今は「二度漬け禁止」じゃない!?大阪名物の元祖「串かつだるま」コロナ禍での戦い方とおいしさの秘密

東京ウォーカー(全国版)

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大阪グルメといえば、お好み焼き、たこ焼き、そして串かつ。地元民も観光客も愛してやまない串かつのとある文化が、コロナ禍によって危機を迎えてしまっている。

串かつといえば「ソースの二度漬け禁止」がおなじみのルールだが、コロナ禍の飛沫感染防止を受けて共用のソース入れが撤去されてしまい、一度目の「漬け」すらも禁じられてしまう事態に。串かつの醍醐味である、ソースにドボンと漬けることができなくなってしまった。

今回はそんな状況にある串かつ界を盛り上げるべく、大阪を中心に展開する「串かつだるま」へ。広報担当の川端清昭さんに串かつだるまのおいしさの秘密や「二度漬け禁止」の行く末、そして感染対策の取り組みなどを聞いた。

串かつの歴史はだるまの歴史!串かつ誕生の理由

串かつが誕生したのは昭和4年(1929年)。労働者の多かった新世界の街で、「串かつの生みの親」と言われる百野ヨシエ氏の「高価な牛肉を手軽に食べてほしい」という思いから、牛肉をひと口大に切って串に刺したものを衣に包み、カラッと揚げたのがはじまり。サッと食べやすく腹持ちもよかったことから、仕事の合間に食べられると大人気に。瞬く間に大阪を代表する名物料理になった。

当時は「たこ菱」という屋号だったが、第二次世界大戦の空襲で焼失。その後、昭和20年(1945年)に二代目として百野正雄氏が再建し、この時から屋号を「ダルマ」に改名。二代目から三代目へと受け継がれていく際に店名も「だるま」となり、今の「串かつだるま」が誕生した。創業当時のメニューは牛串・じゃがいもの2種類のみだったが、現在はなんと40種類以上。

串かつだるま通天閣店。大阪のシンボル・通天閣の真ん前にある


串かつだるまの串かつは、牛肉やエビなどの食材がきめ細やかな衣で包まれていて、ソースに漬ければおいしさ倍増。最初はサクッ、具はぷりっとクセになる食感が大きな特徴で、一度食べると「この食感を味おうて!」とつい言いたくなるほどやみつきになるおいしさだ。

また、油にもこだわるのがだるま流。揚げる際に使われるのは「ヘッド」という牛脂から作られる油。動物性にもかかわらずクセがなく油の切れがいいため、きめ細やかにサクッと衣が仕上がる。「最近揚げ物がキツイ」という人でもたくさん食べることができそうだ。

「ジャンジャンセット」(1540円)。元祖串かつ、豚かつ、アスパラ、うずら卵、もち、天然エビ、つくね、ウインナー、チーズちくわ、どて焼きorキムチの欲張りメニュー

カウンター席では、厨房で串かつを揚げる姿を見ることもできる


コロナ禍で「二度漬け禁止」ルールに変化

串かつを語るうえで外せないのが「二度漬け禁止」。これは一度口をつけた串かつを共用のソースにもう一度漬けることを禁止する、大阪の串かつ店の共通ルール。細菌が繁殖するのを防ぐためという衛生的な理由から生まれた。

また、二度漬けすることでソースに具材や衣が混ざってしまい、ソースの味が次第に変わってしまうのを防ぐためでもあるという。もう一度ソースを足したいときは、つきだしのキャベツですくって串かつにかけるのがマナー。もちろんキャベツも一度口にしたら二度漬け禁止だ。

天然エビをソースにドボン。「これこれ!」と言いたくなる


今や串かつ店の定番ともなっているこれらのルールを考案したのは、串かつだるまなんだとか。しかし2020年より続くコロナ禍での感染対策のため、本来ならばカウンター席やテーブル席にあったはずのステンレス製の共用ソース入れが全て撤去されてしまうという事態に。二度漬けはおろか、ソースに串かつをどっぷり漬けることすらできなくなってしまった。

「感染防止を優先して、ソース入れをなくして営業することにしました。串かつからコロナが広がってしまってはいけないですからね。今は卓上のソースボトルで上からかける方法に切り替えています。お好きな分を何度でもかけてたくさん召し上がってください」と店長さん。

