数字で読み解く動物の不思議。キリンの角は2本ではなく5本だった!

関西ウォーカー

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春が近づいてきて、動物園に行くのを心待ちにしている人も多いのでは。今回は、珍鳥のキーウィは実は体の4分の1もの大きさの卵を産むなど、意外と知らなかった動物にまつわる「えっ!?」と驚く数字に注目。動物ウォッチングをさらに楽しくする“不思議”を紹介する。

天王寺動物園で17年のキャリアを持つ獣医師の西岡真さんに、キーウィをはじめキリンや牛の仲間など同園で飼育されている動物が持つ「ビックリ数字」を聞き、その謎を解説してもらった。

キリンには角と首の骨にも秘密の数字が隠されている


小さく進化したキーウィ。卵は体の“4分の1”もの大きさ

まず1つ目は、国内では大阪市の天王寺動物園だけで2羽のみ飼育されているという、飛べない鳥のキーウィ。キーウィの体重は約2kgだが、卵の重さはなんと約500g。体重の4分の1もの大きさなんだとか。

ニュージーランドの国鳥で絶滅危惧種のキーウィ


「キーウィの体重は約2kgとニワトリと同じぐらい。卵は白っぽい色ですが、ニワトリと比べ長細いのが特徴です。孵化させるためにオスが75~95日間、卵を温めます。産卵を実際に見たことはありませんが、体重と比べてとても大きな卵を産むので、母鳥の産みの苦しみは相当だと思います」

「キーウィは遺伝的に、アフリカのマダガスカル島に17世紀頃まで生息していた非常に巨大な鳥、エピオルニス(絶滅種)の近縁。昔はキーウィももっと大きかったと考えられていますが、環境に適応しながら体だけが小さく進化し、卵は大きいままだと言われています」

左がキーウィ、右がニワトリの卵。キーウィの卵は成人男性の手のひらに収まるぐらいの大きさ

キーウィの体と卵を比較した標本。母鳥のサイズに対して卵の大きさの割合が世界一大きい

キーウィの卵が母鳥の体内にあるときのレントゲン写真。その巨大さがよくわかる


あんなに長いキリンの首。骨は人間と同じ“7本”

2つ目は動物園の人気者・キリンについて。長い首が特徴でそこがまたかわいらしくもあるが、ああ見えて、実は首の骨の数は人間と同じで7本。

約2mある長い首なのに、骨の数はほかの哺乳類と同じで驚く


「哺乳類の頸椎は基本的に7本で、人間、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イルカやクジラも7本です。ただ、例外があり、ホフマンナマケモノとマナティーは6本、ミユビナマケモノは9本」

「キリンの首の平均的な長さは約2mで、首の骨の長さは1本約30㎝。高いところにある木の枝の葉を食べるために伸びたという説がありますが、化石の研究によると、徐々に伸びたわけではないようです。大昔のキリンは、現在のキリンより首が短かったようですが、突然変異で首の長いものが誕生し、それが生きていくうえで有利だったので、首が短いキリンは絶滅し、首の長い遺伝子だけが生き残ったと考えられています」

キリンの首の骨の標本。1本1本は長いが、確かに7本


隠れているだけでキリンの角は全部で“5本”

続いて3つ目の数字もキリンから。細長い脚で背が高く、独特の体の模様が遠くからでも目立ち、その頭には角(ツノ)が2本あるように見えるが、実は5本だという。あと3本は一体どこに?

頭頂部に2本の角があるのはわかるが、実は前頭部に1本、後頭部にも2本ある


「キリンは雌雄(しゆう)ともに、前頭部に山のような角が1本、頭頂部に棒状のものが2本、そして後頭部にこぶのような角が2本あります。サイズは長いもので約15㎝です。

キリンの角は、ほかの動物の角とは違い骨でできていて、皮膚と毛で覆われています。一見してわかる頭頂部の大きい2本の角は生まれたときから生えていて、お母さんの体を傷つけないよう折り畳まれた状態で生まれ、生後1~2週間までに立ち上がって角になります。ヤギやヒツジなどのほかの動物は、生まれたあとに角が生えはじめ、成長とともに伸びていきます」

「キリンはオス同士の闘争のときにネッキングと呼ばれる、頭を振り回して相手のお腹を角で突き上げたり、首を角で叩いたりする特有の行動をします。振り回して相手に当てるので、前にも上にも後ろにも角があるほうが、よりダメージを与えることができるのかもしれませんね」

頭頂部から見ても2本しか確認できないが…

キリンの角の解説図を見ると、しっかり5本ある

キリンの頭骨標本。頭骨から角が出ているので骨であることがわかる

キリンの頭骨標本(レプリカ)


ウシもカバもイノシシも上の前歯は“0本”

そして4つ目は、カバやイノシシ、ラクダ、キリン、ヤギ、シカといった牛の仲間(ウシ目または偶蹄目)は、上の前歯が0本であること。

エサを食べる牛の仲間、ミミナガヤギ。上の前歯がない


「牛の仲間は、上の歯12本+下の歯20本で、全部で32本あり、特徴として下の前歯は8本ありますが、上の前歯はありません。上の前歯の歯茎は硬く、歯床板(ししょうばん)となっていて、まな板のような感じです」

「上の前歯は、進化の過程で退化したと考えられます。舌で草や枝葉を巻き取って食べるので、上の歯がないほうが食べやすいのでしょう。下の歯を包丁のように、上の歯茎をまな板のようにして使い、草を切るようなイメージですね」

エランドの頭骨の標本。左が上顎、右が下顎の骨

進化してなくなった上の前歯

扇状に並んだ下の前歯でエサの植物を切って食べる


今回の「ビックリ数字」を意識して、さらにじっくりと動物を観察すれば、新たな発見に出会えるかも!

取材・文=下八重順子

※来園者数が多く園内が混雑してきた場合、入園を制限することがあります。
※最新の状況については事前に公式サイトをご確認ください。
※写真は一部イメージです。
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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