話題のCM動画「ながらー」とは。仕掛け人が語る「こだわりは共感と肯定」

2020年11月5日 18:00更新

東京ウォーカー(全国版)

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「ながらーに、プルーム」。JTの加熱式たばこ「プルーム・テック」シリーズの新広告として今年から展開しているTVerやAbema等のCM内に繰り返し登場する短いフレーズ「ながらー」が今反響を呼んでいる。キャッチーなイラストと耳に残るメロディを組み合わせたアニメーションCMは、喫煙シーンが一切なく、「お風呂にスマホを持ち込んで猫動画を見る」といった、生活の中でのあるあるネタを散りばめた内容だ。CMのテーマとなっている「ながらー」とはいったい何なのか、またそれを「プルーム・テック」の広告に取り入れた狙いを、同広告でクリエイティブディレクターを務める會澤浩さん(會澤事務所)に聞いた。會澤さんは、これまでに「大人たばこ養成講座」や「あなたが気づけばマナーは変わる。」といったJTの広告も手掛けている。

プルーム・テック・プラス


昭和の「ながら族」から進化した令和の「ながらー」に着目

「ながらー」CMでクリエイティブディレクターを務める會澤浩さん

――SNSなどで「ながらー」CMが反響を呼んでいますが、まず今回のCMの制作経緯を教えてください。

「4月に施行された改正健康増進法のタイミングでおうち需要が増えるし、これまで加熱式たばこを歯牙にもかけなかった人も試すだろうと考えて、どこにプルーム・テックの需要があるかと改めて考えたときに『“ながらたばこ”をするシーンって多いよね』と考え至ったのが今回のCMの出発点です。紙巻きたばこの正統進化が、一本ずつ加熱するタイプの加熱式たばこならば、プルーム・テックは言わば派生進化。一回だけ吸ってもいいしまとめて吸ってもいい、喫煙という行為に区切りがなく、吸い方の自由度が高いのがプルーム・テックの一番のポイントであり、特長だろうと考えました。そこで、たばこが主役じゃなく、たばこを吸う人が熱中していることやその時にしている行動を邪魔しない、誰かの“夢中”に付き合うのに最適なたばことして価値を再提案すべく『ながらー』をテーマにCMを制作しました」

會澤さんとJT河内さんの打ち合わせの様子


――CMに登場する「ながらー」は、どういった人を指しているのでしょうか?

「ながらーとは、同時に、ふたつ以上のことを楽しむ人たちのことです。食べながら、飲むというような同義性の高いものではなく、異なる五感を同時に使いながら何かを行なうのが特徴です。パチンコや麻雀をしながらたばこを吸うような昭和のながら族から、今だったらソシャゲや動画、SNSだったり、今までになかった形のながらをする進化系がながらーです」

――「フレーズが耳に残る」と言った声もあがっていますが、どういった反響が届いていますか。

「SNSを見る限りでは、反響の3割が共感で2割がネガティブ。TVerやAbemaTVで流れるときは『ながらーにプルーム』ってフレーズが何度も繰り返されるのでそれが嫌がられているみたいです(笑)。他には、替え歌のようにフレーズに合わせてオリジナル歌詞を書いてSNSに投稿したりしている人もいるようです。CMは良くも悪くも注目されるほうが印象に残るし、嫌われるにしてもすごく嫌われているわけでもないな、というのは感じるので、ある意味狙いどおりかなと思っています」

たばこを吸わないたばこCM、狙いは「共感」

「あるある」と感じさせる共感性の高い内容が特徴

――アニメーションでのクリエイティブにした狙いはどこにあるのでしょうか。

「ながらーって、実写にすると普通の人たちになってしまって画にならない。一度二次元に変換することで、省略された世界の中でリアルな表現も抽象的な表現も描けるので、最初からアニメーションで行こうと決めていました。放映した動画にも顔が猫になったりソファと合体したりする描写がありますが、あれは実写合成でやってしまうと気持ち悪い。イラストチックだから許せるんですよね。アニメーションは実写より手間もかかりますが、きちんと使えば自由度が高い表現だと思います。2019年末に最初の企画プレゼンをして、年が明けた頃からイラストレーターとして(寄藤)文平くんに入ってもらいました。最初は筆や鉛筆タッチの案を挙げてもらいましたが、今回はかちっとしたソリッドで太い線でモダンなトーンに。さらにアニメの動きはしっかりつけることで今どきの表現にできるかなと」

寄藤文平さんによるラフ。本編と異なり筆ペンのゆるいタッチ


――「ながらーに、プルーム」のゆるい歌声も話題になっていますが、音楽はどなたが制作しましたか?

「セカイイチというバンドをしている岩崎(慧)くんが作曲も歌唱も担当しています。音楽の発注は複数社に同時にお願いして、そのときはもっとかっこいいものをイメージしていたんですが、岩崎くんから戻ってきたデモはいい意味であんまりイケてなかった(笑)。ただ、共感ってちょっとイケてないぐらいがちょうどよくて、フレーズや歌声に親しみやすさを感じたので岩崎くんにお願いしました。なので、オンエアに使われているものは、ほとんどデモテープから変わっていません」

――制作の立場から、こだわったポイントがあれば教えてください。

「1ユニットを6秒におさめることです。TVや新聞、雑誌といったオールドメディアは出稿量が勝負になりますが、ネット広告はスキップされてしまうので、最低限再生される6秒で伝わるように作っています。この6秒1ユニットをどう作るかという点は、最後のフレーズを『ながらーにプルーム』に固めることで、前の2フレーズに単語を入れればブロックのようにどんどん積み重ねていけるというのを土台にしています。また、今は動画サイトで繰り返し放映されていますが、たとえば喫煙所のサイネージのオシャレな広告の合間に6秒だけ『ながらーにプルーム』が流れるようにしたいんです。新聞広告の大きな出面よりも、ユーザーの隙間に入っていけるような展開がいいですね」

