客席回転! IHIステージアラウンド東京「髑髏城の七人」徹底ルポ

関西ウォーカー

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演劇ライター・はーこのWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.39をお届けします。

行って来ました、大阪から! 今話題の豊洲、その市場前にあるIHIステージアラウンド東京へ! 先にひと言。大阪から交通費を払って行っても、観る価値ありの舞台だ。現在、“Season花”の前売りは完売だが、当日券あり(6/12(月)まで)。次の“Season鳥”(6/27(火)~9/1(金))の前売りが4/23(日)から開始される。客席が回転する体感、舞台機構を駆使した演出、物語とキャラクターの深化、そして会場への行き方から場内施設、注意点まで、徹底ルポ!

90年、劇団☆新感線『髑髏城(どくろじょう)の七人』の初演を近鉄劇場で観てから、97年、04年(アカドクロ・アオドクロ)、11年(ワカドクロ)と7年ごとに進化し、今年で27年。さまざまなドクロを観て来たが、今回は、何? 客席が回る? テーマパーク? あ、違うの? アジア初の360度回転型劇場? ふ~ん…。

その劇場で、ドクロを“花・鳥・風・月”の4シーズンに分け、3か月ごとに豪華キャストを変え、中島かずきは脚本を新たな設定やストーリー展開に書き直し、いのうえひでのりは演出を練り直して、1年3か月のロングラン公演! マジ~!? こんな耐久レース並みの無茶な試み、新感線以外、どんな劇団もやらへんわ! とゆ~ことは1年間、大阪で新感線の公演がない、わけ? 「劇場、移動させるの無理やから、大阪行かれへんねん」。「しゃあないな~、ほな行くわ」。で、行って来ました。差し入れに“おにぎりせんべい”と“とん蝶”持って。 

【『髑髏城の七人』Season花、通称”花ドクロ”の物語とキャラクター】

時は戦国。関東荒野に忽然と現れた髑髏城を治める、関東髑髏党の首領・天魔王(成河)。暴虐の限りを尽くす天魔王の前に立ちふさがる、捨之介(小栗 旬)と無界屋蘭兵衛(山本耕史)。3人の縁が時を超えて重なり合った時、“無界”の里に集う極楽太夫(りょう)や荒武者を率いる兵庫(青木崇高)、逃げ込んだ沙霧(清野菜名)らを巻き込み、壮絶な戦いが始まる…。物語は「ワカドクロの構造をシンプルに、よりエッヂを立てた設定で継承」(いのうえひでのり)。キャラクター造形は深みを増し、展開はよりダイナミックに、スピーディになった。

ワカドクロ主演から続投の小栗捨之介は、めちゃ激しいチャンバラをしゃべりながら(!)繰り広げ、かっこいいオーラを照射し続ける。新感線初登場の山本耕史は、大人な妖艶さが蘭兵衛史上最高に美しい。初参加陣、いいね! ジャンルを超えた売れっ子・成河は天魔王をブチ切れ度120%で魅せる。青木崇高は絶対注目。豪放にして繊細、笑いも取ってハマリ役だ。りょうは、しなやかさとたくましさとせつなさで存在感を見せ、清野菜名は初々しさと飛び跳ねぶりで『サンバイザー兄弟』を超えて光る。

また、物語の重要キャラ・狸穴(まみあな)ニ郎衛門を演じる近藤芳正が、『阿修羅城の瞳』以来14年ぶりに出演。そしてそして、ミスター新感線・古田新太は、捨之介の信頼する刀鍛冶・贋鉄斎(がんてつさい)で出演。刀オタクで斬り傷だらけの筋肉マンは、自身が発案した造形。はい、もちろん、めっちゃ笑わせてくれます(笑)。

