8月31日を何度も繰り返すふたり、脱出のカギは童貞を捨てること!?青春タイムループコメディ「8月31日のロングサマー」

東京ウォーカー(全国版)

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小学生くらいまでは終わるのが待ち遠しいけれど、中高生になったら終わってほしくない、大人になったらもはや永遠に終わってほしくない「夏休み」。今年の夏こそは痩せるぞ~、なんて目標が達成されないまま夏休み最後の日を迎えると、絶望的な気分になるものだ。

※2023年8月31日掲載、ダ・ヴィンチWebの転載記事です

「8月31日のロングサマー」(伊藤一角/講談社)


「8月31日のロングサマー」(伊藤一角/講談社)の主人公、男子校に通う高校2年生の鈴木鷹也も、似たような気持ちだったのかもしれない。

8月31日の午後1時、鷹也は公園で待ち合わせをしている。やってくるのは、鷹也と同じく高校生で、夏休み最終日を迎えた高木佳夏。はたから見れば、どこにでもいる──にしてはちょっと男子のほうがモテなそうで釣り合わないカップルだが、実はこのふたり、8月31日をループしている。二度と来ないはずの高2の夏休み最終日を、すでに1カ月もループしているのだ。

もともと他人の鷹也と高木さんが知り合えたのは、鷹也が毎日、地元の海が映るテレビのお天気中継で、ひとりだけ違う服を着ていたから(賢い)。それを彼女が発見して、中継場所まで会いに来てくれたのだ。

翌日の8月31日まで記憶を繰り越せることがわかっているのは、いまのところ世界にふたりだけ。そんなある日、鷹也はふと気づいてしまう。このループの原因は、スマホに打ち込んでいた自分の「夏休みの目標」が達成されていないからだ。映画や小説なんかでも、時間のループは「やり残したこと」への強い未練が原因になっているではないか。

鷹也がこの夏休みに立てた目標とは、「彼女を作って童貞を捨てる」こと。とはいえ、夏休み初日からあらゆる手を尽くしても仲のいい女性すらいない鷹也には、ループする夏休み最終日だけでそんな相手を見つけることは不可能だ──たったひとりを除いては。

私もこの夏にやろうと思っていたダイエットは諦めたし、この記事をお読みのみなさんも、多かれ少なかれそういった未練を抱えたまま夏を終えようとしていることだろう。しかし鷹也と高木さんは、8月31日を繰り返しているのだ、終わらない夏休みなのだ。

初めてのID交換、初めてのデート、初めてのプールに、初めての××……どの8月31日も、彼らの距離は少しずつ縮まっていく。どんなにじれったいふたりでも、8月31日が繰り返されているのなら、彼らの夏を、青春を、謳歌しきることができ……る、はず……?

8月31日を繰り返している彼らだけれど、そういえば恋愛とは、相手について新しい発見をする、その繰り返しで育っていくものなのかもしれない。このふたりを見ていると、しみじみそう思えてくる。

夏にやり残したことがある人、青春をやり直したい人。夏休みや恋愛の「あるある」がふんだんに盛り込まれた本作を手に取れば、今年の夏はまだ、やり直せます。

文=三田ゆき

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