気象病に悩む人々の救世主「頭痛ーる」開発秘話。“天気と頭痛の関係”に着目しておでかけ準備の新定番に

東京ウォーカー(全国版)

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暑さが落ち着いてきておでかけの予定も立てやすい秋。楽しいイベントのために、常に体調を万全にしておきたいものだ。しかし台風や秋雨など、雨の日が多いのも秋の特徴。ゆえに、人によっては体調不良に陥りやすい季節でもある。

そんな人々が頼りにしている、「頭痛ーる」(ずつーる)というアプリはご存知だろうか?気圧の変動によって体調不良が起こりやすくなることを教えてくれる機能に加えて、その日、その時間の“痛み”を記録できる機能もついているアプリだ。実はこのアプリ、2023年で誕生10周年を迎え、現在では1300万ダウンロードを突破しているそう。

今回は、多くの人々を救う「頭痛ーる」を運営している株式会社ベルシステム24 事業開発本部 ポッケ事業部 クリエイティブグループの安中朋哉さんと、気象予報士で同社同事業部コンテンツグループの飯山隆茂さんに、アプリの開発秘話を聞いた。

この時期特に大活躍の「頭痛ーる」。“なんかしんどい”というときに「気象病」を疑うことがスタンダードになりつつある


この10年間で認知度が爆上がりした「気象病」とは?

2012年、「天気と頭痛に関連があるのではないか?」という1人の気象予報士の女性社員の声から「頭痛ーる」の開発がスタート。当時はまだ天気と頭痛が関係しているとはあまり考えられておらず、学術的な論文も少なく、認知度としてもかなり低かったのだとか。それを受け、社内で“社員たちの頭痛が発生した日をチェックする”という方法で検証したところ、気圧と頭痛に相関があることがわかった。

その結果には、安中さんも「非常に驚いた」と当時を振り返る。

「『頭痛ーる』という名称は、特に“頭痛”にフォーカスしていることが伝わればと思い、試行錯誤しました。ただの予報ではなく、記録ができることから『ツール』という言葉との組み合わせがいいのではと考え、この名称に落ち着きました。たまに『あたまいたーる』と読まれることもありますが、それも含めて印象に残る名前にできたんじゃないかと思います」

「新規性を出していきたい」という思いとともに、“気象用語などの難しい言葉をどのように噛み砕いて人々に伝わりやすくするか”という点に苦労したそうだ。難しい言葉を並べるよりも、既視感のある言葉のほうが受け取り側も困惑しないという考えから、「注意報」「警報」といった耳馴染みのある言葉を採用。こうして2013年にアプリがリリースされ、以降は改良を繰り返し、多くの人々に愛されながら無事に10周年を迎えることとなった。

気圧の変動をシンプルでわかりやすいアイコンで表示。天気予報を見ている感覚で気圧をチェックできる


今ではよく耳にするようになった「気象病」とは、天候の変化によって引き起こされる体調不良の総称で、頭痛をはじめ、めまいや吐き気、関節痛、気分の落ち込みといった諸症状のことを指す。そのメカニズムはまだハッキリとしていないようだが、内耳に存在する“気圧センサー”が関係しているのではないかと考えられている。センサーが気圧の変化を察知し、その変動が大きいと自律神経に影響を及ぼし、もともとある持病の悪化などが起こることで発生すると言われている。

こうした気象病に関することがあまり知られていなかった当時、同じタイミングで同じものを共有できる媒体が「頭痛ーる」との相性がいいと考え、Twitter(現在のX)などのSNSを活用した、気象予報士による気圧予報の解説や機能紹介の活動を行ったという。気圧の変動をアプリ内だけでなくSNSでも知らせて、気象病および「頭痛ーる」の認知度を高める活動を進めてきた。

「アプリから気圧グラフをシェアできるので、変動が激しい時間に爆弾マークが並んでいると、『自分の地域、今こんなにやばい!』とシェアしたくなると思うんです。そういうタイムリーな情報とSNSというものがマッチしていると思い、SNSを活用してきました」

最近ではXだけでなく、InstagramやTikTokといった主要なSNSでも発信しており、気圧予報以外にも、天気に関わる豆知識や痛みに対処するためのマッサージの情報なども紹介している。

そのほか、医師への訴求も行い、日本頭痛学会に所属する医師と連携して気象病について啓蒙を続けている。また、リアルイベントの実施にも力を入れていて、気象病をはじめ台風のメカニズムなど、天気に関わる内容を子供にもわかりやすいように遊びながら学べる場を提供している。現在、株式会社ベルシステム24は全国38カ所に拠点を構えており、拠点のある地域を中心に、今後もリアルイベントを実施していく予定なんだとか。

北海道旭川市で2023年2月に実施された「まちなかキャンパス2023」

ペットボトルを用いて、まるで竜巻のような渦巻の水流を再現。ほかにも、気圧実験や風速体感ゲームといった楽しみながら学べる内容に

オリジナルのキャラクターをデザインするブースでは、子供たちが夢中になってマロの友達を描く姿が見られたようだ


辛い過去を背負ったキャラクターたちの設定の意図

「頭痛ーる」の人気には、アプリ内に登場するキャラクターも一役買っている。気象病や天気に関する情報を、「ふくろう博士」(「はかせ」ではなく「ひろし」)とその養子の「マロ」、謎のてるてる坊主の「てるてるネコ」といった、かわいらしいキャラクターたちが教えてくれる仕様で、アプリではキャラクターたちの設定を見ることもできるのだが、これがなかなかヘビーな内容になっており、それぞれのキャラクターが秘密や辛い過去を持っている。

