがユーモアにあふれた人物であるということを知ってほしかったからです。展覧会を開催するにあたって日本のスタッフといつも話していたんですけど、私は『何をするにしても、遊び心が必要だ』と言っているんです。我々の生活のどんな時でも、楽しさがないと意味がありません。なので例の作品を見た瞬間にトイレの再現展示を作って遊び心を増やすことにしました」

コロナの影響で気づかされることも

各都市で一番人気の「ガール・ウィズ・バルーン」


―2018年から世界6都市で開催されてきた展覧会ですが、最も反響のあった作品は何でしょうか?

「どこの都市でも『ガール・ウィズ・バルーン』は一番人気です。他の作品とは違いますし、ロマンチックでハートフルな作品だからだと思います」

―「ガール・ウィズ・バルーン」はアレクサンダーさんも一番好きですか?

「基本的に人とは違うものが好きなので、一番というわけではないですが、好きな作品のひとつです。バンクシーの作品はイギリス特有のユーモアのセンスが隠れているところが重要だと思います。あえて挙げるとすれば、私は『グラニーズ』、『ドーナツ』シリーズ、『ターフ・ウォー』が好きですね」

お婆さんの平穏な絵かと思いきや言葉にも注目したい「グラニーズ」

保護下にある消費社会を批判する「ドーナツ」シリーズ

チャーチルの頭に芝生の「ターフ・ウォー」


―今も世界中では新型コロナウイルス感染症の影響が大きいですが、そんななかで展覧会を開催する意義とは?

「私自身この半年ほどで『世界とは次の瞬間には、すぐに変わってしまっている』と気づかされました。例えば友達と会って話をすること、レストランに食事に出かけること、旅行に行くことなどは、実は貴重だったし、些細なことが重要であることを実感しています。パンデミックという状況ではあるけれど、展覧会では世界はどんなことが起こっているかをお見せすることができます。

さらにアートが普遍的なものであり世界の共通の言語であるということは改めて知ってもらえるかと思います。コロナだけではなく、私たちの周りにはいろいろな問題がありますけど、アートというのはその解決の橋渡しの役を果たすもの。世界を一つにしてくれる手段であるということを理解してもらえるかと思います。今回コロナ禍において展覧会を開くことは難しいことでした。今回開催できたことは奇跡的だとも思っています」

子供の無邪気な笑顔と防弾チョッキが不気味な「ポリス・キッズ」


バンクシーは天才?それとも反逆者?

戦車の構図が天安門事件を想起させる「ゴルフ・セール」

有名な同名映画を賛辞する「パルプ・フィクション」


―「天才」か「反逆者」という問いがタイトルになっている展覧会ですが、アレクサンダーさんはバンクシーのことをどのようにお考えですか?

「私の答えはいつでも『天才』です(笑)」

―即答ですね(笑)。ではなぜこのようなタイトルを付けたのでしょうか?

「実はモスクワでスタートした当時はバンクシーというのは今ほど人気がなくて、私の友人に聞いても『バンクシーなんて知らない』という返事が多かったのです。しかし『ガール・ウィズ・バルーン』を見せると『その作品なら知ってる』と返ってきました。なので最初の展覧会はバンクシーのことをもっと知ってもらうということが目標だったのです。

ロシアではストリートアートは違法で見つかれば逮捕は免れません。しかし『ストリートアート=破壊行為ではない』ということをもっと知ってほしい、バンクシーはアーティストであって反逆者ではないということを訴えたかった。そう言った理由からこのタイトルを名付けました。私がそういったことを話すと『アートと破壊行為の違いは何か?』と質問されるのですが、私はいつも『絵を見た人が考えさせられて、行動に移す、それくらいの印象や意味が与えらるものであればアートである』だと答えています。そういう願いを込めてモスクワ展のみならず世界を回るときでもタイトルは変えずに行こうと思いました。すべてのストリートアートが破壊行為ではないというのを訴えていきたいと思っています」

イギリスの議会を皮肉たっぷりに描いた「モンキー・パーラメント」


展覧会「バンクシー展 天才か反逆者か」は2021年1月17日(日)まで開催される。

取材・文=さくらいけんたろう

※お出かけ前に 公式WEBサイト でチケットの販売状況をご確認ください。
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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