「辛辣!」無表情アンドロイドに自作を読んでもらったら感想が辛口すぎ…けれど結末が胸を打つ短編漫画「小説読みのアンドロイド」【作者に訊く】
東京ウォーカー(全国版)
ひとりの老人が修理したお仕事アンドロイド。主人から頼まれたのは、仕事ではなく「小説を読む」ことで――。
「レスられ熊」や「在宅勤務子ちゃん~わたしたちのリモートワーク日記~」など、オリジナルの作品を数多く発表している、漫画家の一秒(
@ichibyo3
)さん。一秒さんの創作漫画「小説読みのアンドロイド」は、X上で5万件以上のいいねが寄せられた短編作品だ。
荒廃した世界にたったひとり取り残された老人と、彼に修理されたアンドロイドの少女「イヴ」の二人きりで描かれる同作。イヴのマスターとなった老人は、自作した小説の感想をイヴに尋ねるも、アンドロイドの彼女は歯に衣を着せぬ辛辣なレビューばかり。それでもくじけず小説を書く老人だったが、彼の身体は病に冒され――、というストーリーだ。
とある小説の一節を引き継ぐようにつぶやく結末が余韻を残し、読者からは「心えぐられた」「優しい物語です」と多くの感動の声が寄せられた同作。2024年1月、Amazon Kindleの無料電子書籍
「一秒短編集」
に収録されたこの機に、作品制作の舞台裏を作者の一秒さんに振り返ってもらった。
「いつか誰かに届くように」創作の根底にある、祈りのような思い
――「小説読みのアンドロイド」を描いたきっかけを教えてください。
【一秒】描いた当時、SFに少しハマっていたので自分でも描きたいなと思っておりいろいろ考えていました。アイデアが寝起きにパッと思いついたので、それをベースに勢いで描き上げました。
――「小説を読むようにはできていない」イヴと、下手でも書き続けるマスターのやり取りがすてきな作品です。作品を描くうえで意識されたことはなんですか?
【一秒】「キャラクターらしさ」は意識して描きました。アイデアが思いついたとき、キャラクターもすんなりイメージできていたので「イヴならこんなこと言うだろうな」「マスターはこんな行動するだろうな」というのを矛盾なく描くことができました。
――ずっと無表情なアンドロイドながら、かわいらしいイヴも大きな魅力です。キャラクター作りではどんなところをポイントにされましたか?
【一秒】終末ものですが、あまり暗くなりすぎないようなキャラ造形を心がけました。イヴは淡々としてるキャラクターなので、逆に対となるマスターは表情豊かで明るいキャラクターにしました。結果的にいい掛け合いができて私も楽しく描けました。
――結末の、マスターの小説の一節を引き継ぐかのように文を紡ぐイヴの後ろ姿が印象的でした。作品に込めた思いを教えてください。
【一秒】ひとりで創作してると「この作品はほんとにおもしろいか、伝わるのだろうか」と悩むことがあります。そんなときはいつか読んでくれるであろう読者のことを考えながら描き上げます。
もしかしたらその読者とは一生会えないかもしれないし、遠い遠い星の人かもしれない。だけどその「誰か」がこの世界にいると信じるだけで不思議なことに描き上げることができます。マスターとイブもそんな「誰か」を思いながら物語を紡いでいったのだと思います。
創作に限らず手紙や文章など人が何かを描くとき「いつか誰かに届くように」という気持ちが根底にあるような気がします。そんな祈りが伝わるようにという思いでこの作品を描きました。
――同作は電子書籍「一秒短編集」にも収録されています。今回、短編集を制作された経緯やコンセプトがあれば教えてください。
【一秒】これまでSNSで発表してきた作品が溜まっていたのでまとめようと思って発表しました。SNSだと漫画は流れてきて読むものという側面が強いと思うのですが、ほかにもこんな作品を描いてると知ってもらえたらうれしいです。
――作品には多くの反響が寄せられました。反響への思いや、本作を入り口にされる方に向けて短編集の内容を教えてください。
【一秒】思っていた以上に反響があり、ありがたいです。短編集は恋愛ありSFありのごった煮ですがサクッと読めて楽しんでもらえると思います。これからも少しずつ短編をまとめていきますので機会があればまたお会いしましょう!
取材協力:一秒(@ichibyo3)
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