盲導犬&視覚障害者あるある?顔の位置にある枝に気づかず衝突!ユーモアたっぷりの盲導犬漫画に注目【作者に聞いた】

日本では2022年10月時点で、848頭の盲導犬が実働しているそう(日本補助犬情報センター)。この数は決して多いものではない。盲導犬の存在は知っていても、実際は見たことがないという人も多いのではないだろうか。盲導犬とそのユーザーである人が、普段どんなことをうれしく思ったり、困ったりしているのか。それをユーモアたっぷりに表現したイラスト漫画「見えないボクと盲導犬アンジーの 目もあてられない日々」がInstagramで話題だ。

漫画を描いているのはイラストレーターのエイイチさん。モデルとなっているのは鍼灸手技療法の教師として働きながらシンガーソングライターとして活動している栗山龍太(りょうた)さんと盲導犬・アンジーだ。栗山さんに起きたちょっとした出来事の数々は、視覚障害者や盲導犬に馴染みのない人からすると「そうだったのか!」と驚くことばかり。2023年3月15日(水)にはInstagramで投稿していた漫画に修正を加え、栗山さんのエッセイや描き下ろしイラストを収録した書籍の発売も決定している。エイイチさんと栗山さんに、盲導犬との日々を漫画にすることにしたきっかけなどを聞いた。

犬の頭の位置は低いので、高い位置のものを認識させるのは盲導犬といえど難しいのだそう。「得意不得意」より画像提供=エイイチ


全盲ゆえの苦労は笑ったら不謹慎?「笑ってもらいたい」からスタートした漫画

エイイチさんが栗山さんと知り合ったのは、13年前、エイイチさんがデザイン会社の社員として働いていたころだそう。エイイチさんの会社でCSR(社会貢献)活動の一環として、栗山さんのオリジナルCDジャケットや特典カードのデザインを手がけることになり、その仕事を通じての出会いだった。

「その時は会社の繋がりで出会ったということもあって、友達ではなく、ビジネス上のお付き合いでした。しかしその後、僕が会社を辞めてフリーランスになったあと、栗山くんが人づてに僕に連絡先を調べてコンタクトをとってくれたんです。『久々に音楽活動を再開してCDを出したい』ということで再会しました。その時にいろいろな話をしたんですが、アンジーを獣医さんに連れて行った時の話をしてくれたんです。アンジーが怖がるといけないから、『アンジー、もう少しで終わるからね』となでたら獣医さんの頭だったという話で(笑)。この話を聞いた時に、僕は大笑いしたんですけど『あれ?これは見えないがゆえの苦労話だから、笑ったら失礼だったかな?』と思って『ごめん、これ笑っちゃ駄目な話だったかな?』って栗山くんに聞いたんですね。そしたら『笑ってもらいたかった』という返事でした。この会話がきっかけで、栗山くんとはビジネスでのお付き合いではなく、友達になれたんです。それから『こういう見えないがゆえの苦労話ってたくさんあるの?』『ネタは100個ある』という会話になりまして。苦労話を“ネタ”と言ってくれているんで、これはもうおもしろいものが描けるなと思って、2人で漫画にしてみない?と持ちかけたのがスタートです」

漫画化にあたっては始めた当初から、書籍化を目指していたんだそう。しかし、そこまでの道のりは容易いものではなかった。

「ただの趣味にしてしまうと活動に限界がありますから、“書籍にする”というのが目標でした。漫画やイラストにした時のチェックには、栗山くんのご家族にもご協力いただくことになりますから、目に見える成果を残したいと考えていたんです。2019年ころには活動を開始して、一度話がまとまりそうだったんですが、世情も相まって頓挫してしまって。栗山くんに『申し訳ない、本にするのは無理かもしれない』って話をしたら、栗山くんが『絶対本にできるから、もうちょっと頑張りましょう』って言ってくれたんですね。「その時に『一人で背負いすぎていたな、この作品は俺と栗山くん、2人の作品なんだ』と改めて思いましたね」とエイイチさん。

栗山さんが諦めなかった理由をたずねると「このころ、僕はオリジナルのオリンピック・パラリンピック応援歌を作って、それを広めるために奔走していました。活動を盛り上げようとエイイチさんがfacebookで一コマ漫画を定期的に掲載してくれていたんです。なので、エイイチさんが書籍化を諦めようとしているのを見て、今度は僕がエイイチさんを後押しする番だと思いました。ツテを使って、出版関係者を当たったりもしました。それから運が向いてきたのか、電車のエピソードがInstagramでバズって、数社の出版社さんからオファーが来るようになったんです」

Instagramでバズった「僕のお尻が大きすぎるのがいけないんだ」画像提供=エイイチ

栗山さんがアンジーと電車に乗った時、アンジーは空いている席を探して、栗山さんを案内してくれる。しかし、アンジーには人の座る幅がわからないため、たまに狭い幅のところに栗山さんが座ることになってしまう…というエピソードだ。実は、Instagramのアカウントでは、同じ作品を何度か繰り返し投稿している。

「闇鍋」画像提供=エイイチ

「自分はイラストレーターなので、栗山くんの目が見えない、全盲であるということは文字には出さず、絵で表現しようとしていたんです。2年間やってInstagramのフォロワーは1000人の状態でした。ただ、全盲なことを絵で表現するといっても、例えば栗山くんの絵が1枚タイムラインで流れた時に、ぱっと見だと“目が見えていない人のギャグ”ってわからないんです。ただ“サングラスをかけたおじさん”にしか見えていないというのにだいぶ経ってから気づきました。それでハッシュタグを見直して、この話がどういった人のエピソードなのかがすぐわかるようにしていったら、電車の話が投稿3度目にしてバズったんです」

“バズ”のおかげで、出版社からも声がかかり、書籍化に向けて動き出すことに。活動が長かったため、作品のストックがあったのも幸いした。増えたフォロワー向けに、ストックしていた作品を立て続けに再掲載することでフォロワーを順調に増やしていけたんだそう。栗山さんの「絶対本にできる」が実現することとなった。

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