チャコールペンシルで描かれる漆黒の動物たちがSNSで話題に!“瞳を描かない”理由に込められた思いとは?

東京ウォーカー(全国版)

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デッサンなどで使用するチャコールペンシルで描かれた、モノクロームの動物たち。動物が持つ野生の力強さと儚さを表現し、展覧会を中心にSNSでも注目されているクリエイターの美沙乃さん(@MISANOpom)。

「Everything Stays」。飛び跳ねる鹿からは、生命の力強さを感じさせる


今回は美沙乃さんに、作品への思いや動物を描き始めたきっかけなどを聞いた。

動物モチーフに込められた願い。「動物はとても純粋」

動物を描き、関西を中心に個展や展示を行う美沙乃さん。もともとは動物を描いていたのではなく、人物の顔を鉛筆で画面いっぱいに描く作品を制作していたという。そんな彼女が動物を描くことになったきっかけを話してくれた。

「たまたまインターネットで水中に墨を落とした様子の画像が目に入り、『鉛筆でこういうことができないかな?』と思って描いてみることにしました。以前から好きだった馬を描いてみようと、部屋に落ちていた適当な紙に描いたのが始まりです」

「無題」。向き合う馬から感じる躍動感に、つい時間を忘れてしまう


そのときに描いた絵を、当時関わりのあったアートディレクターに見てもらったところ、「この方向でやってみては」とアドバイスもらい、動物を描き続けていくうちにのめり込んでいったという。その頃に制作した「hope」というカエルがモチーフの作品がきっかけで、多くの人の目に留まるようになったそうだ。

「hope」。キャンバスを登るカエルたちは、今にも動き出しそう


動物をモチーフにし続けている理由について、「私たちが日々の生活の中で感じている『得も言えぬ感情』が積み重なって、いつしか美しい形へと成してくれることへの願いを込めているんです」と話す。

「人間には感じられない純粋さや、崇高で神秘的な魅力を動物に感じています。自分では消化しきれない感情が、いつか美しく、力強い命へと形を変えてくれたらすごく救われますよね。その願いをモチーフに込めています」

「LaLaLa」。白黒模様のシマウマは、モノクロの世界観にぴったり


“漆黒”の秘訣はチャコールペンシルにあり!

美沙乃さんの作品の特徴は、チャコールペンシルを使って漆黒で描かれるモノクロームの世界観。数々の作品を発表してきたが、今でも根強く人気なのが「恐慌」というザトウクジラをモチーフにした作品だ。

「恐慌」。跳ね上がるザトウクジラは自然界の美しさと恐ろしさを感じさせる


そのほかにも「オオカミやフクロウモチーフの作品も、SNSで多くの反応をいただきます」と美沙乃さん。美沙乃さんの作品を見て、何年にもわたり展示を見に来るファンができたり、「初めて絵を部屋に飾りたいと思った」という声がいくつも届いたりしたという。中には、作品をタトゥーにしたファンもいたとか。

「狂愛」。何を考えているかわからない危うさに引き込まれる


美沙乃さんがチャコールペンシルを使う理由は、チャコールペンシルによって作られる墨を水中に落としたような表現が、「私たち人間に残留する、得も言えぬ感情を表すのにぴったりだったから」だそうだ。

「最初は鉛筆で描いていたのですが、光に当たったときのテカリが気になり、黒いところはもっと真っ黒にしたくてチャコールペンシルを選びました。そうしたほうがモチーフの生命力が強くなる気がして」

「The Last Of The Real Ones」。1頭のオオカミと黒い影を描いた息をのむほど美しい一作


美沙乃さんに「どんな動物をモチーフにするのが好きか」と聞くと、「鳥と馬」と答えてくれた。「毛の長い動物は、毛の流れを考えながら描くのがとても好きで、最近は鳥のお腹あたりの羽毛を描くのも楽しいです。顔のシワを描いて『ウーッ』と怖い顔をした動物の表情を作っていくのも好きですね」と話す。

「睦月の鳥」。長い尻尾が美しく、細かいところまでじっくり見たい作品

「勇敢で静かな出」。どこからか飛び出したような馬たちの疾走感がかっこいい!


また、逆に描くのが大変な動物は「ヘビ」だという。「ヘビのうろこを描くのがとにかく大変で、『なんでこれを選んでしまったんや…』と思うこともあります(笑)。でも体のうねりがかっこよくて、ついつい描き始めてしまいますね」

「年齢もその容色をむしばみえず重ねる逢瀬もその無限の変化を古びさせえぬ」。互いに巻きつく白と黒のヘビ。モノクロの世界観だからこそできる表現だ


ちなみに、美沙乃さんが飼いたい動物はモモンガ。「かわいいので、一度飼ってみたいです!」とうれしそうに答えてくれた。そのうちモモンガをモチーフにした作品も誕生するかもしれない。

“瞳”を描かない理由。「『恋は盲目』のようなピュアさに」

美沙乃さんの絵をよく見てみると、“瞳”がない。これには美沙乃さんの「彼ら(動物)が盲目であってほしい」という思いが込められている。

「目が見えていないというわけではなく、『恋は盲目』のような感じです。周りが見えなくなるほど1つの感情を強く抱いている状態を表現するために、瞳を描いていません。盲目な時ほど、素直でピュアだと思うので」

「not simple」。どこか柔らかい表情のフクロウ。毛並みの美しさに目が離せない

「流星」。流れるように駆け抜ける鹿はつい目で追ってしまう

「head over heels」。半円と共に描かれた金魚は、キャンバスの中を泳いでいるかのよう

「空白」。2頭の獅子の力強さと儚さが墨で表現されている


動物に神秘的な魅力を感じ、それを水中に広がる墨のようにモノクロームの世界観で表現を続ける美沙乃さん。「私の絵が、見てくださる人の生活の一部となって寄り添えたら、すごくうれしいです。また、もっと絵を描いていたいので、これからも活動の場が広がるよう精進します」と、これからの活動について話してくれた。

「アムステルダム」。バラの花びらから流れ落ちるように描かれた花びらは、まるで一滴の涙のよう


どこか切ないのに、見る人に活力と感動を与える美沙乃さんの作品。今後はどんな動物を通して人々を救ってくれるのか。これからの美沙乃さんの活躍に期待が止まらない。

取材・文=福井求

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