そして「どうしても串かつをソースに漬けたい!」というこだわりやさんもご安心を。串かつだるまでは、110円で個別のソース入れを持ってきてもらえるサービスを開始。こちらは来店客ごとにソースを提供し、余ったソースは処分するため、何度でも漬けることができる。串かつに慣れ親しんだ大阪人なら決して許されることのない禁断の「複数回漬け」もできてしまう。背徳感を味わえる大チャンスだ。

悪いことをしている気分になりながらも、思い切って二度漬け!ぷりぷりの天然エビとソースが相性抜群


ちなみに店長さんにおすすめのメニューを聞いたところ、牛肉を揚げた「元祖串かつ」、天然物を使用した「エビ」、大阪名物の「紅生姜」が定番メニューとして人気だそう。変わりダネでは「プチトマト」がおいしいと評判だ。「当店自慢の秘伝のソースとの相性が抜群なんです!ホクホクのトマトの甘味がたまりません!」

また、夏は「鱧(ハモ)」、冬は「牡蠣」と季節限定メニューも。特に11月〜12月頃から登場する牡蠣は冬場の大人気メニュー。「元祖串かつ」に並ぶ勢いで注文が入るのだとか。

「日本有数の産地で育った牡蠣を提供するのも、当店の外せないこだわりなんです。牡蠣のためだけに来店されるお客さんも多く、毎年冬が近づいてくると『牡蠣はいつ始まるん?』と尋ねられるほどです。衣や秘伝のソースとすごく合うので、ぜひ一度食べてみてください!」

取材時はジャンジャンセット(写真手前)に加え、牡蠣、紅生姜(写真右奥)を注文。どて焼き(写真左奥)は串かつができ上がるまでのスピードメニューとして人気


アプリ注文で感染対策!うれしいサービスも

飲食店がコロナ対策で苦労するのが料理の注文方法だ。串かつだるまは、コロナ以前は口頭で1本ずつ注文を受けてきたが、何度も注文を繰り返すため飛沫感染の原因となってしまう可能性も。そこでスマートフォンで注文ができる「串かつだるま公式アプリ」をリリースした。

公式アプリから注文が可能に。アプリの詳細は串かつだるま公式サイトをチェック


「飛沫感染対策の一環として公式アプリを制作しました。スタッフを呼ぶことなく注文ができるので、今のご時世に大変便利と好評です。特に10〜30代の若い世代は積極的にアプリから注文してくれています。これからもアプリを使ってさまざまなサービスを展開していく予定です」

ミニゲーム「だるま大臣を救え!」。見事大臣を救うことができれば、強面の大臣の満面の笑みが見られる

クリア後は、次回の来店から使えるお得なクーポンがもらえる。1日3回までプレイできるので、毎日チャレンジしてみよう


また、アプリではミニゲーム「だるま大臣を救え!」も展開。“二度漬けは禁止!”の看板をかけた姿で有名な「だるま大臣」を救えばゲームクリア。次回の来店時に串かつが1本無料になるクーポンがもらえるなど、サービス満点だ。店舗情報などもすぐに調べることができ、観光などにも便利。大阪に来たらぜひ入れておきたいアプリだ。

コロナに屈しない!これからの串かつだるま

コロナ禍によって苦戦を強いられている串かつだるま。2021年7月に出された4回目の緊急事態宣言の時は、大阪に15店舗あるうちのおよそ半分の営業を中止するなど思うように営業がままならない日が続いたが、10月に緊急事態宣言が明けてからは全店舗で営業を再開した。

串かつだるまのシンボル「だるま大臣」は、四代目会長の上山勝也氏がモデル


「飲食店にとって大変な状況が続いていますが、負けないようにがんばっていきたいです。当店は現場からアイデアを得て、新しい商品やサービスを出していける風通しのよさが特徴です。そのため、いろんなことに挑戦できるのが魅力の1つだと思っています。串かつ誕生から二度漬け禁止、そしてアプリの開発まで、時代に合わせた発明と挑戦をしていきたいです」

大阪名物の代表である串かつを生み出し、地元民をはじめ日本中の人々に愛されている串かつだるまは、今日も伝統の味と秘伝のソースを守りながら、逆風に負けずに新たなチャレンジを続けている。そして今は「二度がけ」「複数回漬け」が楽しめるまたとない機会。ぜひ店舗を訪れて、思う存分ソースを絡ませてみては?

取材・文=越前与
撮影=松井ヒロシ

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。
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