便通改善?“直球すぎる”ネーミングで大ヒット。累計販売数1億個を突破した機能性ヨーグルトが支持される理由
東京ウォーカー(全国版)
“お腹にいい食べ物”としてのイメージが強いヨーグルト。近ごろは、機能性表示食品としてさまざまな効果を持つヨーグルトも登場してきているが、その中でも売上が好調なのが森永乳業の「ビヒダスヨーグルト 便通改善」だ。2020年に発売開始し、約2年半で累計販売数が1億個を突破、発売3年目となる2022年度も前年比110%以上の売上となっている。2022年9月には脂肪ゼロタイプも登場し、さらなる売上が予想される。森永乳業の機能性ヨーグルトの開発・促進に関わる営業本部マーケティング統括部中長期ウェルネスマーケティンググループの飯吉奨さんに、商品開発の背景や、売上が好調な理由をどう分析しているのか話を聞いた。
長年の研究と過去商品の実績から誕生
そもそも、「ビヒダスヨーグルト 便通改善」(以下、「便通改善」)の最大の特徴は、商品名やパッケージが示すとおり、「便秘気味の方の便通改善」を大々的にうたっていること。便秘気味の方の便通を改善するヨーグルトは、ヨーグルト業界では初めてのことなんだそう。
「ヨーグルトはお腹にいい、整腸効果があるという漠然とした印象は世の中に広まっていたと思います。お通じの改善についてうたっているヨーグルトは、他社製品も含めてこれまでにもありました。しかし『便通改善』は便秘気味の方へストレートに訴求したというのが、ヨーグルト業界では初めての試みでした。このヨーグルトを食べることで何が期待できるのか、ということがわかりやすかったのがお客さまからのご支持につながったのだと考えています」
森永乳業では、50年以上に渡ってビフィズス菌や腸内環境についての研究を行っている。中でも「ビフィズス菌BB536」という菌が入っているのが「ビヒダスヨーグルト」のシリーズだ。
「“脳腸相関”という言葉もあるくらい、大腸と全身の健康は密接につながっていると考えられています。腸の乱れが全身の健康を乱す、腸の不健康は万病のもととも言われており、そんな中、最も身近な悩みといえば便秘と言われています。便秘気味でお悩みの方にアプローチできる商品を作ろうということで、開発がスタートしました」
商品開発にあたっては、森永乳業が長年培ってきた研究や過去商品が大いに役に立ったのだそう。
「特定保健用食品(トクホ)であるビヒダスの『プレーンヨーグルト』や、ビフィズス菌のサプリメントといった商品、論文や研究実績といった裏付けされたファクトが商品設計のベースとなりました。機能性表示食品には機能の根拠となる“関与成分”が有されるのですが、『便通改善』においては製品1個につき20億個含まれたビフィズス菌BB536があたります。これは、20億個のビフィズス菌BB536を含む食品の摂取で、排便回数が増加したという研究結果に基づいたものです。ビフィズス菌は一般的に酸素や酸に弱いと言われているので、20億個の生菌を賞味期限期間中に担保するというところが、開発で苦労しました。また、2017年に発売した一般食品の『毎日爽快ヨーグルト』という商品が、『便通改善』の前身というべき商品なのですが、これはカップタイプのヨーグルトのみで、ドリンクタイプは作っていませんでした。『便通改善』のドリンクタイプは、新たに作り上げていった商品です。カップタイプとドリンクタイプとでは製造工程が異なるため、『便通改善』のドリンクタイプはイチからレシピを考える必要がありました。」
「便通改善」では「まずは3日間」というキーワードを大事にしているが、3日という試しやすい期間を提示しているのも売上に影響を与えているようだ。
「三日坊主という言葉もあるように、長く続けるのは難しいことです。なるべくハードルは下げて、まずは商品の味や、続けやすさをお試しいただきたいという思いから、『まずは3日間』というメッセージを訴求しました」
便秘気味に悩む人に届くネーミングとパッケージ
