東京の食文化の魅力を再発見!“ガストロノミーツーリズム”のツアーに参加してみた
東京ウォーカー(全国版)
東京といえば、ビルが立ち並び、交通機関も発達している都会的なイメージが強い都市。一方で、長い歴史の中で日本の中心地として各地から人が訪れ、流通や交流があった場所としての気候風土が江戸・東京ならではの文化を育んできた。
中でも、江戸時代から続く野菜の生産や酒造りなど食分野での魅力がある点は、東京に暮らす人でも意外と知らないことが多いのが現状だ。そんな中、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、海外からも日本食は大きな注目を集めている。その食文化(フードカルチャー)に触れることを目的として、12月と2月の2回にわたって開催された“ガストロノミーツーリズム”のモデルツアーに編集部員が参加!

モデルツアーをサポートするツアーアドバイザーや生産者、料理人などの識者とコミュニケーションを取りながら体験し、東京の食文化を再発見できた“ガストロノミーツーリズム”についてレポートする。
奥多摩でわさび田訪問とそば打ち体験ツアー
わさびブラザーズのアテンドでわさび田訪問
日本食を代表する食材のひとつであるわさび。日本固有の植物で、奈良時代の文献にもその名が残っており、古来から食されてきたことがわかっている。そして、水耕栽培で育てられたものは“水わさび”と呼ばれており、渓流や湧水で栽培され、根をすりおろして食べられている。“水わさび”が東京で生産されてきた歴史は古く、江戸時代までさかのぼる。さらに、収穫量においても全国3位にランクイン(※2019年度特用林産基礎資料/農林水産省より)するなど、東京の食の魅力を語るうえでは外せない野菜だ。


わさびのことをもっとよく知ってほしいと、2020年から奥多摩でわさびの生産や普及を行っているのが、わさびブラザーズとして活動している角井仁さんと竜也さん兄弟。ニュージーランドでアウトドアガイドをしていたというお兄さんの仁さん。奥多摩に訪れたのもアウトドアの仕事がきっかけだったそう。そこで出合ったわさびに魅了され、わさび栽培に携わるようになったとのこと。兄の話を聞くうちに弟の竜也さんもその魅力を知って、わさびブラザーズが誕生した。「まずは水わさびがどんなものか知ってもらいたい」という2人のアテンドで、わさび田へ出発!

民家が点在する生活エリアから少し小道に入ると、ひんやりとした水分の多い山の空気を感じる山道へと続いていく。20〜30分ほど山を登ったところに、少しひらけた場所があり、わさび田が広がっていた。わさびは水がきれいな土地でしか育たないため、自然の恵みを象徴する野菜でもある。奥多摩では、ビルが立ち並び、ひっきりなしに車が行き来する都心とはあまりにも異なる東京の姿を知ることができる。
栽培場所が山奥で力仕事も多いことから、わさび栽培は体力が必要。そのため、高齢化による生産者の減少、担い手不足が課題なのだそう。そこに現れたわさびブラザーズは、まさに救世主といえる存在だ。「僕らのすぐ上の生産者が70歳オーバーで、下の世代もほぼいないんです。だから、江戸の食文化を支えたり、お殿様に献上したり、歴史ある特産品の東京のわさびの文化を守り、繋げるというのが僕らの役目だと思っています」(仁さん)


わさびの収穫を実演しながら、「わさびの持つ辛味成分は根茎の成長を妨げる効果があります。わさび田を常に流れている水がその成分を洗い流すため、水わさびの根は大きく育ち、一方で、畑で育つわさびは根が育たず、葉や茎を食べるわさびになるんですよ」と、竜也さんがわさびの仕組みを教えてくれた。


わさびをおろしたそばから、ふんわりと漂ってくる香りはチューブのわさびでは感じられないもの。指にとって舐めてみると刺激のあとに独特の甘みが広がり、華やかで複雑な味わいといった印象。チーズにのせるというイチ推しの食べ方を試させてもらうと、チーズのまろやかさと相まって、甘みがより強調され、不思議なマリアージュを体験できた。
自分で打ったそばを実食!そば打ち体験

自然と触れ合うキャンプやクラフト体験もできる「東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村」では、自然食体験としてそば打ち体験を事前予約制(1人あたり500円)で行っている。

「江戸前三大そば」といわれるように、東京の歴史とそばは切っても切り離せないもの。さらに、薬味として欠かせないわさびとも縁が深い。

なかなかまとまらないそば粉に苦戦しながらも、菊練りやそば打ちをして、きれいに伸ばすことができたら、麺状になるように包丁で切っていく。これもまた、均一に切っていくのが難しいものの、太さのばらつきはご愛嬌。自分で打ったそばはおいしさもひとしおだ。

打ち立ての香り高いそばと、おろしたてのわさびならではの独特の甘みと刺激の相乗効果を感じられる贅沢な食事を体験できた。
ジビエの鹿肉と地物野菜で山の恵みを堪能

もうひとつ、奥多摩ならではの食として紹介したいのが、ジビエ。そこで、しばらく山を登ったところに現れる「古民家 食事処ちわき」を訪れた。春から夏には鮎、秋にはきのこや栗など、季節に合わせて地物を使った料理を提供している。


