「自分を大事にすることは、自分を知ること」現役カウンセラーが心理学を通して伝えたい“自己理解”の大切さ
東京ウォーカー(全国版)
臨床心理士や公認心理師の資格を持ち、現役の心理カウンセラーとして活躍する寝子さん(
@necononegot
)の活動が注目を集めている。Twitterやブログ『
心理カウンセラー寝子の寝言
』では、自分を知る手がかりとなる心理学の知識や精神疾患についてのわかりやすい解説が日々アップされ、「まさに今の私です」「ものすごくタメになった」「客観的な視点をもらえた」「何度も読み返したい」などさまざまなコメントが寄せられている。
また、自身のトラウマや家族関係を「事例検討」として綴る記事も。過酷な体験の数々が淡々と語られ、「苦しかった時に何が起きていたか」を心理学の視点で紐解く内容となっている。心理カウンセラーとしての活動やSNSでのエピソードについて聞いた。

心理学をわかりやすく解説。寝子さんインタビュー
――寝子さんは臨床心理士や公認心理師の資格を持つ現役の心理カウンセラーだそうですが、普段はどんなお仕事をしていらっしゃるのですか?
「医療機関で、成人の方々を対象に心理検査や心理療法、カウンセリングといった業務を行っています。 医療機関ですので、クライエント(相談者)は基本的に何らかの病や障害を抱えているケースがほとんどです」

――寝子さんがTwitterやブログを開設したきっかけは何だったのでしょうか?
「きっかけはコロナ禍でした。心理士の学会や研修が中止になってしまい、時間ができたのが大きかったですね。順番としてはブログが先で、Twitterはその後です。以前から“もっと仕事以外のことがしたい”とは思っていて、動画サイトで趣味や副業、投資など、思いつくものをいろいろ調べていました。そのうちの一つが、ブログだったんです。
私が書けることといえば、やっぱり心理学のことです。仕事以外で心理学に関わるのもいいなと思って始めました。ですが、ブログについての知識はほとんどないまま勢いで開設したので、作っても誰も見てくれないという現実が待っていました(笑)。そこで、ブログを読んでもらうためにTwitterもスタートしました」
――ブログのテーマは「自己理解に役立つ心理学的知識や精神疾患の解説」とのことですが、開設当初からこのテーマを設定されていたのでしょうか?
「いえ、最初は今のようにテーマや対象を絞っていませんでした。心理職に就いていない一般の方に向けて心理に関する発信をしようということだけを決めていたのですが、しばらくは何を書けばいいかわからない状態でしたね。書き進めながら少しずつ自分が書きたいことを考えられるようになり、精神疾患やトラウマを抱える大人に向けた記事に自然とシフトしていきました」
――ブログやTwitterのテーマである「自己理解」について、もう少し詳しく教えてください。自分を理解することは、トラウマや精神疾患を抱える人にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
「ブログでも触れているのですが、自分を大事にすること=自分を理解することだと考えています。精神的な苦しみを抱えている人は、自己否定感を強く抱いていたり、対人関係の失敗体験を重ねてしまったりすることが多いです。苦しくなってしまう思考パターンを無意識に身につけてしまい、自分の感情を十分に認識できない状態になることもあります。
極端にネガティブな考え方をしてしまうといったような、思い込みによって物事を正しく解釈できない状態を“認知の歪み”と呼ぶのですが、この歪みを変えようと試みる際はまず自分を知ることが第一歩です。
認知の歪みは”本人のせい”と批判されるものではありません。苦しい状況から自分を守るために、そうなった可能性が高いのです。自分がどのような受け止め方をしているのかを知り、自分を理解した上で受け入れることができるようになれば、認知や行動に変化が訪れます。自分を苦しめていた思考や行動も、そうなる理由があったのだとわかれば、少しずつ生きづらさが解消されるように思います」
――ご自身のトラウマ体験を心理学の知識や解釈を交えて綴る「ある性被害サバイバーの話」も印象的です。書こうと決めた理由やきっかけを教えていただけますか?
「自分の体験を書くことは、ブログ開設後の早い段階で決めました。心理士は研修や勉強会で”事例検討”をよく行います。この記事も、その延長として書きました。
伝えたい症状や心理状態を書こうとすると、実際にあった事例を紹介するとわかりやすいのですが、クライエント(相談者)さんのことは書けません。心理職には守秘義務があるからです。自分のことなら自由に書けると思って始めました」
――書くのにかなり勇気がいったかと思います。実際に書いてみて気づいたことはありますか?
「心理職でありながら、自分の問題に向き合ってこなかったことを実感しましたね。自分が経験したことが何だったのか、あの時何が起こっていたのか、改めて振り返る機会となりました」
――ブログやTwitterで特に反響の大きかったものを教えてください。
「昨年Twitterにアップした”心の病はメンタルが弱いからという解釈は誤解である”という主旨のつぶやきはたくさんのコメントをいただきました。ブログでは”どうして人の機嫌をとってしまうのか”や、生きづらさの原因となりやすい”基本的信頼感の欠如”といった記事がたくさん読まれていますね」
――フォロワーから寄せられた感想で特に印象的だったものはありますか?
「”自分が自分でわからなくてそんな自分に絶望していたけど、腑に落ちた”、”知りたかった情報に辿り着けた”というご感想をいただいたのは嬉しかったです。私が伝えたいと思っていた方に届いたと感じます」
――カウンセラーとして、日ごろから心掛けていることや、SNSで発信する際にこだわっていることがあれば教えてください。
「ブログでも臨床の現場でも、相手を傷つけないことを何より優先しています。簡単なことだと思われるかもしれませんが、苦しんでいる人を傷つけないことは想像以上に難しいです。
臨床現場では表情や声のトーン、態度、間、などを穏やかに一定に保ちつつ、その場で最も適した言葉を選択していくことが大切で、大げさではなく一瞬の気のゆるみも許されません。ブログやTwitterにしても、不特定多数の目に触れるものですから、さまざまな受け取られ方をされてしまいます。できる限り気を付けながら、必要な人に届けられるといいなと思っています」
――すでに多くの苦しみを抱える人だからこそ、「傷つけない」ことが重要なのですね。
「そうなんです。少し付け加えると、相手を傷つけまいとするあまり”何もしない”ことを選択してしまいがちですが、傷つけないことは、何もしないということではないのです。例えば、せっかくカウンセリングに来て、ただ穏やかに話を聞くだけで”何もされなかった”とクライエントさんが感じたとしたら、それも”傷つき”になり得ます。 最大限の配慮をしながら、どう関わっていくか。その積み重ねが大事だと思っています」

――改めて、ブログやTwitterでどんなことを伝えていきたいですか?
「心理学の知識をたくさんの人にわかりやすく伝えていきたいです。知識は人を助けるものだと思っています。自分の状態がきちんと概念化されていることや、これまで思い込んでいたのとは違う見方があると知ってもらうことで、苦しい気持ちが少しでも軽くなればいいなと思っています」
精神疾患やトラウマを抱える人はもちろん、「なんとなく生きづらい」「人間関係が上手くいかない」といった日々の悩みを持つ人も、心理学の知識があれば心がラクになることも。心理学を通して自分の状態を理解し、心穏やかに過ごしたいものだ。
取材・文=油井やすこ
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