謎の巨大アンコウに食われるホラー漫画かと思いきや?心優しき人が招かれる「スパあんこうの胃袋」が素敵すぎた!
あなたには見知らぬ人に助けてもらった経験はあるだろうか?電車で席を譲ってもらったり、道を教えてもらったり、落とし物を拾ってもらったり…。そうした時、自分も誰かに優しくしたい、と感じるのではないだろうか?人への優しさを広げていきたくなるオムニバス漫画「スパあんこうの胃袋」が話題だ。
第1話の主人公・さくらは困っている人を見ると、自分の不利益を顧みずつい助けてしまう“お人好し”。そのせいで、仕事でも後輩にいいように扱われてしまう。残業で遅くなったさくらは、せめてもの楽しみと閉店間際のベーカリーでパンを買おうとするが、そこで見かけたのはコートの紐を引きずって歩く女性の姿…。思わず女性を追いかけたさくらが「コートの紐を引きずってますよ…」と声をかけると、振り返った女性の顔はのっぺらぼう。そして巨大なアンコウが出てきて「バクン!」。さくらは食べられてしまった。



巨大アンコウに飲み込まれて「自分の親切は自己満足にすぎないのかも…」と悲しくなるも、アンコウの中は天国のようなスパになっていた!どうやらこのスパは他者に優しくした人が招かれるらしい。スパを満喫するさくらだったが、気づくと自分の家で寝ていた。スパのことは記憶していないが、不思議と体が軽い。さくらは「今日も頑張ろう!」と清々しく伸びをするのだった。
お人好しのさくらをはじめ、育児に疲れた母親、頑張りが空回りする会社員、アンチに傷ついたメイク系YouTuberなど、優しい人、頑張っている人が報われる世界を描いた本作は多くの人から支持をされ、7月14日には書籍化された。作者のあきばさやかさん(Twitter:@akiba_sayaka)に心優しきストーリーが生まれたきっかけを聞いた。
たくさんの親切な人たちへの恩返しの気持ちを込めて
もともと、エッセイ漫画などを描いてきたあきばさん。「スパあんこうの胃袋」は自身初の創作漫画となる。
「創作漫画はずっと描いてみたいと思っていました。中学生の頃に王道の少年漫画も描いていたんですが、一作も描き上げられずに挫折した経験があり、自分には難しいと諦めていました。しかし、先日“このテーマで描きたい!”と急に思い立ち、勢いで描き始めたら不思議なことにサクサク描くことができ、そうして生まれたのが『スパあんこうの胃袋』です」
妊娠、出産、育児と人生の大きな節目を迎える中で、「たくさんの親切な人に助けられて生きてきたなぁ」と感じることが多かったのだそう。優しくしてくれた人たちへの恩返しとして、深海生物をテーマにしたスパを登場させたのはどういう発想からだろうか?

「第1話で主人公がコートの紐を引きずって歩いている人を追いかけますが、実際にそういう方を見かけたことがあって、そこからです。その時、私はお店の中で、引きずっている人は外を歩いていたので、追いかけることも、声をかけることもできなかったのですが…。それで、自分もよく『リュック開いているよ』とか『席座りますか?』とか親切な人に声をかけてもらうなぁ、そういう人たちみんなに何かいいことがあったらいいなぁと思い、そこから発想をつなげていきました。親切な人たちだけを集める仕掛けを考えた時に、アンコウがエサを誘い寄せるために使っている擬餌状体(エスカ)みたいなものはどうだろう?アンコウの擬餌状体に誘き寄せられて飲み込まれた先がスパになっていたら最高だな、そこにたくさんの深海魚が出てきたら楽しそう!と頭の中で展開していきました」
親切な人たちにいいことがあるといいな、そんな恩返しのような気持ちが込められたストーリーはどこまでも優しい。「私も人に優しくしたい」そんな感想が寄せられるのは、その優しさゆえだろう。