【回転する客席、初体感!】

わからなかった。客席を取り巻くスクリーンに、投射された映像が流れるように回ってる。そう思った。目の前のスクリーンが左右に開き生の舞台が登場、開閉しつつシーンが変わる。休憩時間、「ほんとに客席が回ってるんですか? もしかして冗談?」。支配人に詰め寄った。「スクリーンも客席も回ってます!」。ロビーから客席へ帰る時、わかった。開演前に入った場所と同じ入り口から戻ったのに、客席の景色が違う。回ってたんだ…ゴメンね、支配人。

映画の4DXみたいな体感型じゃない。回転する時、振動も音(音楽が大音量やし?)も、まったくない。舞台が回っているように感じるのは錯覚、1,300席の客席全体が回転しているのだ。まるで巨大なレコード盤の上に乗っているように。2幕後半、この舞台機構を最大限に利用したクライマックスで明確になる。観客席のあちこちから「すご~い!」の声。それこそ、初体験の「すご~い!」だ。これは実際に体験してほしいから、詳細は書かない。

なぜ、私は客席の回転を感じなかったのか。客席数1,300の場内は円形でゆるやかに傾斜があり、観やすい。私の席は中央のブロック、やや前よりだった。回転感覚は円の中心に近いほど小さく、外側になるほど大きい。座席の位置がポイントだった。終演後、客席から離れる時、一瞬、足元がふんわりした。フェリーを降りた瞬間のように。私の身体は、ちゃんと客席の回転を体感していたのだ。

【新感線❤】

客席回転型劇場がウリだけど、そこに新感線を登場させ、『髑髏城の七人』という演目を選んだことに拍手。映像は劇場構造に合わせて効果的に使われ、舞台では本水の雨も降れば川も流れる。登場人物は縦横無尽に疾走し、長丁場の殺陣で魅せまくる。その演出により、最新技術を駆使した劇場機構以上に、生身の人間が演じる活劇の迫力が一層鮮やかに立ちあがる。おもしろい! 上演時間3時間半(休憩20分を含む)、料金以上の興奮必至だ。

新登場の大きな大きなオモチャを与えられた新感線。「やってやるゼ!」とキャストもスタッフもプロ魂全力発揮で遊んでいる。そのワクワク感がたまらない! だから好きなの、新感線! 新たな伝説、その歴史的瞬間に立ち会おう!

【地方から行くときのアクセス】

東京駅から行き方は2パターン。新橋から、ゆりかもめ線で市場前まで。13駅あり所要時間30分弱。海水浴場や大きな観覧車があったり、お台場を越えて行く車窓の景観は、観光気分で楽しい。早く行きたいなら、有楽町から有楽町線で豊洲まで行き、ゆりかもめ線に乗り換えて2つ目。所要時間約20分。豊洲市場の建物は青果や水産などに別れて建ち、ニュースで見るより実物は大規模に感じる。それを背後に劇場へ。空き地が広がり、周囲にはなにもないので、駅から近いものの歩くと若干距離を感じる。大阪だと、昔の南港のよう。

【劇場での注意】

開演時間に遅れないこと。到着時間は「ちょっと早いかな」ぐらいがちょうどいい。意外と駅から歩く。遅れると、客席の回転が止まるまで客席に入れない。

食事は食べていくか、持参で。ロビーにカフェコーナーあり。13時公演だったからか、開演30分前に行って2種類のサンドイッチ(各680円)はすでに売り切れ。お酒の入っていない「360酒種あんぱん」は木村屋製。“360”のデザインが刻印された小ぶりのモチモチパンに、さっぱり味のあんこと求肥入りで1個350円。グッズコーナーの充実度は高いが、これもおみやげによいので早めに買いたい。周囲にはコンビニや自動販売機などなにもない。食べ物は持参をすすめたいが、大阪の劇場のように座って食べる場所はない。もう少しカフェコーナーが広いといいのになぁ。

トイレは2階。キレイで明るいトイレがズラリと並ぶ。列は速やかに流れるが、休憩20分を安心せず、先にトイレを目指すこと。遅めに並ぶと時間切れかも。

演劇ライター・はーこ

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