日本の「漫画制作」に求められる変革とは?電子コミックサービスの先駆者『LINEマンガ』担当者に聞いた
東京ウォーカー(全国版)
A(Anime=アニメ)、C(Comic=コミック)、G(Game=コンピューターゲーム)は、クールジャパンを支える日本文化として世界規模で親しまれている。だが、ACGに関しては世界中が「日本に追いつき、追い越せ」と猛追を見せており、日本もうかうかとしてはいられない状況だ。先日も、「LINEマンガ」と「ebookjapan」の両サービスでの国内流通総額が年間約800億円の見込みと発表され話題となったばかり。
そんななか、こと漫画に関して「日本はもっと世界に打って出ることが出来る」と語るのは、電子コミックサービス「LINEマンガ」を初期より牽引してきた平井漠氏と山本一成氏。そこで、日本にタテ読みスクロールのWEB漫画を持ち込んだ経緯や、日本の漫画業界の展望について話を聞いた。

タテ読み、ヨコ読みにこだわらず作品と作家の価値を“最大化”する
――「LINEマンガ」にも掲載されているタテ読み漫画は、世界的に見てどれくらい普及しているのでしょうか?
【平井漠】世界規模で見ると、タテ読み漫画のデジタルコミック「webtoon (ウェブトゥーン)」のようなタテ読みスタイルの漫画がスタンダードになりつつあります。グローバル観点では、ヨコスクロールは“日本独自”とも言えます。そんななか、我々(LINEマンガ)も以前からタテスクロール漫画に取り組んでいて、その中でヒット作が生まれるという実績もあります。もっとも、ユーザー視点で言えば、「タテかヨコか」といったことは関係なく、「面白いコンテンツなら読んでもらえる」というのが現状かと思います。
――日本におけるタテ読み漫画の先駆者であるLINEマンガですが、社内の反応はどうだったのでしょうか?
【平井漠】まさに「タテにするのか?ヨコにするのか?」といった議論が多々ありました。ヨコ読みだったものをタテ読みに変換する作業だったり、フルカラーに変更することはとても労力がいります。例えば、タテ読みは「時間軸が表現できて、シームレスに読めないといけない」など“表現の特性”もあるので、周囲の理解を得るのは大変でした。現在は、グローバルスタンダードになりつつある「タテ読み」の漫画にフォーカスしていく、という方針で落ち着いています。
――漫画家にとっては「紙の書籍を出す(ヨコ読み)」という目標を持っている方が多いと思います。その点に関して課題はありませんでしたか?
【平井漠】LINEマンガの発表場所はオンラインなので、「タテ読み作品」を作っていくことを優先的にやっています。だからといって「紙での出版はしないのか?」といったらそんなことはなくて、ヒットしたものは紙でも出していきます。その際、ヨコ読みに変換する労力は必要ですが、作品の価値を最大化していくことを考えて、臨機応変に対応していくつもりです。
――今後、作家とLINEマンガはどのように「共生」していくのでしょうか?
【平井漠】「LINEマンガ」は、グローバルでの月間利用者数7200万、累計ダウンロード数2億超、ひと月の流通額が100億円を超える、同市場で圧倒的世界No.1の規模を誇るプラットフォームサービスの連合体 “WEBTOON worldwide service”の一員でもあります。なので、「世界からコンテンツソーシングをしてヒット作品を生んでいく」こともできまして、昨今では、海外で作られたwebtoonコンテンツをLINEマンガで配信する比率も増えていますし、実際、海外作家の作品が日本でバズるというケースも増えています。
また、日本で作った漫画が海外でヒットする可能性もあるので、世界規模で人気を獲得できる漫画を求めています。現在、そうしたワールドワイドな視点で準備している作品もたくさんあるので、楽しみにしていてください。
「女神降臨」のヒットでティーン層への認知が拡大

――LINEマンガの代表作にはどんなものがありますか?
【平井漠】今年、「2021年上半期ティーンが選ぶトレンドランキング」のコト部門編で8位にランクインした「女神降臨」になります。この作品をキッカケに多くの女性層から支持を得ることができ、LINEマンガの認知度も上がりました。

――ヒット作を生み出す方法というのは?
【山本一成】人気コンテンツを生み出するためには、その都度、シームレスで戦略を打っていく必要があります。例えば「毎日無料」「¥0パス」といったサービスや、webtoonのコンテンツの導入など、日々、サービスにサービスをプラスして転換していくことが大事だと思います。
――LINEマンガにおいて、ヒット作を作り出すのに必要な「ヒト」は?
【平井漠】もちろん作家さんです。現在進行形ではインディーズのプラットフォームがあり、トライアル連載という形でアマチュアの作家さんに連載してもらう!といったチャレンジもありますし、編集部発の作品もあります。そうした試みを出版社、プロダクションなどのパートナーとともにコンテンツ制作しています。
海外では分業化が進み、漫画制作のスピードが高速化している

――今後、漫画業界はどう発展していくと思いますか?
【平井漠】紙媒体での作品発表の場の減少を補うべく、それ以上に発表の場を生み出すべく、「作家さんに支持してもらえる“場所”を作る」、そして「電子で漫画がヒットするのが当たり前になる」という状況を作り上げることが、今後の漫画文化の発展に必要だと考えていますし、我々の使命だと思っています。
もっと根元の部分で言えば、「漫画制作」に関しても変革が必要なのでは?と感じています。webtoonをはじめ、海外では漫画制作が分業化されていて、物凄いスピードで作品が生み出されているのが現状です。そうした新しい制作の手法や取り組みを日本でも定着させ、「作るところから、作品がヒットして世界に出るまで」のイニシアチブを取りたいと思っています。
【山本一成】私は少年漫画黄金期を体験した漫画世代ですが、以前のような正攻法は通用しなくなっている部分もありますし、コンテンツの質もガラっと変わっています。その変化をいかに早くキャッチアップして、ユーザーのニーズに合わせたコンテンツを提供できるのか?そうした部分を突き詰めていくことが、漫画業界の発展に繋がると信じています。
また、膨大な数のユーザーに快適にサービスをご利用いただけるよう努める、私の担当する開発関連も、業界の発展にとても重要だと考えていますし、やりがいがあります。多くの方に愛され、世界も見据えている我々のサービスを一緒に盛り上げてくださる開発者の方にもぜひ興味を持って欲しいですね。
【平井漠】発展という観点だと、日本の漫画よりも、海外の漫画の方が成長率は伸びているのが現状で、海外で作られたコンテンツが日本に入ってくることが当たり前になる未来は近い気がします。逆に、日本の作品を海外に発信する環境や仕組み、そして、作家さんがハッピーになる構図を作りたいです。

【プロフィール】
平井漠/電子写真集などの制作からキャリアをスタートし、ガラケー時代から電子書籍サービスの企画・運用業務を経験。2013年よりLINEマンガに携わり、サービス構築を担当。
山本一成/オン・ザ・エッヂ、ライブドアでコンシューマー向けのサービスに携わり、その後LINE社でLINEマンガを担当。以降、システム開発の責任者として関わっている。
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