パステルカラーで描かれる風景イラストがSNSで話題に!伝えたいのは「物事を別の方向から見ること」

東京ウォーカー(全国版)

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ふんわりとした色使いながらも線が際立ち、どこか懐かしい雰囲気のイラストを描くイラストレーターのSaigetsuさん(@saigetsu0425)。パステルカラーで描かれた街並みは、まるでパラレルワールドに迷い込んだような不思議な世界観だ。

今回は、Saigetsuさんにパステルカラーで風景を描く理由や、制作秘話などを聞いた。

明るい黄色の階段は、見ているだけでリズムよく駆け降りたくなる


「絵が上手になりたい」その一心ででき上がった作品たち

幼い頃はイラストではなく、漫画を描くことが好きだったというSaigetsuさん。画力をつけたくて高校生の時から画塾でデッサンや色彩、立体等を学び、その後は美術系の大学に進学してイラストレーションを専攻したそうだ。

東京のどこかの風景。「特徴的な建築物などの力を借りずに、なんてことはない街の風景を魅力的に描けたお気に入りの作品です」


「もともとは漫画を描いていたのですが、背景があまりにも下手だったため『月に〇〇枚、風景の速写をする』とノルマを決めて猛練習を始めました。描き続けているとだんだんと迷い線が減り、思うように描けるようになってきたので、『もう少しやってみよう』という気持ちになりました。そうして描くものが次第に漫画から風景に移っていきました」

「斜めからさす光によってできる長い影や、キラキラしている木漏れ日が描写できると、自分もその美しい世界に入ったようでうれしくなります」


Saigetsuさんのイラストの特徴は、「線」と「色面」で描かれる風景。大学に入るまでは絵具などアナログな手法でイラストを描いていたSaigetsuさんは、大学入学後に使い始めたイラスト用のソフトで簡単に線の内側を塗りつぶしできることに感動し、デジタルでの作品制作を始めたそうだ。

「絵具とは違い、PCソフトの色の種類は膨大な数です。軸となる色調を決めないと世界観が決まらなかったので、心地の良い色を選んでいった結果、パステル調に落ち着きました。統一性が出るように色を管理し、ビビッドなオレンジや黄緑、色の強い紫は使わないようにしています」

描かれているのは大阪の淀川。Saigetsuさんが色調に迷走していた頃の絵だという


「俯瞰で見ること」の大切さを教えてくれる“誰かのみた風景”

Saigetsuさんがイラストを描く際、まずは描きたい街に足を運び、風景の写真を撮るという。特に神戸・北野の坂道や、山と海が近接している広島・尾道など、大胆な迫力が出る高低差のある街並みが好きだとSaigetsuさんは話す。

海に面した尾道の町。広がる瀬戸内海とそびえる山々のコントラストが美しい

神戸北野の坂道。「坂の先にはなにがあるのだろう?」とワクワクしてしまう風景だ


その後、Saigetsuさんは写真をもとにイラストを描くのだが、描かれるイラストはSaigetsuさんが見た風景そのものではなく、もしかしたら存在しているかもしれない“誰かのみた風景”。

そのため、なんでもない風景の中に現実にはいないであろう生き物や、起こり得ない現象が描かれている。

何気ない風景の中に光の粒が降り注ぎ、幻想的な雰囲気に

建物の中はまさかの海。魚やクジラが優雅に泳いでいる。実際にはありえない風景も不思議と自然に感じてしまう


Saigetsuさんがこのコンセプトでイラストを描く理由は、 過去に一方向からしか物事を見ることができず、批判を繰り返す人が周囲に大勢いたことがあったからだという。

「群衆の中で正義または悪とされていることを別の方向から見た時に、『それらは本当にそうなのか』と考える余裕を常に持たねばならないと強く思ったことが、コンセプトの根底に流れています。自分の見ている世界とは違うものがあったとしても、『誰かが本当にみた』という可能性を存在させることで、見る者の視野を広げようとする試みでもあります」

イラストに時々出てくるおばけのようなキャラクターは「おめめかぞく」。慌てん坊の子や奇声しか発しない子など、個性豊かだそうだ

Saigetsuさんが写真を見ずに、イメージだけで描いた絵。構図や街のディテールを自由に造り、空想の街を描くのも楽しいと感じたそう


次に描かれるのは“あなたがみた風景”かもしれない

SaigetsuさんはSNSの作品投稿やオンラインショップでの販売などに加え、個展にも力を入れている。2021年4月には大阪・中崎町にあるギャラリー「アトリエ三月」にて、 個展「中崎町の風景」を開催。

イラストたちや色彩のみのキャンバスがタイル状に並び、フロア全体が「誰かの見た中崎町」の風景に包まれた。

現実空間ならではのサイズや体感を含んだ「群」としての作品に挑戦しようと、イラストを並べる形になったという

「中崎町をモチーフにした絵を群として展示することで、まるでもう1つの中崎町に入り込んだような空間にできたのではと思います」


「いつかは長崎、京都の伊根、秋田や青森などの東北地方にも行ってみたいです。大学時代に真冬の新潟に行ったことがあり、豪雪で壮絶でしたがとてもきれいな風景だったので、雪景色も描いてみたいですね。いろんな街を描いてそこで展示をしたり、街ごとの小さな本を作ってシリーズ化したいです。 また花や食べ物など、風景以外の作品も増やしていこうと思っています」と、Saigetsuさんは作品への意気込みを語ってくれた。

香川県の高見島。いつもの風景に、今はいない若者の住人が2人佇んでいるという、過去と未来が交錯しているような作品


Saigetsuさんが描くイラストは、物事を一方的に捉えがちな私たちに大切なことを教えてくれる。ふと立ち止まって、俯瞰で景色や事象を眺めてみれば、そこには別の風景が広がるかもしれない。今後の作品も楽しみだ。

取材・文=越前与

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