平成の小学生の遊び「バトエン」はなぜ社会現象に?ピーク時は学校で“バトエン禁止令”、開発者は腱鞘炎に

東京ウォーカー(全国版)

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小学校の休み時間に、友人と“鉛筆転がし”を楽しんだことはないだろうか。鉛筆にある6つの面に数字を割り振り、サイコロのように転がす古くから親しまれている遊びだが、なかでも現在30〜40代くらいの人たちが夢中になって遊んでいたのが「バトエン」だ。

「バトエン」とは、株式会社エニックス(現在の株式会社スクウェア・エニックス)から発売されていた、大人気RPGゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」を題材とした鉛筆転がしゲーム「バトルえんぴつ」の通称。そんなバトエンが、2023年で誕生30周年を迎えたという。かつては学校で「バトエン禁止令」が出されるほどの社会現象を巻き起こしたわけだが、30年前の発売当初は一時廃盤寸前だったそう。では、見事に復活を遂げ、当時の子供たちの心を掴み続けた理由とは何なのだろうか。

今回は、株式会社スクウェア・エニックス マーケティング推進部の大澤宗弘さんに、バトエンが人気になったきっかけと販売当時の様子について聞いた。

1993年に発売された「バトエン」。平成時代の小学生の間で一大ブームになった


ヒットのきっかけは関西の駄菓子屋!「バトエン」誕生秘話

1990年頃、「カジノゲーム文具」という、テレビゲームを題材にした消しゴムやペンケースが流行していた。その流れを受けて、1993年に株式会社エニックス(以下、エニックス)から発売されたのがバトエンだ。発売当初は百貨店などを中心に展開していたが、思ったほど売上が伸びず、社内では廃盤の話が出るほどだったという。しかし、そんなバトエンに目を付けた関西の卸売業者との出会いが大きな転機となった。

「とある卸売業者さんが、『このゲームおもしろい!ウチで買う!』と言ってくださって、もともと付き合いがあった関西の駄菓子屋さんに卸してくれたんです。百貨店とは違い、子供たちの目に付く場所で販売したことにより、学校の帰りに立ち寄ってバトエンを購入していく子供たちが続出しました。そのまま開封して、駄菓子屋さんで遊んでいく子供たちも増えていきました」

裏面には遊び方に関する丁寧な説明があるので、初心者でも安心して遊べた


そして「学校の机のサイズが遊ぶのにちょうどよい」と、次第に学校でも人気の遊びへと発展していく。子供たちの心を掴んだバトエンは、関西・中部圏を中心に認知を広げていった。

「そこから、人気だった関西と中部地方限定でバトエンのテレビCMを流したり、ゲームと同じく新たに『勇者』を登場させたりと、いろんな施策を打っていきました。いつしか児童向けの雑誌などで取り上げられるようになり、気がついたら全国区の商品となっていましたね。こうしてさまざまな要因が重なって爆発的なヒットにつながったわけです」

新たに「勇者」を採用した「10番」(商品のシリーズ番号)。ゲームでも主人公である勇者と武器キャップの登場は、人気のさらなる追い風となった


「禁止令」が出るほどの一大ブームに

バトエンといえば、各地の小学校で禁止令が出るなど、社会現象を巻き起こすほどの人気だった。現在30歳の筆者も、授業中にバトエンを転がしていて没収されてしまった記憶がある。あの頃はまだ“ゲームは子供に悪影響”といった風潮が強かったように思うが、保護者の評判はどうだったのか。

「それが、親御さんの評価はとてもよかったんですよ。バトエンの大会を開催していたのですが、お子さんの同伴で来られた際に、『計算の練習になる』『自宅では子供と一緒にバトエンで遊んでいる』といったご好評の声を多くいただいていました。教育的な意義もさることながら、親子のコミュニケーションツールにもなっていたんです。ちなみに、親御さんのなかにはゲームの「ドラゴンクエスト」をプレイされていた方もいたので、これもバトエンがすんなりと受け入れられた要因の1つだと推測しています」

商品名にある「ロトの勇者」は、「ドラゴンクエスト」のなかでも高い人気を誇る、シリーズの象徴的存在。ゲームの内容とリンクしているのも人気の理由だ


気になるバトエンの売れ行きについては、古くから存在した鉛筆製造業に参入してわずか数年で生産シェア率の約1割を占めるという、前代未聞の事態だったという。大澤さんは「急にゲーム会社から大量発注されたものですから、鉛筆を製造している工場の方がとても驚いたみたいですね」と語る。

「エニックスの創業者である福島康博(現:スクウェア・エニックスHD名誉会長)が以前受けたインタビューの新聞記事によると、2000年時点でシリーズ合計約1800万セットの売上があったようです。1セットあたり3〜4本組ですので、3.5本とすると約6188万本の計算になります。後にも先にもこれほどまでの数字は見たことがないですね」

「装備キャップ」(1番左)。10番と同時に発売された。バトエンと組み合わせることでさまざまな戦略を立てることが可能に


1日数万セットを検品!知られざる開発・販売の裏側

こうして一大ブームを巻き起こしたバトエンは、生産が追いつかないほどの人気ぶりで、当時大澤さんが所属していた生産担当の部署にも大きな影響があったという。なんでも、社内にはとんでもない数の製品が届き、繁忙期は日夜検品に追われていたそうだ。

「忙しいときは、10トントラックに目一杯入った製品が会社の倉庫に届くんです。とはいえ、ここまで売れると思っていなかったので人員が足りておらず、製造を担当していた自分が、倉庫で毎日数万セットの検品をやることもありました。毎日工場と倉庫を行き来しては『ブームになるってすごいんだなぁ』と肌で感じていましたね。営業のほうも毎日電話が鳴り止まず、先方とのやり取りもFAXだったので、スムーズに行かなくて大変でしたね(笑)」

装備キャップにも種類があり、組み合わせは無限大


当時、大澤さんが検品に悪戦苦闘する一方で、バトエンのシステムを作った社員は新商品開発のために、日々バトエンを転がしてはデバッグ(ゲームバランスの調整や不具合修正)をしていた。しかし開発に没頭するあまり、ある問題が発生したのだとか。

「その社員は毎日バトエンを転がし続けた結果、腱鞘炎になってしまったんです。見かねた上司は、自動で統計が取れるプログラムを取り入れようとしましたが、その社員は『転がしたときの爽快感が味わえないから嫌です』と拒否したんですよ(笑)」

バトエン誕生30周年プロジェクトが進行中?

こうした社員たちの懸命な働きのおかげで、バトエンは一世を風靡するまでとなったが、時代の流れもあって現在では販売終了となった。だが、ここ数年は 「ドラゴンクエストX オンライン」のゲーム内で実装されるなど 、フィールドを変えて活躍し続けている。

「誕生20周年のときに再チャレンジしようと考えたのですが、その頃には鉛筆があまり使われなくなっていたので、やむなく断念しました。ですが、2023年は30周年ということもあり、改めて、かつて遊んでいただいた方に懐かしんでいただけるグッズなどを検討しています。ぜひ楽しみにしていてください!」

バトエンの「おたすけ消しゴム」で、HPを大きく回復したりと逆転要素としての効果を発揮するアイテム。ルール上は1ゲーム中1回だけ使えるピンチヒッターだった


もし記念グッズが発売されたら、あの頃を思い出しながら遊んでみたり、自身の子供との新たなコミュニケーションツールとして活用してみてはいかがだろうか。バトエンの懐かしさと同時に、歳を重ねたからこそわかる、新たな魅力が発見できるかもしれない。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

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