企業が地方に目を向ける理由とは?淡路島のパソナグループに聞いた

2021年4月30日 16:00更新

関西ウォーカー

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コロナ禍によって、私達の働き方は大きな変革の時を迎えている。その動きの1つとして注目されているのが、企業の地方移転だ。筆頭として挙げられるのが、淡路島へと本社機能の一部を移転させた総合人材サービス会社のパソナグループ。2020年9月に同社の移転が報じられた際は、賛否さまざまな反応が見られたが、なぜ地方移転を決めたのか、実際に移転してみて社員たちの反応はどうなのかを、自身も淡路島に赴任しているパソナグループの副社長・渡辺尚(たかし)さんに聞いた。

打ち合わせも開放的な雰囲気の中で。海に囲まれた淡路島ならではの働き方だ

リスク分散とリアルな交流による会社作りを目指して淡路島へ

パソナグループの創業者である南部靖之(やすゆき)さんが神戸出身で淡路島になじみ深かったこと、そして阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた淡路島への貢献ということでパソナグループでは2008年頃から淡路島での事業をスタートさせていた。

「若手農業人材の育成支援を行うチャレンジファームという農場を借りたり、廃校になった小学校をリノベーションしてレストランにしたりするなどの小規模の事業からスタートさせていました。その後、淡路島のアクセスの良さ、自然、歴史などの利点を感じて観光施設をオープンさせています」

パソナグループが運営する、アニメ×テクノロジー×自然をテーマとした新感覚テーマパーク「ニンゲンノモリ」。写真は「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」にある巨大アスレチック

2010年3月に閉校した野島小学校をリノベーションした「のじまスコーラ」

東京からの移転を考え始めた大きなきっかけは2011年の東日本大震災が大きかったという。災害やテロなどの緊急事態が発生した際に、損害を最小限に抑えて事業の継続・復旧を目指すBCP(事業継続計画)の観点からも、本社機能を東京一極集中することへ疑問を感じたのだとか。

「リスク分散にあたって、まずは東と西に分けようということで、縁深い淡路島が移転先にあがりました。また、コロナ禍によってリモートワークへの動きが進んだことで、1つの部署を分けても支障がないという判断ができました。例えば財務や経理の仕事だと、事務作業は淡路島でやるけれど、監査法人や投資家の方とお会いするのは東京に人がいたほうがいいので、東京の人に任せるといったように、事業に応じて淡路島と東京を使い分けしていっています」

リモートワークならば、拠点を新しく作ったり、社員を移動させる手間が省けてコストも抑えられたりしそうだが、“移転”という手段を選んだのはなぜだろうか?

「例えば東京に住む社員が自宅でリモートワークしても東京で大きな災害が起きてしまった時に、動きが止まってしまうのには変わりません。そしてもう1つ大きな理由としては、フルリモートで仕事を家でやることがよいとは考えていない、ということがあります。今、コロナ禍でリモートワークができているのは、それまでの人間関係や業務スキルの貯金があったからだと思っていて、これから新たな人を採用し、事業を拡大していくとなると、リアルな交流というのはやはり欠かせないと思います。リモートワークを活用しつつも、みんなでワイワイやっていく、という働き方もそのうち戻ってくると思いますので、今回の移転に至りました」

充実の福利厚生で島での生活をサポート

コロナ禍の影響もあり、当初計画よりも異動を控えているとのことだが、現在約120名の社員が淡路島への異動を完了しているとのこと。新社屋の建設も進んでいるとのことだが、今は複合リゾート施設である淡路夢舞台などにオフィスを構えている。

有名建築家・安藤忠雄デザインの複合リゾート施設「淡路夢舞台」にオフィスを構える提供:淡路夢舞台

現在のメインオフィスである「淡路夢舞台」にあるオフィス

「淡路夢舞台オフィスだけではなく、自社リゾート施設の『クラフトサーカス』、ファミリー向けに保育施設を備えた『北の街オフィス』、今後ワーケーションが可能になるオフィス『ワーケーションハブ』と複数のオフィスを社員や業務に応じて使い分けています。オフィスは分かれていますが、車で10〜15分ほどしか離れていませんので業務に支障はありません。また、今回の移転にあたって、交通面の福利厚生も充実させ、通勤用に島内を巡回する無料バスを出したり、カーシェアリングも用意したりしました。ETCを使えば明石海峡大橋の料金も通常の半額以下になりますし、淡路島と明石を繋ぐフェリーもあります。なので、車を運転できた方が便利ではありますが、なくても生活に支障はないです」

北の街オフィスにある保育施設。無料で習い事もできる

家賃が東京と比べると約3分の1というのも淡路島の大きな魅力。それでいて、神戸・大阪へのアクセスも良いとあり、東京から異動した社員からの評判も上々だそうだ。渡辺さんも自身も淡路島の魅力を存分に感じているんだとか。

「淡路島は温泉天国なんですよ。自宅から車で10分とかで源泉かけ流しの温泉に入れるので、しょっちゅう行っています。あとはやっぱり食べ物がおいしいですね。海に囲まれているので魚介類が豊富ですし、野菜もいい。余暇の過ごし方はガラッと変わりました。自然に囲まれていてゆったりとした気分で過ごせています。満員電車に乗らなくなったこと、通勤時間がかなり短くなったことで体も大分楽になりました」

他社も招いて淡路島をもっと活性化させていきたい

最後に実際に淡路島に移転してみて、会社として今後どういったことを考えているのか聞いてみた。

「地方はオフィスワーカーの仕事が少なく、デジタル系の人材も少ない。淡路島だと大学がないことから、進学すると島を出ていってしまうのですが、就職のための戻り先が非常に少ないという現状があります。本社を移したことでオフィスワーカーの現地採用も積極的にできるようになると考えています。また、ワーケーション、サテライトオフィスの動きを自社だけではなく、他社にも提供し、淡路島をもっと活性化していきたいと考えています」

具体的には、パソナグループで持っている社内インフラを他社にも開放することを考えているのだそう。前知識なしにいきなり移転となるとハードルが高いが、ワーケーションスペースを提供することで、淡路島への企業誘致の足がかりにしたいと渡辺さんは語る。

新しくできた「ワーケーションハブ」のスペース。海を望む開放的な雰囲気

「ワーケーションハブ」は他社にも開放していく予定だそう

「着替えだけ持ってくればすぐ使える家具付きの住居もありますし、今年4月には『ワーケーションハブ』というオフィスをオープンしたのですが、今後はその場所で観光地で長期宿泊をしながら働ける”ワーケーション”を実現できるようにします。パソナグループで運営しているレストランやカフェを割引で利用できるサービスなども提供して、まずは短期間淡路島で働き、淡路島の魅力を感じてほしいです。IT関連企業などを中心に興味を持っていただいているので、今後期待ができると思っています」と手応えを感じているそう。

コロナ禍の影響は今しばらく続いていきそうだが、その間も私達は働かなくてはならない。アフターコロナを見据えつつ、よりよい働き方を求めた時、地方で働くという選択肢は大きなものになっていきそうだ。

取材・文=西連寺くらら

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