写真なしで解説!魚好きの天敵「アニサキス」ってどんなヤツ?回避法と飼い方を寄生虫の専門家に聞いてみた

2021年12月19日 19:23更新

東京ウォーカー(全国版)

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魚を生で食べるときに気をつけなければいけないのが魚の鮮度、そして「アニサキス」。サバやアジをはじめとした日常的に食べる魚の多くに潜む、主に魚の内臓に寄生する白くて小さい寄生虫だ。

アニサキスを見たことがない人もまだまだ多いと思うが、運がいいのか悪いのか頻繁に出会ってしまう人もいるようだ。ある日、ウォーカープラス編集部員が大好物のカツオのサクを買ったときのこと。自分で切って食べ進めていると、1匹のアニサキスがひょっこり。あまりの気持ち悪さに半分ほど処分するはめになったという。

さらにその2週間後、「まあそんなに頻繁にいるものじゃないでしょ」と、別のスーパーで加熱用のタラの切り身を購入。ビニールを開けて1番に目に入ったのが、前回よりも長めの“ヤツ”だったという。その後トラウマとなってしまったようで、「もう店以外で魚が食べられなくなっちゃって…」と、筆者に悲しみの電話がかかってきた。

不幸中の幸いか、口に入れる前にアニサキスの存在に気づいた編集部員だったが、「私を脅かすあいつらは一体なんなの?」とお怒り気味。たしかに、アニサキスについて「食べたらヤバいもの」というイメージしかない。そこで今回、寄生虫の専門博物館である公益財団法人 目黒寄生虫館 研究室長の巖城隆さんに、アニサキスの生態や対処法、さらに飼育法について教えてもらうことに。

また、編集部員がトラウマになるほど気持ち悪がったアニサキスを「飼ったことがある」というアーティストの南村杞憂さん(@jocojocochijoco)に、アニサキスをペットにした感想も聞いた。なお、この記事はアニサキスについて写真ではなくイラストで紹介しているため、虫が苦手な人も安心してチェックしてみよう!

魚をよく食べる人には知っていてほしい「アニサキス」のアレコレ


まずはアニサキスをペットにした人に話を聞いてみた

南村杞憂さんは関西を中心に活動するアーティストで、アクリルを使用した透明の作品を制作している。そんな南村さんが飼っていたのがアニサキスの「アニ崎アニーサ」さん。

南村さんとアニ崎さんが出会ったのは2021年2月。ある日スケトウダラの切り身を調理しようと見てみると、うねうね動くちっちゃなものが。よく見てみると、切り身の隙間を1匹のアニサキスが這っていたのだ。

「見つけたときはびっくりして、『うわっ!』と叫んでしまいました。ですがジッと見ていたらだんだんと『あれ?かわいいな』と思ってしまい、ちょうど手元にプラスチックのシャーレがあったので、そこに移して新鮮な水を入れて飼い始めました」と南村さん。

シャーレで飼育されたアニ崎さんのイラスト。「1人暮らし初のペットがアニサキスになるとは思いませんでした」と南村さん


ネットで調べても飼い方が見つからなかったため、ときどき魚の内臓を餌にあげたり水を取り替えたりして、わからないなりに世話をしていたそうだ。その後3週間くらいは魚の内臓に潜ったりして生きていたが、ある日アニ崎さんを見ると心なしか色が薄まったような感じになり、しばらくしたら体がボロボロになっていき、最後は水に溶けてなくなっていたという。

「アニ崎さんが死んで悲しかったかと言えば、そうでもなかったです。というのも、そもそもあまり動かないので、生きているのか死んでるのかわからなかったんですよ」

「愛情が全くなかったわけではないと思うが、通常のペットに向けるような感情ではない」と話すが、南村さんは彼の位牌を作成して現在も飾っている。2022年3月頃には1周忌も行うそうで、たった3週間をともにしたアニサキスといえど、やっぱりそこに愛はあったように見える。

2021年3月にこの世を去ったアニ崎さんの位牌。アクリルで作られた位牌には文字化けさせた戒名が書かれている

南村さんはしばらくの間、おでかけする際にアニ崎さんの位牌を持ち歩いていたそうだ。合掌


アニサキスってどんな生き物?専門家に聞いてみた

前述したように、アニサキスを「気持ち悪い」と思う人もいれば「かわいい」と思う人もいるようだ。アニサキスに対する気持ちは千差万別だが、人体に危害を及ぼす寄生虫であることには間違いない。そんなアニサキスについて、巖城さんは詳しく教えてくれた。

私たちが魚介類から見つけるアニサキスは、実は成虫ではなく幼虫。成虫はクジラなど大型動物の胃に寄生しており、大型動物の排泄物とともに卵が放出される。 卵はプランクトンやオキアミの餌になり、それらを食べた魚の体内に寄生するのがアニサキスだ。

「アニサキスは寄生虫のうち『線虫類』と呼ばれるものの1つで、長さ2~3センチの細長い糸状の形をしています。アニサキスの幼虫が寄生していることが多い魚介類としては、サバ、サンマ、アジ、カツオ、イワシ、サケ、スルメイカなどがあります」と巖城さん。

