「自分で思うより弱ってる…?」不調の正体は、無縁と思っていた“うつ”。『誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド』著者が“プチうつ”に込めた思い
東京ウォーカー(全国版)
「最近ずっとだるいしやる気が出ない…」ある日、そんな不調に見舞われた、イラストレーター・コミックエッセイストのハラユキさん。疲れなのか、加齢によるものか、燃え尽き症候群か……?戸惑うハラユキさんをむしばんでいた原因は、自分には無縁と疑わなかった「うつ」だった。

「誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド」は、2022年に「軽度から中度のうつ」と診断されたハラユキさんが、うつの最初の兆しから闘病、うつ抜けに至る日々を描いたコミックルポだ。うつを患ったことを自分自身が一番不思議に思ったハラユキさん。医師の監修はもちろんのこと、治療中から調べ始めたうつに対する疑問や、自分なりのケアの方法までがダイレクトに反映された一冊となっている。今回は著者のハラユキさんに、「プチうつ脱出ガイド」と銘打った本作に込めた思いや、うつと診断されるまでの当時の心境を訊いた。
「なんとかしないとヤバイ!!」やる気のなさを解決するためお祓いへ。そこで起こった「泣いちゃった事件」
「なんで?最近終わった仕事の疲れがどっと出た?」。ハラユキさんが今までと違う落ち込みを感じたのは、2022年秋のこと。とにかくだるくて何にも興味を持てない、仕事も家事もしたくない……。そんな不調に戸惑うハラユキさんだったが、そのときはそれがうつ病の兆しとは夢にも思わなかった。




というのも、ハラユキさんの中では「うつ病になる人」は自分と真逆で、完璧主義・神経質・几帳面な人というイメージ。子育ての際も「完」のつく育児は絶対しないと心に決めていたほど完璧主義とは程遠い自分はならないものだと捉えていたのだ。
とは言え、万事やる気が出ないことに「なんとかしないとヤバイ!!」と強い危機感を持ったハラユキさん。そんな折り、知人に「お祓い」を進められ、気分転換で足を運ぶことにするが、神社との連絡の行き違いでお祓いはスムーズに進まず、モヤモヤが募ってしまう。
ハラユキさんはつい我慢できず「お祓いだけに集中したかったんです」と、不満を伝えはじめるが、話の途中で何故か涙を流していることに気付く。初対面の人に連絡の行き違いぐらいで泣いてしまったことに「私って自分で思うより弱ってる…?」と動揺するハラユキさんだったが、それこそが「うつ」であることに気付くのはまだ先のことだった――。
「すれ違いを少しでも減らしたい」“軽度のうつ”の人に向けた一冊
――うつ病を疑っていなかったところ、「軽度から中度のうつ」と診断されたそうですね。それまで持っていたうつのイメージはどんなものでしたか?
【ハラユキさん】「完璧主義で几帳面で神経質でマジメな人がなる病気というイメージでした。私は仕事はマジメだと思うんですが、それ以外は当てはまらないと思ったんです。生活面はだらしない部分やいいかげんなところもたくさんあるので。たとえば、ビンの蓋が大抵ちゃんと閉まってないようなタイプです」
――本書では「プチうつ」としてハラユキさんのうつの兆候から寛解までの体験が描かれています。「うつ病」の辛い症状もたくさんある中、「プチうつ」という表現を選んだのは何故でしょうか?
【ハラユキさん】「いろんな人のうつの体験記を読んだり聞いたりしたんですが、私の症状とは比べ物にならないくらい大変だなと思うものがたくさんあったんですね。 自殺未遂をしたり、入院したり、何年も休職したり……。そういう重い症状の人が治療の参考にと私の本を手にとると、参考にならずガッカリさせてしまう部分もあると思ったんです。そうなってしまったらとても申し訳ない。そういうすれ違いを少しでも減らしたくて、サブタイトルに『プチうつ』という言葉をあえて入れました」
――うつと気付く前の戸惑いや、復調のための過ごし方は誰にでもありえそうなものに感じました。あらためて、当時の心境を教えてください。
【ハラユキさん】「私はもともと好奇心旺盛で、あれしよう、これしたい、あれが知りたい、がどんどん湧いてくる人間なんです。でも心にそういうものが全く湧いてこない。とにかく何もかもが面倒くさい。まあ、家事については前から面倒なときもやる気も起きないときもよくありましたが、仕事の、しかも熱意を持ってやっていた連載に対してもやる気がなくなってしまったのは『おかしいな?』と思いました」
――闘病中にスパイスで癒やされた体験や、印象に残ったふとした瞬間の光景など、一人の人間の物語として惹き込まれる作品にもなっていると感じました。「うつ」という病をご自身の体験として漫画で描く上で大切にされたことはありますか?
【ハラユキさん】「いろいろな精神科医の先生の本を読んでわかったのは、うつが医学的にもまだまだ解明されてない部分が多いということ、数値などでは説明できない世界だということ、だからこそ先生によって考え方がかなり違う、ということでした。
そして、ひとことでうつ病といっても、人によってかなり症状が違います。私の『スパイスが無性に食べたくなる』なんて症状も聞いたことがありません。なので、うつにもいろんなタイプがあるということ、そして、専門家にもいろんな意見があるということを大前提として本を作りたいと思いました。三人の先生の意見を載せたのはそのためです。精神医療の世界では、自分にあったタイプの先生を選ぶのが大事だと思うので、“うつ症状入門”であり、“精神医療との付き合い方入門”にもなればいいなと執筆しました」
――本作で伝えたいことや、どんな人に、どんな風に読んでほしいかメッセージをお願いします。
【ハラユキさん】「気分が落ち込んだり、やる気がでなくて困っているけど、それが病院が必要なレベルかどうかわからない、頑張ればなんとか生活はできるけど、なんかやれることはあるんじゃないか、そんな風に思っている人にまずいちばんに読んでほしいです。うつ症状が起きるいろんな原因、いろんな診療科や相談先を紹介しているので、何かヒントになると思うんです。
あと、「年なんだからしょうがないよ」といろんな心身の状態をあきらめている人にもぜひ読んでほしいです。私も一時期、「年だから」と諦めかけたのですが、かなり元気になった今、必ずしもそういうわけじゃないとわかったので」
取材協力:ハラユキ
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