――映像内にながらーが「プルームテックを吸う」映像が出てこないのも特徴的です。

「喫煙表現に関する規制の関係もありますが、意図としては見た人に先入観を与えたくなかった。喫煙を前面に打ち出すと喫煙所ぐらいでしか流せないですし、たばこが嫌いな人にはスルーされたり、嫌悪感を与えてしまう場合があります。そこで、スマホを見ながらお風呂に入ったり、音楽を聴きながら仕事をしたりという、多くの人にとって身に覚えのある日常のひとコマを表現することで共感を感じてもらいたかった」

毒も感じる「ながらー」キャラ設定は肯定の裏返し

【画像】CMに登場する「ながらー」一覧。どこか毒を感じるキャラ設定に思わずうなずいてしまう

――ながらーの特集サイトには、CMに登場するながらーの細かいキャラ設定まで書いてあります。実在のモデルはいるのでしょうか?

「もちろん、空想では描かないです。自分自身だったり自分の友人だったり、半径50メートル以内の人の生活を見ていて『ああ、こういう人いるよね』っていうリアリティを拾っています。ラベリングすることの面白さもあるんですが、リアリティを盛り込むことで『わたしもながらーだな』ってみんなが共感してくれることが狙いです」

――「あるある」と共感できつつ、ちょっとブラックなユーモアもありますよね。

「実は多くの人がマイルドオタク化していて、趣味として公言するのは恥ずかしいけど実は熱中している作品だったりコンテンツがあるという人は結構いるんです。まずはそういう人たちを肯定して、応援することが重要だろうと。あと、若者を代弁してあげたいという気持ちもあります。たとえば、テラスハウスを研究していた文平くんが、若者が一番言われたくないことは『将来何をしたいの?』という質問だと話していたのですが、世のおじさんはこういうことを平気で聞いてしまうじゃないですか(笑)。そういった毒もいつか出していきたいですね」

――今後のCMにも新たな「ながらー」は登場するのでしょうか?

「現在制作中の第3弾には、新しいながらーとして『ちぇっかー』が出てきます。オンライン飲みで、背景に写り込んでいる相手の部屋を凝視して、どんな趣味や生活なのかをチェックしがちな人ですね。他には、在宅時間の増加で多くなり始めた『くっかー』。料理をしはじめてオリーブオイルにこだわったりするけれど、基本ができていないような人なんかを考えています(笑)」

新型コロナで一億総「ながらー」化、今後の変化は?

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――世の中の「ながらー」の増加には、どんな理由があると思いますか。また、今後どうなっていくと思うかお教えください

「今の若い世代の人たちが特にマルチタスクに順応した育ち方をしているからだと思います。僕らの世代で言えば受験勉強をしながらラジオのオールナイト放送を聴いたり、あるいはウォークマンが登場して何かをしながら音楽を聴く、といった文化がはじまりました。現代ではスマートフォンの登場で、食事しながら情報をチェックするのが当たり前になりましたよね。ガジェットが発達するとながらーが増えるという点と、スマホで常に人とつながれる状態になってしまったので、ながらをせざるをえないし、それにみんな順応している点があると考えています。新型コロナウイルス感染症でその傾向が加速して、自宅にいても公私の境目がますます見えなくなってきているので、ながらーもさらに増えていくのではないかと思います」

――ながらーはテレワークといった新しい生活様式から見てもタイムリーですが、こうした変化も見据えていたのでしょうか。

「実を言えば、世の中の変化を見越していたわけじゃないんです。第1弾を3月にオンエアした後、緊急事態宣言の発令で全国的に巣ごもりがはじまって、『これはまずいな』と思いました。日本に住む多くの人がながらーになった、なることを強いられた中で『ゲームして一生終えられたらなあ』なんてCMは怒られるでしょう(笑)。なので、第2弾は若干方向性を変えて、第1弾より生活のリアリティを強めて、共感度を高めた内容にシフトしています」

――コロナ禍で生活が激変する中、ながらーは今後どういった変化を遂げていくと思いますか?

「僕はそんなに変わらないと思うんですよ。新しい生活様式って言いながら、新橋の飲み屋にはびっくりするほどおじさんたちがいるんだから(笑)。リモートワークも広まりましたが、オフィスが一切なくなることもないでしょう。リモートワークの定着などの変化で、リダンダンシー(冗長性)が社会からさらに失われていっても、ちょっとした余裕や無駄は生き残ると思うんです。人生から無駄をなくすのが好きな人ももちろんいますが、みんながみんな無駄をなくしてミニマリストになりたいわけではないですから。僕も部屋はちょっと散らかっているほうが好きですし(笑)。直接商品を売り込まない「ながらー」CMもそういった無駄のひとつ。人生や社会はちょっと無駄があるほうが楽しかったり生きやすかったりするから、そういう人たちを私たちは応援しますというメッセージです。ある意味で、そうした無駄の象徴がたばこですから。少し毒があったほうが人生は輝くのだと思っています」

< 會澤 浩さん プロフィール>
1982年博報堂入社。CMプランナー、クリエイティブディレクターを経て、博報堂C&D常務取締役に。1999年「日産ルネッサンスキャンペーン」以降、カルロス・ゴーン体制下の日産ブランドクリエイティブの制作責任者を務める。2002年に會澤事務所を設立。企業のブランディングや戦略立案をはじめ、企画、コピー、演出もこなす。JTではこれまでに「大人たばこ養成講座」や「あなたが気づけばマナーは変わる。」マナー広告を手掛ける。

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