栃木県のご当地ラーメン「佐野らーめん」の“予備校”があるって知ってる?佐野市の人口減少問題をきっかけに誕生

東京ウォーカー(全国版)

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栃木県の南西部に位置し、東京から車で1〜2時間で行くことができる佐野市。「いもフライ」「耳うどん」「大根そば」「佐野黒から揚げ」など数多くのご当地グルメが存在するエリアとして知られているが、その代表はやはり「佐野らーめん」だ。

「青竹打ち」という独特の製法で作られたコシのあるちぢれ麺を、澄んでいながらもコク深いスープと合わせたご当地ラーメンであり、その名は全国にも知れ渡っている。現在、佐野市の人口約11万人に対し、約150軒もの「佐野らーめん」専門店が存在し、休日ともなれば行列覚悟の店も多いのだとか。

そんな佐野市だが、人口の減少が問題となっており、移住者を増やすべく取り組んでいる。それが、「佐野らーめん」の作り方を移住希望者に教え込む「佐野らーめん予備校」だ。

今回は栃木県佐野市の担当者に話を聞き、そのユニークな取り組みの実態に迫る。

栃木県佐野市の名物「佐野らーめん」


元居酒屋の空き店舗を「佐野らーめん予備校」に!

2019年からスタートした「佐野らーめん予備校」は、佐野市役所から徒歩1分ほどの場所にある。もともと居酒屋だった空き店舗を佐野市が借り、移住希望者に「佐野らーめん」の作り方を実践・座学の両方で教える施設だ。

佐野市役所のすぐ近くにある「佐野らーめん予備校」


講師は佐野市内の人気ラーメン店の店主らが務め、「佐野らーめん」特有の「青竹打ち」はもちろん、食材の調理法から盛り付けに至るまで丁寧に教えてもらえる。

「『佐野らーめん予備校』では、経験者・未経験者を問わず受講することができます。受講者の条件はいくつかありますが、その筆頭は『佐野市内に移住する人』です」

市内の既存店で仕込みの見学も可能

「佐野らーめん」の特徴でもある「青竹打ち」の麺作りも学ぶことができる


「佐野らーめん予備校」での修行期間は、個々の事情に合わせて柔軟に対応してくれると言うが、移住希望者はおおむね、約2カ月の間にのべ9日間の基礎研修を受講。その後、個々の経験や進歩に応じて約半年から3年ほどの本格修業へと移行し、独立開業できる「佐野らーめん職人」を目指す。

さらに、これらの過程を経て「佐野らーめん予備校」を修了した後は、佐野市内での独立開業に向けたテナントの手配、資金融資の紹介、各種の届け出などをできる限り佐野市がバックアップするという。

「『佐野らーめん予備校』は修行から開業までをワンストップでサポートする取り組みで、佐野市に移住するための“仕事の確保”を目指したものです」

調理の実践だけでなく、座学での学びの時間も

大手醤油製造会社による醤油の選び方講座の様子


「佐野らーめん予備校」はどんな人が受講している?

とはいえ、「『佐野らーめん』経営を商いにしたい」と思っている人が数多くいるとは考えにくいのも正直なところで、ごく限られた経験者の受講が大半なのではないかという先入観を抱いた。

しかし担当者よれば、いろんな職業の人から問い合わせがあるなかで「佐野らーめん予備校」の受講者として推奨しているのは、やはり「佐野らーめん」が大好きな人。これに加え、麺打ちやスープ作りなどの力仕事が多いため、気力・体力ともに自信のある人が望ましいという。

「たしかに、これまで和食・中華・ラーメンなど飲食業の経験がある移住希望者で、『コロナ禍などの影響で売上が下がったため、それまでの経営に見切りをつけて再出発したい』という方は一定数いますし、『いつかは自分の店を持ちたい』という思いで独立される方もいらっしゃいます。その一方で、『過去に飲食業の経験は全くないけど、子育てなどもひと段落したので早期退職して次のキャリアをスタートさせたい』といった40〜50代の方も多くいらっしゃいます。こういった方たちを中心に、準備期間に関わった方を含めて今まで22名が受講し、14世帯・30名が佐野市に移住しました。そのうち7名が佐野市内に『佐野らーめん』を開業。それぞれ順調に営業されています。

なかには閉店時間を待たずして完売するような人気店に成長した例もあります。開業までの期間についてもさまざまで、ラーメン店の勤務や居酒屋経営の実績があった方が『佐野らーめん予備校』を2022年の8~9月に受講し、タイミングよく居抜きの店舗とも巡り会い、同年12月にオープンした店もあります。逆に『佐野らーめん予備校』修了後に、さらに佐野市内の人気店で3年間の修行を経て開業した例もあります。このように、移住希望者個々の事情や思いに対して、できるだけ柔軟に対応しているのも『佐野らーめん予備校』の魅力の1つだと自負しています」

「佐野らーめん予備校」出身者のラーメン店が行列に


「佐野らーめん」を活用し、人口減少問題に立ち向かう佐野市

移住希望者に対して佐野市がここまで手厚いサポートを実施するのは、冒頭でも触れた人口減少問題という理由もあるが、その一方で、「佐野らーめん」のさらなる人気拡大への思いもあるようだ。

「ほかの地方都市同様、佐野市でも人口減少を大きな課題として抱えており、地元に根付いた『佐野らーめん』専門店の中には、店主の高齢化や後継者不足によって継続が困難となるお店も数多くあります。こういった点でも、『佐野らーめん予備校』を実施し、修了者を輩出することで、『佐野らーめん』自体の裾野を広げていきたいと考えています」

また、今後は「佐野らーめん予備校」の運営資金補強のため、同予備校オリジナルの商品開発なども行っていくそうだ。

移住者誘致の目的だけでなく、「佐野らーめん」自体のさらなる周知と飛躍も目指す


全国的に見ても例を見ない「ラーメン作りによる移住者誘致」という、ユニークな佐野市の取り組み。最後に、今後の展望も聞いた。

「『佐野らーめん』は1916年頃に佐野市で誕生し、今や全国に知られるようになったご当地ラーメンです。この味わいをさらなる未来に継承するために、今後もさらに『佐野らーめん予備校』の周知と運営に努めていきたいと思っています。『佐野らーめん』が大好きな方、フードビジネスに関心のある方は、ぜひ今後もご注目いただければうれしいです」

取材・文=松田義人(deco)

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