大阪風でも広島風でもない「名古屋風お好み焼き」ってなに?その特徴と誕生秘話を独自調査!

東京ウォーカー(全国版)

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お好み焼きの本場である大阪や広島と同じように、実は名古屋にも独自スタイルのお好み焼きがあるのをご存じだろうか?名古屋人としては身近にあるものなので、特別珍しいものだと認識している人は少ない。だが、他地域の人からしてみれば「こんなの見たことない!」と驚くようなスタイルなのだ。

この現状を知る人たちの間では「名古屋風お好み焼き」と呼ばれており、今では“裏・名古屋めし”の1つとして注目されつつある。大きな特徴としては“2つ折り”にして販売されていることだが、それ以外にも「名古屋風」ならではの特徴があった。本記事では、さまざまな視点から「名古屋風お好み焼き」の秘密を探ってみたい。

焼き上がった状態の名古屋風お好み焼き。広島風のお好み焼きよりも薄く、2つ折りにしやすい(C)KADOKAWA

名古屋には“お好み焼き=おやつ”という考え方が存在する

まず、名古屋風お好み焼きの定義について考えてみた。話を聞かせてくれたのは、東海エリアを中心に、団子やたい焼き、お好み焼きなどを販売する店を145店舗も展開している「米乃家」の村瀬昇平社長だ。

米乃家の村瀬昇平社長(C)KADOKAWA

「大阪風のお好み焼きは、みじん切りにしたキャベツを生地に混ぜ込んで焼く『混ぜ焼き』。広島風のお好み焼きは、生地の上に千切りのキャベツや具材をのせていく『のせ焼き』と呼ばれています。名古屋風お好み焼きは『のせ焼き』に該当しますが、広島風ほどのボリュームはありません」(村瀬社長)

具材はキャベツ、紅ショウガ、天かす、玉子が基本。ここに、豚肉やイカなどメニューごとの具材が加わる(C)KADOKAWA

村瀬社長いわく、これは「名古屋では“お好み焼き=おやつ”という考えが広まっていることが一因」だという。名古屋人にとっての名古屋風お好み焼きは、食事というよりも小腹を満たすための軽食なのだ。昔ながらの駄菓子屋さんには鉄板があり、注文が入るとお好み焼きや焼きそばを焼いていたのを筆者も覚えている。学生時代は、スーパーの店先にあるホットスナックコーナーでお好み焼きを買い食いしていた。確かに、食事というよりはおやつっぽい。

この、“お好み焼き=おやつ”という側面が独りよがりでないということに確信を抱かせるのが、名古屋市西区の「円頓寺本町(えんどうじほんまち)商店街」に店を構える「甘太郎本舗」の存在である。こちらでは、手のひらほどのサイズに焼いたお好み焼きを2つ折りにし、薄い白紙とアルミホイルに包んで販売している。食事としては少し物足りない大きさだが、おやつには最適。

名古屋市西区にある「甘太郎本舗」photo by EDWARD.K / (C)KADOKAWA

「店を経営していた母が40年ほど前、食べ歩きしやすいように考えたスタイルだと聞いています」と話すのは、「甘太郎本舗」の鈴木延久さん。価格も1枚150円から(取材時の価格)と激安。お財布的にもお腹的にも、1つといわず2つ、3つとペロリと食べられてしまいそうだ。

肉だけ・玉子なしは1枚150円、肉・玉子入りとイカ・玉子入りは1枚170円(取材時の価格)。いろいろな種類を買いたくなる価格とサイズだphoto by EDWARD.K / (C)KADOKAWA

2つ折りに隠されたもう1つのメリット

この2つ折りスタイルのメリットは、食べ歩きだけではなかった。「2つ折りにすることで時間が経っても冷めにくく、焼きたてに近い状態をキープできたのです」と話すのは、1970年代半ばに巻き起こったおやつブームを陰から支えた立役者の1人である渋谷光男さん。当時在籍していた会社を通じて、日本各地で実施された、お好み焼きやたこ焼き、たい焼き、かき氷などのおやつの実演講習会を担当し、約25年にわたって作り方から店舗運営までをサポートしてきた“おやつのプロフェッショナル”だ。

渋谷さんは、「名古屋を中心とした東海エリアは、食べ歩き文化よりも持ち帰り文化の方が根強いです。『甘太郎本舗』が始めた2つ折りスタイルは、持ち帰り文化に見事にマッチしました。お好み焼きは自由に大きさを決められるので、店のロケーションによってサイズを変えられるという点も受け入れやすかったのでしょう」と、東海エリアに2つ折りスタイルが根付いた理由を分析した。

「米乃家」のお好み焼き(1枚417円~)は、「甘太郎本舗」の倍ほどのサイズ(C)KADOKAWA

渋谷さんによれば、持ち帰りを想定した名古屋風お好み焼きには、2つ折り以外にも特徴がある。1つは、生地の水分量だ。「大阪風のお好み焼きは生地がもったりとしていますよね。広島風のお好み焼きは大阪風よりも水分が多めですが、名古屋風のお好み焼きはさらに水分を多くして粉の割合をグッと減らすんです」(渋谷さん)

フチがパリパリに焼けて、めくれあがってくる(C)KADOKAWA

これは、冷めた時に粉っぽさを感じさせないための工夫なのだとか。その場で食べるのであればアツアツだが、持ち帰るとどうしても冷めてしまう。その際に粉の割合が多い生地だと、粉っぽさを感じやすくなるのだ。生地の水分量が少ないがゆえに、焼いている時に生地がめくれあがってくるのも特徴的だ。

「さらに、ひっくり返す前に生地と溶き卵をかける点も、名古屋風お好み焼きの大きな特徴なんですよ。溶き卵にはダシが入っているので、これをかけるとフチの方まで味のある生地になるんです」と渋谷さん。約20年にわたって東海エリアの飲食店を取材し続けてきた筆者だが、これまで取材した店舗はこの工程を行っていない店ばかりだった。ひょっとしたら見逃していたのかもしれないが、効率化などの理由で省かれてしまった“幻の工程”という可能性もある。

お好み焼きにも、名古屋の食文化が色濃く影響

2つ折りになったお好み焼きが、薄い白紙とアルミホイルに包まれているphoto by EDWARD.K / (C)KADOKAWA

こうして調べてみると、名古屋風お好み焼きには、彼の地に根付くべくして根付いた理由があった。持ち帰り文化であるため、その形状にも生地にも、冷めてもおいしい工夫が凝らされていた名古屋風お好み焼き。とはいえ、食べ歩きにもぴったりの形状なので、買ったその場でかぶりつく誘惑も捨てがたい。名古屋を訪れた際は、ぜひお好みの方法で、名古屋風お好み焼きを味わってみてほしい。


取材・文/撮影=大川真由美
撮影=EDWARD.K

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。

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