私たちが日常で食べる天然の海産⿂介類の多くに寄生しているため、アニサキスの遭遇率が全体的に高くなる時期や季節などは特になく、魚を食べるときには注意が必要となる。魚をよく食べる日本人にとってはとても身近な寄生虫で、アニサキスに“当たる”人も少なくない。

「アニサキスの幼虫の寄生状況は、海産魚介類の種類や漁獲海域、時期によってさまざまです。厚労省に報告されたアニサキス食中毒の件数は、最近では年間400件前後です。しかし国立感染症研究所の調査によれば、アニサキス症で診療を受けたが報告されていない例を含めると毎年約7000人いると推計されています」

日本では寿司や刺身などの生魚を食べる機会が多い分、アニサキスに当たる可能性も高くなってしまう。アニサキスは⿂の内臓に寄⽣していることが多いが、筋肉に寄生していることもある。また、内臓の鮮度が落ちると筋⾁のほうに移動することも。そのため、⿂を⾷べるときはなるべくよく注意して選ぶようにしよう。

虫が大嫌いな編集部員が9月中旬に出会ったアニサキス1匹目。この時初めてアニサキスを見たそう。「とんでもない絶望感だった」

編集部員が9月下旬に出会ったアニサキス2匹目。彼女はこの日から家で魚を食べていないらしい


もはや「運」!?当たったときの症状と回避法

アニサキスを食べたからといって必ずしも症状が出るわけではないようだ。だが、うっかり食べて当たってしまったら、アニサキスが胃腸の壁に潜り込み激しい腹痛を起こすという。

「アニサキスの幼虫が胃壁に刺入し、食後から十数時間後にみぞおちの激しい痛みや悪心、嘔吐という症状がでます。また腸壁に刺入した場合は、食後十数時間から数日後に激しい下腹部痛や腹膜炎症状を生じます。その他には、幼虫が胃壁等に刺入しなくてもアニサキスが抗原となり、蕁麻疹やアナフィラキシーなどのアレルギー症状が出てしまうこともあります」

アニサキスを食べて当たってしまった場合、食後数時間で胃にグサッ!と差し込むような強い痛みが現れ、しばらくすると痛みは落ち着くが、数分するとまた強く痛み出す。また、アレルギー症状は死骸でも出ることがあるそうだ。

とにもかくにもアニサキスを口に入れないことが1番大事だが、毎日のように魚を食べる日本人にとっては、なかなかそうもいかない。アニサキス食中毒を回避するにはどのような対策をすればいいのだろうか。

「アニサキスの幼虫は冷凍や加熱で死滅するので、調理をする場合には中心温度ー20度で24時間以上冷凍するか、60度で1分以上加熱をしてください。生で食べる場合には、目視でよく確認してアニサキスの幼虫を取り除いてください。魚にアニサキスがついていたからといって慌てる必要はありませんが、もしも取り損ねてしまって腹痛やアレルギー症状などが起こったら、速やかに病院にかかってください」

なお、治療は内視鏡検査でアニサキスの幼虫を見つけて摘出するのが一般的。人間の体に寄生して成長することはないのでご安心を。生魚を食べてお腹が痛くなったら「そのうち治るだろう」と放っておかず、できるだけ早く病院に行くようにしよう。

マニア必見!アニサキスの見つけ方と飼い方

アニサキスはブラックライトで照らせば青白く光る性質があるので、ブラックライトで発見する方法もある。ペットにする分にはこれでも良いが、「この方法でアニサキスを回避するのはおすすめできない」と巖城さんは話す。

「目視でよく確認することが大切ですが、身の中に居る場合は発見できないこともあります。ブラックライト(紫外線ライト)を使った場合も同じで、身の表面でないとわかりません。あと店頭でブラックライトを使用するのは、店や周囲のお客さんのご迷惑になるのでおすすめしません」

また、巖城さんも魚からアニサキスを見つけて実際に飼ってみたことがあるそうだ。海に生きる生物のため、食塩水に入れて飼うのがスタンダードだが、実は意外な方法もあるのだとか。

「魚から取り出したアニサキスの幼虫を生理食塩水に入れ、週に1~2回、水を交換しながら冷蔵庫で保管すれば数カ月間生かしておくことができます。ちなみに特定の餌はありませんが、ある研究施設では市販のプリンでアニサキスの幼虫を生かしておき、数がまとまったら実験に使っていたと聞きました。私もその方法で飼育して2カ月間くらい生きていました」

巖城さんや南村さんのように「アニサキスを飼ってみたい」という人は、市販のプリンを使って飼育してみよう。どのプリンが好きかは不明である。

おいしく魚をいただくためにできること

どうやらアニサキスを回避するためには、「生食を避ける」「目視で確認」「鮮度のいい魚を選ぶ」の3つを気をつけるしかなさそうだ。

できる限り冷凍のものや加熱したものを食べるようにしたいが、自宅で刺身を食べたい人も多いだろう。アニサキスに遭遇しないために、スーパーで⿂を買うときは天然か養殖か、冷凍・解凍されているかや、魚の身の⾊の変化など、しっかり⾒極めて買うようにしたい。

新年に向けて、脂がのったおいしい魚が多く出回る季節。しかしアニサキスに当たってしまっては元も子もない。悲しい年末年始にならないよう、十分注意して魚料理を楽しもう。

取材・文=福井求

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