「彼らは難しい用語や説明をわかりやすく伝えるための案内役としてのキャラクターであり、癒やしでもあります。“自分だけが辛いわけじゃない”と思ってもらえるように、少々過酷な境遇に設定しました。辛いときに見るアプリだからこそ、その気持ちの共感や共有ができて、少しでも楽になってくれればと思います」

「はかせ」ではなく「ひろし」と読ませるフクロウがモデルのキャラクター。本名が切ない…

まさかのみなしご設定のマロ。思いもよらず悲しい過去を持っている

公式からの説明までもが少なく、謎すぎるてるてるネコ


こうしたキャラクターによるメンタル面の癒やしに加え、使いやすさの面では特にグラフの表示にはこだわりを持って制作したという。気圧の変動が大きければ大きいほど、グラフも乱高下を繰り返すため、上にスクロールしたり下にスクロールしたり、はたまた時間経過を見るために左右に動かすこともあり、グラフを見るだけでもストレスになってしまう。そうしたことが起こらないよう、見たい時点での気圧に合わせてメモリが動き、気圧グラフが常に画面の真ん中に来るように設計。時間の経過でグラフのほうが動いてくれるので、ユーザーは上下に動かす必要がなくなり、ストレスを感じなくて済むというわけだ。

こだわりの詰まった気圧グラフは、スマホのような小さい画面でも見やすい設計になっている


「頭痛ーる」は気圧や天気の予報が見られるだけでなく、「痛みノート」という記録をつける機能も。日常的に体調の記録をつけることで自分の不調が気圧と関連するのかを判断できるようになり、対策もしやすくなる。この機能は、頭が痛いときに記録する「頭痛ダイアリー」という、医療機関でも使われるものをベースにしているそう。

「頭が痛いときに細かく記録をするのってすごくしんどくないですか?それに、あんまり項目が多いと続けにくいというのもあります。辛いときでも簡単に、医師が見てもギリギリ診断ができるくらいのものを目指しました。辛さを4段階の表情でつけるようにすると、自分のなかでも基準ができてくるんですね」

なるべく簡単に、しかしある程度の精度を保って、という絶妙なラインをうまくまとめることができたようで、医療機関では医師から患者にアプリを勧めることもあったという。

記録のタイミングについては、「ぜひ、細かくつけてください。痛みが起きたときや痛みが引いたとき、何もないときにも記録することで、自分の体調の状況や薬の効きが確認できます。また、データが集積されることで、アプリの精度が上がる可能性があります」と安中さん。

「頭痛ーる」には気圧グラフのほかに、週間天気予報、花粉情報、うつ指数なども確認でき、最近では星座占いのコンテンツも追加。「天気に関わる情報を網羅的に発信できる、毎朝のニュース番組のような存在にしたい」と意気込んだ。気象病がある程度周知されてきたからこそ、さまざまな要素を追加していっているのだとか。

「痛みの記録」では、痛みの段階のほかに服用した薬と生理周期、ひと言メモの記録もできる。気象病とは切っても切り離せない要素が簡潔にまとめられる


10周年を迎えた「頭痛ーる」の目標は「海外進出」

10年間を振り返り、安中さんは「開発当初に思い描いていた到達点に、10年かけて近づけていったというイメージ」と話す。大きく変化したことはあまりないが、少しずつ細かなところを改良していくことで、より使いやすくしていくことができたという。

細かい改良点としては、「気圧が下がったときだけでなく上がったときにも体調が悪くなる」という声から、気圧が上がったときにもアラートが鳴るようにしたこと。また、鎮痛剤と胃薬を併用している人のために、服用した薬剤を複数個記録できるようにした点が挙げられる。いずれも大掛かりな変更というわけではないが、ユーザーにとってはかなりありがたい改良と言えるのではないだろうか。

「使い勝手については、まだまだ磨けるところがあると思っています。たとえば、記録をつけるときにもっと簡単に、もっと楽しくできるようにしたいと考えています」

さらに、アプリとしての精度はそのままに、海外向けにローカライズしてグローバル展開も視野に入れているそう。出張や留学で海外に行く人々から、「日本以外でも使えるようにしてほしい」という要望が多く寄せられているのだとか。「頭痛ーる」が海外進出する日もそう遠くはないかもしれない。

2023年2月には、「頭痛ーる」を運営するなかで得たノウハウを詰め込んだ「月間100万人利用アプリ!頭痛ーるが贈る しんどい低気圧とのつきあいかた」(新潮社)という書籍を発売。これまでの研究や運営の集大成が書かれている。「薬を飲む以外のマッサージなどの対処法も掲載しているので、『頭痛ーる』と併せて活用してもらえれば」と飯山さん。薬を飲み過ぎたくない、あまり薬に頼りたくないといった思いを抱える人にとって有益な情報が掲載されているようだ。

また、2023年9月には10周年を記念して、「頭痛ーる」公式クレジットカードを発行。 “推し”を応援する次世代型クレジットカード「Nudge」(ナッジ)とコラボし、カード利用金額に応じて、上記の書籍や頭痛―る10周年記念マグカップなどの特典を受けることができる。

「月間100万人利用アプリ!頭痛ーるが贈る しんどい低気圧とのつきあいかた」(新潮社)


「外出するときって、服や靴、ハンカチなど、いろんな準備をすると思います。そういったおでかけの準備の1つとして、おでかけ予定日の気圧をチェックして、体調を整えるために『頭痛ーる』を使っていただきたいですね」

最後に、「睡眠不足だと気象病も悪化しやすいので、睡眠も大切ですよ!」と飯山さんが教えてくれた。おでかけのときに限らず、仕事や勉強、家事を気持ちよく進めるためにも、「頭痛ーる」を活用してみてはいかがだろうか。

取材・文=織田繭(にげば企画)

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