【バチカンと日本100年プロジェクト】忘れられていた両国の交流史をイタリア・ルッカの国際シンポジウムで発表
東京ウォーカー(全国版)
ヴェールに包まれていたバチカンと日本の450年を紐解く
「バチカンと日本 100年プロジェクト
」の一環として、「バチカン文書館等日本関係文書目録」の作成経緯と研究成果が、2023年5月6日~7日にイタリアのルッカ市で開催された国際シンポジウムにて発表された。

「バチカンと日本 100年プロジェクト」とは?
バチカンと日本は、大航海時代のキリスト教伝来を初めての出会いとして、キリシタン文化の時代、潜伏キリシタンの時代、明治初年の奇跡の再会を経て、現在まで交流を続けてきた。バチカンには、宣教師の書き送った文書や近代の外交関係資料など日本に関する数多くの文献が収められているが、いまだに調査は十分ではなく、研究の光が当てられていない史料も存在している。
「バチカンと日本 100年プロジェクト」は、そのような史料の調査研究活動を中心とする角川文化振興財団企画のプロジェクトで、成果を発表する公開シンポジウムを開催するほか、関連書籍の刊行、コンサートの開催など、さまざまなイベントを実施している。
過少評価されてきた日本のカトリック文化
イタリアのルッカ市ドゥカーレ宮殿で開催された国際シンポジウム「Thesaurum Fidei(道信)」(信仰の宝)では、バチカン、日本、アメリカ、ドイツ、イタリアの大学などの文化機関から20名以上の学者が参加し、研究成果を発表。テーマとしては、1500年代に始まった日本における宣教師による布教活動と迫害、隠れキリシタンの現象などに大きく焦点が当てられた。

本プロジェクトでは、研究者が史実の発見、解明にむけて効率的な調査研究ができるよう、「バチカン文書館等日本関連文書目録」を作成することが重要なテーマのひとつとなっているが、これにより、潜伏キリシタン時代の日本に関する報告史料の解明や、20世紀前半のローマ教皇庁と日本政府の外交関係史料の発見など、大きな成果にもつながった。
シルヴィオ・ヴィータ氏によると、日本におけるカトリック文化の存在は、長年過小評価されてきたが、近年、その存在は日本とイタリアの間に重要かつポジティブな影響を与えてきたことがわかったという。長崎名誉大司教 高見三明氏も「ジャコモ・プッチーニが生まれたルッカは長崎と深いつながりがある。彼の『蝶々夫人』は長崎を舞台にしており、カトリック文化はこの街の歴史に大きな影響を与え、その時代の証拠が今も生きている」と語る。
国際シンポジウムのあと、ルッカ市内の聖クリストファー教会を始め、州立図書館、州立公文書館、教区歴史文書館ホールの4カ所にて、宣教師による布教活動や迫害による殉教者、隠れキリシタン関連の300年にわたる史料を展示するイベントを開催。そこでは、フィレンツェで最近発見された、禁教に苦しむ日本のキリシタンが教皇パウロ5世宛に送った奉答書なども展示された。

歴史上初の試み!「バチカン文書館等日本関連文書目録」出版
また、バチカン文書館、福音宣教省文書館、教皇庁教理省文書館所蔵文書を整理した総合目録となる「バチカン文書館等日本関連文書目録」(16~18世紀編)を出版する。
編纂者は、歴史研究者として名をあげているフェデレィカ・ジョウルダーニ氏(現バチカン文書館のアーキビスト)およびアンドレア・チッチェルキア氏(アーキビストの専門調査員)の2人。日本関係史料という特徴を考え、最終的な確認においてシルヴィオ・ヴィータ氏および角川チームメンバーも加わる。
同書は、史料を網羅した調査や現時点における各文書館内の配置番号の正確な情報を調査し、それぞれの史料について詳細な解説を掲載。さらに、文書の由来やほかの所蔵文書との関連性についても記載しており、その歴史や作成過程がかなりの程度まで浮き彫りにされている。 このような総合目録は歴史上初の試みであり、教皇庁と日本の交渉史研究に新しい地平を開くものになるという。
なお、同書は2024年春にバチカンにて出版予定。オンラインでも購入が可能で、出版の詳細については後日発表する。
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