電気シェーバー界に革命起こる!持ち手なし?パナソニックの「ラムダッシュ パームイン」が販売台数5万台以上の大ヒット商品になったワケ
東京ウォーカー(全国版)
電気シェーバーといえば、上部分に刃がついていて下に持ち手がついているデザインが一般的だった。そんな電気シェーバー市場の常識を塗り替えたのが、パナソニック株式会社(以下、パナソニック)の「ラムダッシュ パームイン(LAMDASH PALM IN)」。この製品の特徴は、これまで当たり前についていた持ち手をなくし、上質でスタイリッシュなデザインに落とし込んでいるところだ。
ラムダッシュ パームインはその見た目と高性能な機能から、約4カ月間で想定の12倍となる5万2000台以上の販売を記録。また『日経トレンディ 2023年12月号』では「2023年ヒット商品ベスト30」に15位に選ばれるなど、一般的な電気シェーバーではありえないほどの大人気商品となった。
今回はこの製品が大ヒットを果たした理由や、企画・開発における苦労やこだわりなどについて、パナソニック くらしアプライアンス社 メンズグルーミング商品企画課 主務の北村友資さんにインタビューを行った。
電気シェーバーの概念を変えた「ラムダッシュ パームイン」
ラムダッシュ パームインは、パナソニックが2023年9月1日に発売した新しい形の電気シェーバー。ラムダッシュ ハイエンドシリーズ「ラムダッシュPRO 5枚刃」と同じ5枚刃システムを搭載しながら、一般的な電気シェーバーとは異なり持ち手のない画期的なデザインが特徴だ。手のひらに収まるため、手首や指先の感覚で思い通りシェービングすることができる。
持ち手がないという過去に類を見ない形のこの商品、一体どのような経緯で企画・開発がスタートしたのだろうか。
「そもそものきっかけとして、毎朝の退屈なシェービングを楽しいものにという気持ちがありました。電気シェーバーユーザーは、使用しているシェーバーが壊れたタイミングや古くなってきたタイミングで新しいシェーバーの購入を検討することが多いです。しかし、斬新でオシャレなアイテムを自分の生活の中に取り入れたい、そのような理由で選ばれる電気シェーバーを目指して、新商品を企画しました」
そして、製品の一番の特徴である持ち手のない形が発案されたのは、まるでスキンケアするような感覚で、肌に近いところで手でなでるようなシェービングをするためだったという。そこで、持ち手の部分に搭載していた部品をヘッドの部分に詰め込み、スタイリッシュな形状を実現。製品の一番の特徴である、手の中に収まるデザインが完成した。
「電気シェーバーの剃り性能には、刃を駆動するリニアモーター性能が大きく起因します。パナソニックは何十年もかけて、このリニアモーターの小型高性能化を積み重ねてきました。この技術力があったからこそ、高性能な電気シェーバーを手のひらサイズに凝縮することができました。コンパクトになりながらも性能を一切落とさず、これまでにないオシャレなビジュアルを実現し、ハイエンドのラムダッシュブランドとして製品を展開できているのが一番のこだわりですね」
人気の理由は、サイズと質感にこだわり抜いたデザイン
しかし、開発においては持ち手のないデザインを実現するのは容易ではなかったという。当初、持ち手の部分に搭載していた部品をヘッドの部分にまとめて搭載する検討時には、どうしても目標のサイズよりも大きくなってしまったそうだ。しかし、北村さんはミリ単位での大きさに徹底的にこだわり、手のひらに最も収まりのよいサイズを追求した。
「実際に試作した最初のモデルでは、高さが目標値より2mmほど大きかったんです。たったの2mmなのですが、手で握ってみるとボリューミーに感じてしまい、使いにくさを覚えてしまいました。そのため、何度も試作を繰り返して細かい設計を詰めていき、目標値に到達するサイズに仕上げました」
そして、石目調の見た目にもこだわりが詰め込まれている。ラムダッシュ パームインは上質なライフスタイルを求めている30~40代男性がメインのターゲット層。そのため、オシャレな洗面台やテーブルに置いても違和感のない「自然の中にある石のような佇まい」を目指し、石のような模様のデザインだけでなく、触れるとひんやりとする質感まで追求した。