森永乳業では「便通改善」以外にもさまざまな機能性ヨーグルトを展開している。「便通改善」と並ぶヒット商品が血圧、血糖値、中性脂肪に関する3つの機能を表示した「トリプルヨーグルト」だ。本商品はビヒダスブランドではないが、「トリプルヨーグルト」のパッケージで得られた知見が「便通改善」で生かされているんだそう。
「『トリプルヨーグルト』の前身となる商品で『トリプルアタック ヨーグルト』という商品がありました。説明員を店頭においたマネキン販売では食べやすいと評判は高かったんですが、パッケージの色やデザインで『栄養ドリンクみたい』『ヨーグルトっぽくない』というイメージを持たれ、手に取ってもらいづらいという反省点がありました。また、『トリプルアタック ヨーグルト』は何に効果があるのかわかりづらいという声もあり、そうした反省点を踏まえて『トリプルヨーグルト』のデザインができあがってきました。この経験は『便通改善』のパッケージでも生かされています。ヨーグルトは食品です。“食”に取り入れてほしいということから、ヨーグルトやビヒダスブランドのイメージである“白”をベースとしたパッケージデザインを採用し、機能を全面に押し出したネーミングになったんです」
機能性ヨーグルトは、飯吉さんの所属する中長期ウェルネスマーケティンググループ(以前はデザートヨーグルトマーケティンググループ)で開発をしているが、グループ全体で開発のノウハウや反省点を共有しているからこそ、「便通改善」のヒットにつながっていることがわかる話だ。
そして、「便通改善」というストレートなネーミングに対しては、発売開始前、社内から疑問視する声もあったんだとか。
「お客さまから『食品売り場に“便通”という名前の商品はどうなんだ』とか『わかりやすいけど、名前がちょっと恥ずかしい…』というような声はいまでもあります。しかし、便秘気味でお困りの方にとっては毎日のことだからこそ、深い悩みなんです。“便”という言葉を使わず、『お腹にいい』『腸内環境を整えます』というようなオブラートに包んだ表現もできますが、それはヨーグルト全般に言えてしまうことですよね。スーパーマーケットなどの各売り場にいるのは数秒やほんのわずかと言われ、無数にあるヨーグルトの中から便秘気味で悩みを抱える方に選んでいただくためには、まだるっこしい表現では手に取ってもらえません。メーカーとして届けたいことはブレずにやっていきたいと考えています」
「便通改善」は便秘気味の人向けの商品ではあるが、あくまでもヨーグルト。楽しく、前向きな気持ちで手に取ってほしいと語る飯吉さん。1回食べて終わりではなく、おいしく毎日食べられる。それが1億個という販売個数に表れているのだろう。
「機能性ヨーグルトは、プレーンヨーグルトと比べるとどうしても高くなってしまいます。どうやって毎日食べ続けてもらえるようにするか、というのは今後の商品開発においても考えていきたいことです」
森永乳業では、「便通改善」「トリプルヨーグルト」以外にも、ビフィズス菌BB536を40億個配合することで花粉、ホコリ、ハウスダストによる鼻の不快感を軽減する「ビヒダスヨーグルトKF」、認知機能の一部である記憶力を維持するビフィズス菌MCC1274を配合した「メモリービフィズス 記憶対策ヨーグルト」といった商品を展開している。飯吉さんによると「ビフィズス菌は取った量や種類によってもさまざまな健康機能が期待できる、というのがわかってきている」とのことで、さらなる機能を持った商品が出てくる可能性も。機能性ヨーグルトの今後に期待だ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・長年の研究の積み重ね、過去の事例がヒットのきっかけになる
・知見やノウハウはチーム全体で共有する
・売り場の性質に合わせたパッケージが大事
・商品に対してブレない軸を持つ
取材・文=西連寺くらら
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