「鹿の焼き肉」は、害獣として駆除される鹿を食すため猟の状況次第での提供になるものの、奥多摩の味としてチェックしておきたい。また、天ぷらは地物野菜などをあげたもの。「見た目でニンジンだと思ったけれど、甘くてとろっとしていて違うみたい…」と、編集部員が驚いていたのは、なんと柿の天ぷら!そんな創意工夫が詰まった食事をいただくことができる。
店主の西村直美さんに奥多摩食材の魅力を伺うと「収穫してすぐ調理して出せる、新鮮さが一番。例えばわさびの葉も新鮮だからこそいい香りのまま使うことができるし、今は数が少なくなっちゃったけど、山菜も採れたてがやっぱりおいしいですよ」と答えてくれた。


■古民家 食事処ちわき
住所:東京都西多摩郡奥多摩町大丹波618-1
時間:11時~17時
休み:第2火曜・水曜日、1月、2月
電話:0428-85-1735
駐車場:10台
アクセス:【電車】JR青梅線「川井」駅から西東京バス「小中茶屋」下車徒歩1分、「上日向」下車徒歩10分【車】圏央道日の出ICから40分
http://okutama-chiwaki.com/
江戸東京野菜の収穫&クラフトジン蒸留所見学
2月には、東京のブランド野菜・江戸東京野菜を軸としたモデルツアーが開催された。江戸東京野菜というブランドを知らなくても、練馬ダイコンや谷中ショウガの名前を聞いたことがある人は多いだろう。実はこれらも江戸東京野菜の仲間。東京の各地で、全53種類のブランド野菜が生産されているという。

その中でも、春まで旬を楽しめるごせき晩生小松菜の収穫を体験し、調理&試食!さらに、今流行の兆しをみせるクラフトジンの蒸留所も見学させてもらった。
旬の江戸東京野菜・ごせき晩生小松菜を収穫!
練馬区の平和台駅から歩いて10分ほど。駅徒歩圏内に広い農地があることに驚きながら「ファーム渡戸」に到着すると、ごせき晩生小松菜生産者の渡戸秀行さんが笑顔で出迎えてくれた。

渡戸さんの話によると、平成6年に行われた都市計画に組み込まれて減ってしまった東京の農地の中でも、練馬区には180ヘクタールほどが残っており、これは23区内でトップ3に入るほどの広さなのだとか。

「生産緑地制度ができた際に、あえて農業を選んだというのは、農業に対してすごくこだわりがある人や愛着がある人なんです」(渡戸さん)

畑に広がるごせき晩生小松菜はハリのある葉が大きく広がり、生き生きとした姿を見せている。


そして、渡戸さんの指導を受けながら、立派に育ったごせき晩生小松菜を収穫しようとするものの…。「力を入れると折れそう…。だけど、ひっこ抜くときには意外と力が必要なので、ちょっと怖いですね」と編集部員。それでも折ることなく収穫ができてひと安心の笑顔を見せた。


「東京リバーサイド蒸溜所」見学&試飲
農園をあとにして向かったのは、蔵前にある「東京リバーサイド蒸溜所」。リノベーションで生まれ変わった工場や倉庫を活用した新進気鋭の店舗も立ち並ぶ蔵前エリアは、ゆっくりと時間が流れるような下町情緒と、垢抜けたモダンな気分を同時に感じられることで人気を集めているスポットだ。

この「東京リバーサイド蒸溜所」も印刷会社が入っていたビルを改装した建物で、1階は蒸溜所とクラフトジンがテイクアウトできるスタンド、2階はダイニングバー「Stage」として営業し、さらに屋上でハーブの栽培も行っている。

エシカルを掲げる「東京リバーサイド蒸溜所」では、日本酒などを生産したあとの廃棄予定の酒粕から蒸留した酒粕焼酎や、コロナ禍のあおりを受けて廃棄せざるを得なくなったビールをジンのスピリッツとして使っている。さらに、ボタニカル(ハーブなど香り付けの原料)にも、コーヒー粕やカカオハスク(カカオ豆の種皮)など捨てられてしまうことの多い素材を取り入れるなど、サステナブルな取り組みに注目が集まっている。

「全国各地のものを取り入れることができるのが、東京を拠点にしている強みですね。また、職人の街でもある蔵前に蒸溜所をおくことができたということにも意味があったと思います」とバーテンダー兼蒸留家の宮島悠さん。

そんな「東京リバーサイド蒸溜所」で生産された3種のジンを飲み比べさせてもらった。中でも、東急歌舞伎町タワーとのコラボレーションで生まれた「Ne10」は、歌舞伎町にちなんでかつて新宿で栽培が盛んだった江戸東京野菜の“内藤とうがらし”をボタニカルに使用。その味が気になる!

