【村上春樹×安西水丸】名コンビによる猫絵本の傑作、25年ぶりの新版!心を満たす“ふわふわ”な「猫の時間」
東京ウォーカー(全国版)
仕事や学校に出かけていっては、おかしくもないのにヘラヘラ笑う。SNSで、とくに知りたくもない誰かの食卓を覗いては、条件反射で「いいね」する。エラい人に話を合わせて楽しそうなふりをして、動画ですすめられたモノを買い、誰かの意見にとりあえずうなずきながら、うっかり我に返ってしまう。あれ、そういえばわたし、いったいなにがしたいんだっけ。わたしの幸せって、なんだっけ……。
※2023年6月1日掲載、ダ・ヴィンチWebの転載記事です

そんな気分になってしまったあなたの心を、ふんわりと癒やしてくれる物語がある。『ふわふわ』(村上春樹:文、安西水丸:絵/講談社)――ご存じ村上春樹氏と安西水丸氏の名コンビによる、やさしい絵本だ。
「ぼくは世界じゅうのたいていの猫が好きだけれど、この地上に生きているあらゆる種類の猫たちのなかで、年老いたおおきな雌猫がいちばん好きだ」
「ぼく」の視点から語られるその雌猫は、ふわふわであたたかく、「ぼく」になんか興味はないみたいだけれどやさしくて、どこか懐かしい哀愁を感じさせる。その語りが、安西氏のシンプルながらあたたかみのあるイラストと相まって、しみじみと心に響く。本書のページを繰るうちに、わたしたちは「ぼく」と同じく、じゅうたんのようにみごとな毛並みの年老いた猫とごろりと寝ころび、「猫の時間」を過ごしている。
「そんな午後には、ぼくらの世界を動かしている時間とはまたちがった、もうひとつのとくべつな時間が、猫のからだの中をこっそりと通り過ぎていく」
「ぼく」は、「ぼく」のうちにやってきたかしこいその猫と過ごすうちに、多くのことを学んだという。それはとても普遍的なこと、たとえば、「いのちあるものにとってひとしく大事なこと」だった──。
本書は、名コンビの傑作絵本を25年ぶりにリニューアル、デザインと判型を一新したものだ。25年の時を経てなお、本書の語りとイラストには、大人たちの頭をほっとなごませてくれる魅力がある。本文の漢字にはすべてふりがなが振られているので、ちいさな子供も一緒に楽しむことができるだろう。本書からは、そこに語られているものはもちろん、この作品が愛されながら渡っていくもの──時代や世代、かたちの変化などもぜんぶひっくるめ、ひろびろとした流れが感じられる。
読めば心がやわらかくなる、ひとりで読んでも、誰かと読んでもやさしい絵本。『ふわふわ』をもっと楽しめる「『ふわふわ』のしおり」もついているので、ぜひ読んで、触れて、心を「ふわふわ」で満たしてください。
文=三田ゆき
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