「理想の質感を出すために使用したのが、『NAGORI(R)』という海洋ミネラルを配合したイノベーティブ・プラスチックで、陶器のような質感を持ちながらも割れにくいのが特徴です。電気シェーバーのような家電製品はプラスチックを多用していますが、触れた時に温度感がないと愛着も湧かないのではないかと思いました。そこで、自然の中にあるようなひんやりした質感や、高級感が漂い感性をくすぐるようなデザインになりました」
このようなこだわりを徹底した結果、完成したラムダッシュ パームイン。実際に店舗に並ぶと「オシャレ!」「かっこいい!」と一気に話題に。特に、これまでの電気シェーバーの買われ方と違ったのは「使っているシェーバーは壊れていないのに買う」といった人が多かったことだ。電気シェーバーは壊れたときや古くなってきたころに買い替えることが多いが、ラムダッシュ パームインはその見た目やデザインが多くの人に気に入られ、2台目としての購入にもつながったという。
「そして、もうひとつ多かったのがプレゼントとして購入されるお客様でした。特にクリスマスの時期には、パートナーの方へのプレゼントとして購入される女性も多いのが特徴的でした。やっぱり、これまでの電気シェーバーは男臭さを感じさせるものでした。しかし、高級インテリアのようなパームインのデザインは、女性からみても評価が高かったのだと思います」
市場縮小のなかでも大ヒット!ブランドの今後の展望は?
現在、脱毛の流行や労働人口の減少などにより、電気シェーバーの市場は少しずつ縮小の一途をたどっている。そして2020年から続いたコロナ禍により、リモートワークの増加でひげを剃る機会が減少したことも、市場の収縮に拍車をかけたそうだ。だが、2024年現在はコロナ禍も落ち着きを見せたことで少し上がり調子に。その追い風を受けたことも、ラムダッシュ パームインがヒットした要因のひとつだったと北村さんは話す。
「市場が縮小するなかで製品をヒットさせられたのがとてもうれしいです。私としては、今回新しい電気シェーバーカテゴリーを作れたと思っています。ただひげを剃るだけのものではなく、洗面空間や部屋に置いて豊かなくらしを演出できるような、そんなカテゴリーの製品にできたと感じています。また、ひげ剃りに悩んでいる方ってたくさんいると思います。そのような方に向けて、感性的に買ったらうれしくなる高性能なシェーバーであることを訴求し、ユーザーの幅を広げていきたいなと思っています」
最後に、今後のラムダッシュ パームインの展望について、北村さんにお話を聞いた。
「今後、パームインのデザインをスタンダードなものにして、お客様が電気シェーバーを選ぶ際に『持ち手のあるシェーバー』と『手のひらにおさまるパームイン』の2つから選べるような状態を作り上げたいですね。また、せっかくこれだけ尖った製品を作ることができたので、今後はもっとお客様にインパクトを与えられるような取り組みをしていきたいと考えています。ぜひこれからのパームインの展開にご期待ください!」
持ち手をなくすという、これまでになかった斬新なデザインで大ヒットとなったラムダッシュ パームイン。今後は、これまで電気シェーバーを使うのが嫌だった人や、「カミソリでもいいか」と考えていた人も取り込み、さらに伸長していくことだろう。毎朝のひげ剃りをオシャレで楽しいものに変化させた、ラムダッシュ パームインの今後に注目だ。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・デザインの「当たり前」を塗り替えるのがヒットの第一歩
・マーケティングに大事なのは、顧客のライフスタイルを意識すること
・インパクトを与えた商品は、市場のスタンダードになる可能性も
取材・文=越前与
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