スターバックスが文化体験の入り口に⁉ 京都の夏の風物詩・納涼床の楽しみ方

東京ウォーカー(全国版)

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5月になると鴨川西岸に並ぶ「鴨川納涼床」。川面からの風に涼をとり景色を楽しみながら食事やお酒を楽しむようすは、京都の夏の風物詩だ。さまざまな業態の店が納涼床を出すが、そのうちのひとつが、三条大橋のたもとに店を構えるスターバックス コーヒー 京都三条大橋店。1999年に開店し、2006年から納涼床に参加。以来、気軽に納涼床を楽しめる場所として毎年多くの人でにぎわう。「夕涼みを楽しむ文化」から始まったという鴨川納涼床の歴史や魅力、楽しみ方などを、ストアマネージャー(店長)の堂畑可奈子さんと、京都鴨川納涼床協同組合理事長の田中 博さんに話をうかがった。

江戸時代から続く、涼をとりながら飲食を楽しむ文化


スターバックス コーヒー 京都三条大橋店の納涼床

納涼床の始まりは江戸時代にさかのぼる。鴨川は見世物小屋や物売りでにぎわい、それに伴い茶店で富裕な商人が河原に席を設けるようになったのが、起源だといわれている。当時は浅瀬に床机を並べ「河原の涼み」と呼ばれた。特に祇園祭のころには大変なにぎわいだったとか。夏に高床式の納涼床を出すのが定着したのは明治時代のころ。現在は5月1日から9月30日に二条大橋から五条大橋まで、約90の店が鴨川西岸に流れる人工水路・みそそぎ川の上に高床式の納涼床を出す。

盆地にあることから夏は暑く冬は寒いといわれる京都で、川の上に床を並べて涼をとるのは、その土地に合った夏の楽しみだったのだろう。
「納涼床は比叡山や東山を望む京都随一の景観。鴨川の雰囲気のなか食事などをしながら夕涼みを楽しんでいただく文化です。木屋町通と納涼床とでは、気温が2~3℃違うんですよ」と、京都鴨川納涼床協同組合理事長の田中さん。

以前は納涼床には敷居の高いイメージもあった。しかし昨今は鴨川沿いの木屋町通や先斗町に料亭や料理旅館以外にもレストランやバーや、カフェなどができ、納涼床が楽しめる店のバリエーションも増えた。スターバックス コーヒー 京都三条大橋店はコーヒー一杯で納涼床を利用できるので、納涼床が初めてだという観光客にも入りやすい。
「納涼床を知っていただく入り口として、スターバックスのようなお店はとても大切です。スターバックスに行って納涼床を体験してもらい、“じゃぁ次は食事に行こうか”とつながっていったらいいなと思っています」

スターバックス コーヒー 京都三条大橋店のパートナーたち


納涼床体験の入り口に。
それを「役割のひとつだと思っています」とは、スターバックス コーヒー 京都三条大橋店の堂畑さん。
「働く私たちが納涼床に愛着を持ち、お客様に伝えたいと思っています。ですから、事前に歴史や文化をパートナー(従業員)に伝える時間を設け、納涼床の期間はコンシェルジュ的な役割のパートナーを配置し、お客様からの質問などにもお答えできるようにしています」と、堂畑さん。歴史や文化を知ることで、客にとっては納涼床で過ごす時間がさらに特別なものになるのだ。


店同士のつながりで納涼床を運営

納涼床は5月は「皐月の床」、6~8月は「本床」、9月は「後涼み」と呼ばれる

納涼床は京都らしい風情が感じられる反面、それを守るうえで苦労もある。納涼床は国有地に床を張り出して営業を行うため、土木事務所の許可や京都府鴨川条例の遵守が必要だ。納涼床は床自体の景観が大切にされ、手すりの高さやデザイン、屋根の設置はできず日よけは“よしず”を使うなど細かく決められている。スピーカーやマイクの使用、華美なライトの設置もNGだ。灯りは“新聞が読める程度の照度”と組合でも統一しているからこそ、夜の趣ある時間が過ごせる。

もっとも大変なのは、「雨天時の営業です」と田中さん。特に営業途中に雨が降り出すときは、納涼床から店内にお客を誘導しなければいけない。
「雨が降った時に床にいるお客様が店内に入れる分だけは、普段から室内の席は空けておくように組合からもお願いしています。隣同士の店で床を閉めるタイミングが違うとお客様の不満につながるので、近所のお店同士で連携されたりしています」

こうした店同士のつながりに助けられていると堂畑さんは言います。
「“比叡山に雲がかかったら、じきに雨が降る”と隣のお店の方が教えてくださいました。だから、そういう時は隣のお店の方とそろそろ雨降りそうですよね、とタイミングを相談しています」

連携ができるのも普段から店同士で顔を合わせているからこそ。組合では納涼床の期間中、みそそぎ川の清掃活動を行う。
「床から物が落ちたり風でゴミが飛んだりすることもあるんです。クリーンアップ活動は地域の皆さんとコミュニケーションの機会になり、結びつきが強くなりました」と堂畑さん。また、これをきっかけに、スターバックスではみそそぎ川の清掃活動を通年で行うようになったという。


“見られる姿”も文化のひとつ

遊歩道や対岸から眺める納涼床に夏の到来を感じる

店のさまざまな活動で守られている納涼床。お客はどのように楽しんでいるのだろう。3年前に店に着任した堂畑さんがいちばん驚いたのは「鴨川にお尻を向けてはいけない」という習慣だそう。その理由を「鴨川の景観を楽しむものなので、鴨川に背を向けないように各店が座席を設けています。鴨川とみそそぎ川の間にある遊歩道も近いので、そちらを歩かれる方々にお尻を向けるというのも失礼ですしね」と田中さんが教えてくれた。

京都三条大橋店では、より多くのお客に納涼床の文化を楽しんでもらうため店独自のルールを設け、周知に努めている。
「鴨川の景観を楽しんでいただくための納涼床なので、パソコンや勉強目的の利用はご遠慮いただいています。また、景観の観点から日傘の利用も控えていただき、代わりに真夏の日中は、早めに店内に入っていただけるよう注意喚起を行っています」と堂畑さん。

納涼床からの景観を楽しみながら一杯のコーヒーを


オープンテラスのカフェとは違い、あくまでここは「納涼床」。雨が降ってきたからと傘をさして納涼床に居座り続けるのも、暑いからと日傘をさすのも無粋なこと。納涼床は、床だけでなくそこを訪れる人を含めて文化なのだ。

最後に、納涼床のおすすめの楽しみ方をお二人に聞いた。
「5月は新緑、夏は大文字(五山の送り火)。9月は中秋の名月で東山から昇る月がまたきれいなんですよね。月によっても変わる景観と一緒に空間を楽しんでいただきたいですね」(田中さん)
「昼と夜、時間帯でも変わるので、一日を通して楽しめます。昼間はくっきりとした緑で、カモメやトンビが飛んできて、自然をエネルギーに変えられる空間。夜は明かりで幻想的な空間になり、いろいろな形のお月様が楽しめるのも魅力です」(堂畑さん)

床の上では移り変わる美しい景観を楽しみながら時を過ごし、河原を行きかう人からはちょっとした羨望を集める。京都の夏の粋な楽しみをぜひ味わいに行こう。

■スターバックス コーヒー 京都三条大橋店の納涼床
設置期間:5月1日(月)~9月30日(土)
※1グループ3人まで、1時間の利用。予約・ペットの利用不可

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