おっさんが泣ける時代劇 !「水どう」藤村D座長の舞台
関西ウォーカー
大人気テレビ番組「水曜どうでしょう」のチーフディレクター・藤村忠寿が「藤村源五郎」という役名で座長を務める「藤村源五郎一座」が、3月31日から4月2日に舞台「戦国梟雄烈伝~信長が恐れた三人の男達~」を大阪・道頓堀ZAZA Houseで上演する。

「藤村源五郎一座」は、北海道テレビ放送に務めながら役者としても活動している藤村が、新感覚の時代劇で注目を集めている大阪のパフォーマンス集団・笑撃武踊団と共に旗揚げした一座。3本目となる今作は、戦国時代の覇者で知られる織田信長でさえも“悪事を平然とやってのける物騒な者ども”と恐れていた美濃の斎藤道三、大和の松永久秀、備中の宇喜多直家の3人の武将の生き様をオムニバス形式で描く舞台。今回、この舞台の魅力についてはもちろん、テレビの仕事と役者としての違いについても藤村に聞いた。

「戦国梟雄烈伝~信長が恐れた三人の男達~」は、名もない境遇から戦国大名にまで成り上がった斎藤道三、信長に反逆して敗れ爆死という自害を選んだといわれる松永久秀、そして毒殺や闇討ちなど手段を選ばない暗殺を数多く実行した宇喜多直家の3人が、謀略の限りを尽くして下克上の世を生きる姿を描く。舞台を作り上げるにあたって、藤村は彼らがなぜ“悪人”とされるような生き方を選んだのか、自分たちなりに解釈して演じたという。
「 “本当にこの人たちは悪い人だったのか”と先ず考えてみると、後世の人が“悪人”と言っているだけで、この人たちはその時代にやるべきことを一生懸命やるしかなかったんじゃないのかと思ったんです。彼らは天下が獲りたいわけではなく、守らなければいけないものを守るためならなんでもした。だから、信長も怖かったのではないかなと。僕が演じる宇喜多は、自分より上の人を裏切ったり暗殺したりしてとにかく酷い手を使っているんだけど、自分の家臣からは誰も裏切者が出ないんです。ということは、この人はこの人なりに自分の領地や家を守るためならどんな手立てでも打ってきたというだけなのかもしれないなと。現代で置き換えると、中小企業の社長なんかがこのタイプじゃないですかね。社員を抱えながら競争も談合も必要ならしなければけないという、そういうイメージが出てきました。そんな風に今回は他の2人もサラリーマンになぞらえているんですよ。斎藤道三なんて、言うならば高卒か三流大学から急に一流企業の社長になったような人。そう考えてみれば、大名になるまでには相当な経験を積み重ねてきたはずだってことが自然と分かってくる。松永久秀は、周りから祭り上げられて、どんどん偉くなり社長にまで登っていくんだけど、本当はそんなことしたくなかったというタイプの人だった気がする。そんな風に捉えて観てもらえたら、一生懸命に働いている男の人たちにはグッとくる部分がある舞台になっているんじゃないかなと思います」

これまでも、“おっさん”が気持ちよく男泣きできるような芝居作りに挑んできたと語る藤村。今作で目頭が熱くなるのは、なんといっても乱世を生き抜くためならどんな手でも使った男たちの“一生懸命さ”だという。
「この3人だって僕たちと一緒で、必死になって、一生懸命やってきただけだと思います。この人たちも僕たちと同じで、決してヒーローになれるわけじゃないからこそ一生懸命になんでもやってきたと思って観たら、随分と清々しい気分になってもらえるんじゃないでしょうか。そんな物語を、僕たちもとにかく出し切ってお芝居しています。それが、最終的には“悪人”と呼ばれていた人たちに、涙してしまうような舞台になればなと思いますね」

男の人が思わず笑顔になってしまう演出だけでなく、あまり歴史に詳しくない人たちでも時代劇だからと難しく考えずに気軽に楽しめる内容に。
「あんまり男の人って、お芝居を観に行くことが少ないと思いますから。一番、お芝居と縁遠そうな人をターゲットにしているからこそハードルが高くなっていはいるんですけど…(笑)。だけど、その層を掘り起こさないと、演劇界が広がっていかないので遣り甲斐がありますね。だからなるべく、おじさんたちがつい喜んでしまうような艶っぽいダンスもいれたり、もちろん前後には笑いもとっていきます。それからまた芝居でグッと引き締めて、また関係のないダンスで緩めてという緩急が約2時間の舞台の中には詰まっているので、エンターテインメントとしてもおもしろい内容になっていると思います。あとは、いつも掛け声と投げ銭を必ずっているので、今回も楽しみにして小銭を用意して来てほしいですね。小銭と言っても10円玉とかじゃなくて100円以上で!(笑)。“ヨッ!”という掛け声とか、小銭を投げるタイミングも分かりやすく説明して練習もしますから、初めてでも大丈夫です。なかなかできないですからね、そういう体験って」
DVDセールスが累計450万枚以上にもなり、地方ローカル番組としては異例の大ヒットを記録した「水曜どうでしょう」。同番組のチーフディレクターとして、出演者に演出する立場だった藤村が、舞台では演出される役者に。全く異なる世界だからこそ、考え方やおもしろさも変わってくるのだろうか?
「舞台は、物を作るということに関しては非常におもしろい作業ですね。ゼロから全部が始まるし、非常に手間のかかる作業。その癖に分かりやすくは儲かるわけではない。だけど、だからこそやりがいのある気がしています。舞台を作ることがおもしろくなくなったら、やる意味が全くないんですよ。例えば、『水曜どうでしょう』であれば、何十万人が待ってくれているけど、舞台は100人ぐらいのキャパで、来てくれた人たちに向けてやるので数がそもそも全然違う。自分たち自身が作ることをおもしろがってなければ続けてはいけないことですよね。だからこそ今もこうして舞台を続けているということは、僕なんかからするとこれまで作ってきた中でも相当おもしろいものなんですよね。役者として出ているけれど、もちろん台本にも口出しするから、みんなで一緒に作って行くという作業が非常におもしろい。本番まではどうなるか分からないし、みんなで作ったものをお客さんが目の前で生で観てくれる。こんなこと映像ではありえない世界なので、本当におもしろいです」

「水曜どうでしょう」の嬉野雅道ディレクターも劇中で解説をする講談師として登場する。誰もが時代劇を気軽に楽しめるような演出も魅力だ。
「僕も嬉野も歴史が好きなんです。だからこそ、歴史物となると全く興味がなくなってしまったり、難しそうだから二の足を踏んでいたという人に、“歴史って面白い!”と思ってもらえたり、“こんな人がいたんだ!”と少しアカデミックになって帰っていただければうれしいです。そういうところも、やりがいだったり観てもらいたいポイントだったりします。難しく考えずに、“歴史って面白いよ”と。単なるファンタジーよりかは、アカデミックな気分だったり満足感も高くなる舞台になっているので、ぜひ観にきてほしいです」
大西健斗
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