【影山貴彦のTVコラム・がんばれ関西ローカル! 特別版】 テレビにまつわる素朴な疑問に影山教授が答える!
関西ウォーカー
個性豊かな関西のローカル番組に毎号エールを送る連載の特別版! 今回は、テレビにまつわる素朴な疑問をぶつけて答えてもらう「出張ゼミ」を関西ウォーカー編集部で開催!
【編集部からの質問】
東京と関西の番組ではどういった違いがありますか?
【影山教授の回答】
番組作りで言うと、台本の厚さがまず違います。東京は分厚くて、関西は薄い。それは東京が“落語文化”で、関西は“漫才文化”と例えられますね。メインMCを1人据えて、その人が1から10まできっちりと作られた台本通りに、理路整然と進めるスタイルが東京。一方、関西は出演者同士の掛け合いを大事にして、もみくちゃになりながら盛り上げていきます。東京では無駄な部分としてカットされるような、台本の余白で生まれたアドリブも無駄遣いせずに面白く使って見せるのが関西。なので、台本が薄いからといって手を抜いているわけではないんですよ! 視聴率で言うと、関西は土日の昼と深夜が、東京よりも数字が高い。この時間帯は、関西の各局が独自で作っている番組を放送しています。そこが好調だということは、関西人は関西らしい番組を求めているということですね。
【編集部からの質問】
関西制作の長寿番組が愛され続けている秘訣はなんですか?
【影山教授の回答】
関西は保守的なところがあるので、奇をてらった新しい番組より、見ていてほっこりできるものや、まったり感のある番組が好まれます。分かりやすく言えば、関西人は同じネタを何度も繰り返す“天丼”(と呼ばれる手法)が大好き! 吉本新喜劇の様に、これこれ!と、思える安心感。それをスタンダードにできているかどうかが秘訣ではないでしょうか。
【編集部からの質問】
テレビ番組って、どういう流れで作られているのでしょうか?
【影山教授の回答】
意外と知られていませんが、テレビ局には編成という部署があり、そこに集まってきた企画の中からどういった番組を作るかが決められます。僕がMBSの編成にいた20代の頃で、印象的な出来事がありましてね…。当時若手で人気のあったダウンタウンを売り出したいと、吉本から企画が出ました。それが「4時ですよ~だ」という番組で、平日月曜日から金曜日の夕方4時に心斎橋筋2丁目劇場で公開生放送をしたいと。僕も会議室で話を聞いていたんですが、「データ上、そんな時間に中高生が家でテレビを見るわけがない!」という理由で、企画はボツになる方向に向かっていました。そんな上司のストップに対して、部下が「絶対に面白いからやるべきです!」と説得して、なんとか番組をスタートさせたのです。その結果、何が起こったかというと、夕方4時に帰らなかった中高生が、テレビを観るため家に帰るようになったんです! 今だと間違いなく、実現できてなかったと思います。だけど、今のメディアはこういうことをしないといけないと思うんです! 自分たちの面白いと思った企画で、データをひっくり返さなければいけない、ということを伝えたいですね。
【編集部からの質問】
影山先生が面白いと思う番組の条件は何ですか?
【影山教授の回答】
出演者やスタッフが楽しそうにしていて、それが受け手にも響いているような番組でしょうか。視聴者が求めているものを作るだとか、過剰にテロップを出したり、足りない部分はネットで情報を提供するといったサービス過多な時代ですが、「分かるやつだけついてこい!」と言えるぐらい、もっと強気になってもいいと思います。ベテラン芸人や東京から来たスターが、関西ローカルでのびのびと楽しそうにしている姿って、観ているこちらも楽しくなりませんか? 関西ではそういう番組が東京に比べてたくさんあるので、もっと自信をもって“関西らしさ”を打ち出していってほしいなと思います!
Profile/影山貴彦(かげやまたかひこ)同志社女子大学 学芸学部情報メディア学科教授。元毎日放送プロデューサー(「MBSヤングタウン」など)。早稲田大学政経学部卒、関西学院大学大学院文学修士。上方漫才大賞審査員、GAORA番組審議委員、日本笑い学会理事
同じまとめの記事をもっと読む
この記事の画像一覧(全2枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介