脳の専門医が提言。若いうちは「体験」にお金をかけて、「コト消費」せよ
東京ウォーカー(全国版)
どんなに裕福な人でも、使えるお金は無限ではない。それこそ一部の高額所得者を除く大半の人は、日々「何にお金を使うべきか」と考えながら生きているはず。そこに正解はないのかもしれないが、どんな「お金の使い方」をするのがいいのか。お金に関する著書も複数上梓している脳神経外科医の菅原道仁さんに、そんな疑問をぶつけてみた。

お金は夢を叶える時間を短縮してくれるもの
――菅原先生は「お金」をどういうものだと捉えていますか?
【菅原道仁】なかなか難しい質問ですね。お金とは、「自分の実現したい夢を叶えるためのツールのひとつ」でしょうか。もちろん「ツールのひとつ」ですから、夢を叶えるには叶えられるだけのスキルや経験などほかにもいろいろなものが必要だと思います。
――必要なツールは夢の内容によっても変わってきますよね?
【菅原道仁】そうですね。医師になりたいのならそうなれるだけの知識や資格が必要ですし、進学するためにはお金だって必要ですから、もちろんお金もあるに越したことはないでしょう。それから、お金は「夢を叶えるための時間を短縮できるもの」でもあると思います。
――「夢を叶えるための時間を短縮できるもの」ですか?
【菅原道仁】「夢」というとちょっと大げさかもしれませんが、私がいう「夢」には、「こうしたいな」といった程度の気持ちも含みます。例えば、「東京から大阪に行きたい」というのも、私が言う意味でいうと夢にあたります。
【菅原道仁】そのとき、東京から大阪に行く手段はひとつではありません。高いチケットを買って飛行機を使うこともできれば、新幹線もあるし各駅停車の電車もあります。相当頑張れば、徒歩で行くことも可能でしょう。そして、お金をかけて飛行機や新幹線を使えば、それだけ「東京から大阪に行きたい」という夢を叶える時間が短縮されます。
――確かにそうですが、そこにどんな意味があるのですか?
【菅原道仁】私はこれまでにお金に関する本も何冊か出していますが、「お金を使うな」とはひとことも言っていません。「無駄遣いをしないでほしい」と言っているのです。
【菅原道仁】お金をかけて夢を叶える時間を短縮できたなら、限られた時間のなかに余裕が生まれます。その時間を生かして何かを学んだり新たなチャレンジをしたりできれば、自分にとって大きなプラスとなります。それは、決して無駄遣いなどではありません。

お金の使い方は、時間、空間の使い方とセットで考える
――つまり、お金を使ってでも時間を有効に使ったほうがいいということでしょうか?
【菅原道仁】というより、「お金と時間、さらに空間も含めてセットで考えるべき」だということですね。
【菅原道仁】先の話もそうですが、「移動」はこのことの重要性がわかりやすい例です。多忙なビジネスパーソンがちょっとした移動にタクシーを使うことに「無駄遣いだ」と思う人もいるかもしれません。でも、お金を使って時間とタクシーの車内という空間を確保し、メールの返信をしたり移動先で行う打ち合わせの準備の最終確認をしたりしたらどうですか?無駄どころか、とても意義のあるお金の使い方と言えるはずです。
――逆に言うと、「お金と時間、空間をセットで考えられない人」が「お金の使い方が下手な人」ということになりますか?
【菅原道仁】はい。開店セールだからと長い行列に何時間も並ぶような人は、お金の面では少しだけ得をするかもしれませんが、膨大な時間を無駄にしていることに気づいていません。「あっちのガソリンスタンドのほうが10円安いから」とガソリンを使いながら車で移動するようなケースなら、お金と時間のどちらも無駄にしています。
【菅原道仁】あるいは、「これは必要だから」と買ったはずなのに、使わないままになっているものを持っているといったことは多くの人にあてはまるはずです。このケースなら、お金のほか、収納スペースという空間を無駄にしているということになります。
――お金だけにフォーカスしてはいけないということですね?
【菅原道仁】もっと言うと、「お金と時間、空間の使い方が人生を決める」と言ってもいいでしょう。先ほどお話した移動中に仕事をするビジネスパーソンのケースはいい例ではないですか?お金と時間と空間をバランスよく使いながら成果をあげようとしているのですから、その結果として高い評価を得て出世することも十分に考えられます。

若いうちこそ「体験」にお金をかけてほしい
――読者は若い世代が中心です。菅原先生からお金に関して伝えたいことはありますか?
【菅原道仁】これも「お金と時間、空間の使い方が人生を決める」ことに通じますが、特に若い人たちには、モノではなく体験にお金を使ってほしいと思っています。旅行でも筋トレでも英語の勉強でもいい。興味関心が向かったものを積極的に体験する、いわゆる「コト消費」をしてほしいのです。
【菅原道仁】お金を使って手に入れるものというと、かたちのあるモノをイメージしがちです。でも、先の「買って使わないまましまっているもの」の例ではありませんが、モノ消費についてはあとあと「無駄遣いだった……」と後悔することも多いものです。でも、コト消費の場合にはそういった後悔をすることが少ないという特徴があります。
――それはなぜですか?
【菅原道仁】「ストーリー」を描きやすいからです。ストーリーを描くとは、簡単に言うと「自分を主人公にして、いつどんなふうにそのものを使うのか(体験するのか)というシチュエーションをできる限り具体的にイメージする」ことを指します。
【菅原道仁】自分がいつどんなふうに着るのかもイメージしないまま、ただ「安かったから」という理由で服を買ったとします。自分がその服を着ているストーリーを描けていないのですから、せっかく買ったにもかかわらずその服に愛着を持つことはないでしょうし、いくら安く買ったとはいえ、結果的に「無駄遣いをした……」と感じてしまう可能性が高いのです。
【菅原道仁】一方のコト消費の場合は、旅行にせよ筋トレにせよ「体験」ですから、意識せずともお金を払う前に「自分自身が体験しているシーン」を思い描きます。だからこそ後悔することが少ないというわけです。
――確かに、旅行に行く前に自分がどこをどんなふうに旅をしているのかイメージしない人はいません。
【菅原道仁】それに、もし実際の体験が失敗に終わったり期待はずれだったりしても、後悔しにくいのもコト消費が持つ特徴です。なぜなら、「旅行中、ずっと土砂降りだったよ」「せっかく張り切っていたのに英語の先生の発音が最悪でさ」というふうに会話のネタにできるなど、結局は「そうは得られないおもしろい体験」として消化できるからです。
【菅原道仁】そして、何よりも若いうちに多様な体験をすることは将来の財産となります。ぜひ、若い人たちには多少「高い」と思うようなことであっても、興味が湧いたことは積極的に体験してほしいと思います。

この記事のひときわ
#やくにたつ
・お金と時間、さらに空間も含めてセットで考えるべき<br />・若いうちは「体験」にお金をかける<br />・コト消費は「体験」なので後悔しにくい<br />・多少「高い」と感じても、興味が湧いたことは積極的に体験してみる
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=石塚雅人
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