謎の巨大アンコウに食われるホラー漫画かと思いきや?心優しき人が招かれる「スパあんこうの胃袋」が素敵すぎた!
細かいところまで書き込みがされたスパの俯瞰図に注目を!
作中ではメンダコ、ミツクリザメ、ホウライエソ、リュウグウノツカイ、とさまざまな深海魚・深海生物がスタッフとして登場している。あきばさんが自身の子供から影響を受けたんだそう。
「もともと水族館や深海生物は好きでしたが、そこまで詳しくはありませんでした。今回深海生物をキャラクターに選んだのは、息子の影響が大きいと思います。息子は魚や深海生物が好きなんですが、一緒に図鑑やDVDを見るようになり、今では自分用に深海生物の書籍を購入して読んでいます。すぐ息子に奪われてしまいますが…」
あきばさんが一番お気に入りの深海生物は「オオグチボヤ」なんだとか。水深300〜1000メートルの海底の岩盤や沈木に付着して生きるホヤの仲間で、寒天状の半透明の体と大きな口を開けたような姿が特徴だ。
「マリオのパックンフラワーみたいなとぼけた表情(?)が可愛くて大好きなのですが、作中には登場させられていなくって、書籍の表紙イラストでしか描けていません。オオグチボヤが出てくるお話も1話のネームまで考えたんですが、本に入りきりませんでした。推しなので、どこかで描けたらいいなと思っています」
作品のこだわりポイントを聞くと「スパの様子を解説した俯瞰図のコマ」とのこと。

「こだわって…というか楽しんで描いています。『こんなのあったらいいな』を詰め込んで考えるのも楽しいですし、施設内の壁に貼ってあるポスター、お店の名前など、気づいた人がニヤリとできるような仕組みをこっそり仕込んでいます。第2話では0歳と2歳の子育て中のママの話を描きましたが、ここで出てくるフルコースレストランと妊娠中・授乳中でも飲めるバーに行きたいです…!執筆期間が妊娠〜授乳中と登場人物とドンピシャな状態だったので、おいしくお酒を飲める場所への思いが募っています(笑)」
初の創作漫画は背景にも苦労したとのことだったが、あきばさん自身が楽しんで描いていることが伝わってくる。しかし、初の創作漫画なだけあって公開する時は恥ずかしさも覚えていたんだそう。
「ドキドキしながら公開したのですが、あまりに反応が大きくて驚きました。『涙が出た』『温かい気持ちになった』『癒やされた』と言ってくださる方が多くて、とてもうれしかったです。そして、多くの方に読んでいただき、応援していただいたおかげで1冊の本になりました。本当にありがとうございます。『励まされた』と言っていただくのですが、『こちらこそ!!!!!(大声)』という気持ちです(笑)」
最後に今後の目標を聞くと「ドラマ化、アニメ化には憧れがありますね。深海魚がバンバン出てくるので実写は難しいかもですが…関係者の方、お声がけお待ちしています(笑)」とのことだった。
当たり前ではあるが「スパあんこうの胃袋」はフィクションで、どんなに善行を積んでもこのスパには行けない。しかし、この話を読むと、自分の周りにいる心優しき人々に“いいことがありますように”と自然と祈りたくなる。優しい気持ちに包まれ、穏やかな読後感に満たされるのは確かだ。
取材・文=西連寺くらら