とうがらしを使っているといっても、蒸留して造るジンに辛みはない。「でも、カプサイシンを感じるような不思議な香りが鼻を抜けますね。料理にも使われる素材だけに、食事との相性が良さそうな気がします」(編集部員)
人気ビストロのシェフに習って収穫した野菜を調理!
ツアーの最後は、収穫したごせき晩生小松菜を持って、人気ビストロ「イレール人形町」のオーナーシェフ・島田哲也さんの元へ。料理体験では、島田さんが考案した「ごせき晩生小松菜のクリームスープ 大葉の香り」にトライする!

「ポタージュスープは作るのが難しそう、というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、案外簡単に作れます。大葉の風味をつけたのが、このレシピのポイントです」(島田さん)
ベーコンを焦がさないようにじっくり炒めたり、小松菜がくたっとするまで火を入れたり、「そろそろいいのかなぁ…」とタイミングを見計らう編集部員の様子を見て、声をかけてくれる島田シェフ。サポートもあって、失敗もなくポタージュスープが完成!

スープを作っている間にシェフが用意してくれた、江戸東京野菜の馬込人参と品川カブを蒸し煮にした「季節の野菜のブレゼ トウキョウワサビクリームソース添え」、「ごせき晩生小松菜とベーコンのソテー」、そして「Ne10」のソーダ割と、江戸東京野菜を堪能できるラインナップがテーブルに並んだ。
まずはスープを口にしてみると…「小松菜の味がとっても濃い!普段スーパーで買う小松菜と違うというのが、ひと口でわかりますね!」と編集部員は驚きの声をあげる。「こんなに入れていいの?」と思いながらたっぷりと使った大葉も、香りが強すぎることなく小松菜の風味とマッチして、さわやかさがあとをひく。「タイミングの見極めは必要だけど、手順自体は難しくないから、家でもこのスープを作ってみたい!」と編集部員は満足げな表情を浮かべていた。

「ごせき晩生小松菜とベーコンのソテー」は、シャキシャキとした小松菜の食感を活かした一品。うまみの強いベーコンに負けない、しっかりとした味わいの小松菜が存在感を発揮し、主役を務めているのが印象的だ。
<シェフ考案!「ごせき晩生小松菜のクリームスープ 大葉の香り」のレシピ>
編集部員も挑戦した、「ごせき晩生小松菜のクリームスープ 大葉の香り」のレシピを紹介する。

【材料】(4〜6人前)
小松菜200グラム、ジャガイモ60グラム、玉ねぎ1/4個、ベーコン30グラム、水150グラム、生クリーム100グラム、牛乳50グラム、大葉10枚
【作り方】
1.ジャガイモの皮をむいて5ミリ位のスライスにして、電子レンジで火を入れる
2.1センチに切ったベーコンとスライスした玉ねぎをオイルで色付けないようにソテーする

3.よく洗って水気を切り、3センチ程に切った小松菜を加えて軽くあえる
4.1のジャガイモと水を加え、小松菜が柔らかくなるまで煮る

5.生クリームと牛乳を加え、煮立たせる

6.ミキサーに大葉と一緒に入れて攪拌(かくはん)する
7.鍋に戻して塩(分量外)とコショウ(分量外)で味を整えて完成!
「ベーコンを加えることで、コクが増します。また、生クリームなしで牛乳だけで作ってもおいしいですよ」と島田さんが教えてくれた。
日本の食文化を体験するなら、たい焼きもおすすめ!
文化に触れる手作り体験をしてみたいなら、自分で焼き上げるたい焼き作りにトライしてみるのもおすすめ。浅草にある「浅草たい焼き工房 求楽(ぐらく)」では、完全予約制でたい焼き体験(R)をすることができる。


体験は、材料を量り、生地を作るところからスタート。作った生地を焼き型に流し入れ、あんこ具材をのせていく。

定番のあんこのほかに、クリームやキーマカレーなどの変わり種たい焼きも作ることができる。また、ルールを守れば、具材やトッピングの持ち込みもOKなので、自分だけのオリジナルたい焼きを作ってみるのもいいかも。

業務用のたい焼き型でたい焼きを焼くことができる機会はなかなかないので、ワクワクすること間違いなし。たい焼きの歴史を教えてもらいながら、ぜひ焼きたてのおいしさを味わってみて!
■浅草たい焼き工房 求楽(ぐらく)
住所:東京都台東区西浅草2-3-2
時間:テイクアウト・お座敷カフェ11時〜18時、たい焼き体験(R)※事前予約制9時〜22時
休み:不定休
電話:070-4037-0101
駐車場:なし
アクセス:【電車】東京メトロ銀座線「田原町」駅からから徒歩4分、つくばエクスプレス「浅草」駅から徒歩4分
https://guraku.jp/
体験と試食を通して、東京の食文化と魅力について知ることができたモデルツアー。さまざまな知識を得て、これからはスーパーに並ぶ野菜を見る目も変わりそう!ツアーのために特別に実施された企画もあるけれど、実際に体験や食事ができるスポットも多数。ぜひ訪れて、東京の食を体感してみて。【ウォーカープラス/PR】
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