コーヒーで旅する日本/関西編|始まりは小さなスタンドから。進化を続ける「Coffee Labo frank…」が広げる、コーヒーショップの新提案

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

隠れ家的な雰囲気の「ニカイノフランク」はスタンディングのカウンターとテーブル席を併設


関西編の第77回は、神戸市中央区の「Coffee Labo frank…」。2010年代に、コーヒースタンドやロースターが相次いで開店した、栄町エリアのムーブメントを先駆けた一軒だ。創業当初は立飲みのカウンターのみのスタンドから始まり、移転を機にロースターとしてリニューアル。カフェから豆の販売、さらにコーヒー教室まで、コーヒーの楽しみが詰まった店は、界隈で厚い支持を得ている。若くして自店を開業した店主の北島さんは、バリスタ、ロースターとして神戸のコーヒーシーンを牽引。近年は、店の中だけに止まらず、地元のショップとのコラボで、嗜好品をジャンルレスに楽しむ、新たな提案にも力を入れている。

店主の北島さん


Profile|北島宏祐(きたじま・こうすけ)
1989年(平成元年)、鹿児島県生まれ。大学進学を機に神戸に移り、スターバックスでのアルバイトを通じて、スペシャルティコーヒーへの関心を深める。卒業後、スペシャルティ専門店での仕事を志向するなか、懇意のコーヒー店主の助言もあって独立開業を目指し、2013年に栄町に「Coffee Stand frank…」をオープン。約3年間の営業を経て、現在地のビル3階に移転。焙煎機を導入し、「Coffee Labo frank…」としてリニューアル。2021年には、2階をカフェ「ニカイノフランク」として増設。三宮のパティスリー・CONEとのコラボで「CONE no frank」を手掛けるなど、新たな展開を進めている。

栄町でいち早く開いたコーヒースタンド

店が入るビルは南京町のすぐ横の路地にあって、隠れ家的な雰囲気

神戸を代表する観光地のひとつ・南京町。国内外からお客が訪れ、屋台がずらりと並ぶチャイナタウンの程近く。小さな雑居ビルの階段を上ると、街の賑わいから一転、バンコを備えたシックなカフェが現れる。「イメージは、バールと喫茶店を合わせた雰囲気。アルコールや軽食もあるので、夜に来られる方も多いですね」と店主の北島さん。ドリップコーヒーやエスプレッソはもちろん、コーヒーカクテルにワインなどもそろう、使い勝手のよさもこの店の魅力のひとつだ。

学生時代、スペシャルティコーヒーの醍醐味に惹かれて以来、「まだ知られていないコーヒーのおいしさを、気軽に楽しむ場が日常の一部になれば」と、北島さんが弱冠26歳で始めた「Coffee Stand frank…」。創業時は、気軽なスタンドとしてスタートし、移転リニューアル、焙煎機の導入など、7年の間に変化を重ね、今ではカフェからロースターまで多彩な顔を持つコーヒーショップとして厚い支持を得ている。

移転前の「Coffee Stand frank…」。栄町界隈でコーヒースタンドの先駆け的存在だった


さかのぼれば学生時代、スターバックスでのアルバイトを通してスペシャルティコーヒーへの関心を深めたのが、北島さんの原点。ただ当時の関西には、まだ専門店などほとんどなかった時代、進むべき道の選択肢は少なかった。「働きたい店が神戸にはなくて。最初は京都や東京に行くことも考えてました」という北島さん。その頃に通っていた神戸の人気店、エスプレッソバー+の店主・山根さんに、そんな相談を持ち掛けると、「それなら自分で店を始めてみては? 」との一言に背中を押され、思い切って独立開業へと舵を切った。

昼だけでなく、夜遅めの時間もコーヒーが楽しめるのがうれしい


2013年、最初に開店した「Coffee Stand frank…」があったのは南京町の南側、レトロなビルが立ち並ぶ栄町。今でこそ、Lima CoffeeやVOICE of COFFEEなど、コーヒーショップが集まるエリアとして知られる界隈だが、開店時は周りに雑貨店やアパレルショップがほとんどだった頃。エスプレッソをメインにしたコーヒースタンドは、界隈では珍しい存在だった。「栄町の店は途中で改装して、オールスタンディング形式の店にしました。ただ、コーヒーの立ち飲みスタイルはまだなじみがなく、座って飲めないというので、最初は受け入れられるのに時間かかりました」。それでも、神戸の名ロースター・樽珈屋のオリジナルブレンドを使い、シンプルに2種に絞ってわかりやすく提案。新たなコーヒーの魅力に親しむ入口となる場を目指し、徐々に支持を集めていった。

エスプレッソ600円。どっしりとしたボディと、余韻に広がる華やかな香味が印象的


移転を経て、ロースター・カフェ・スクールの三本柱に

3階の焙煎室の奥には、ヤマチーノの菓子工房を併設

日々、バリスタとしてカウンターに立ちながらも、実は当初からロースター志向を持っていたという北島さん。この間も、焙煎技術を習得するため、LANDMADEの上野さんの元に通い、シェアローストで指導を仰いでいた。「最初に豆を仕入れていた樽珈屋の大平さん、山根さん、上野さんは師匠的存在。この3人がいなかったら、今のように店はできてなかったですね」と振り返る。

栄町のスタンドは人気を博し、お客は増えていったが、徐々に店のスペースが手狭になり、やがて対応が難しくなってきたという。「それでも楽しかったのですが、よりコーヒーを専門にしたかったので」と、オープンなスタンドから一転、現在地のビルに移り、焙煎機を導入。2016年、店名も「Coffee Labo frank…」に改め、本格的にロースターへとシフトしていった。2021年には2階のフロアを増設し、「ニカイノフランク」としてカフェが独立。3階を「Coffee Labo frank…」として焙煎室兼豆の販売スペースとし、芦屋にトレーニングルーム「GEEK NA FRANK」を設け、コーヒー教室やセミナーを開催。ロースター・カフェ・スクールの三本柱を擁する現在の形ができ上がった。

定番のブレンド3種とシングルオリジン12種に加え、時季ごとに希少な豆も登場


移転後は、とりわけロースターとして提案の幅を広げ、今や豆のラインナップは20種近くに。カフェでも、以前はラテ系メニューの注文が多かったが、「豆の選択肢が多くなったことで、風味の違いを楽しむ人が増えた感覚はあります」と、現在はドリップコーヒーの注文率が上がっているという。豆の品ぞろえも徐々に浅煎りが主体となってきたが、創業時からエスプレッソに使ってきた深煎りの看板ブレンド・カカオの人気も健在。しっかり飲み応えのあるボディと芳しい香味で移転前からの根強いファンが多い。ドリップならまろやかなコク、エスプレッソなら重厚な香りの余韻、シェケラート(※1)なら滑らかな甘味の広がりと、異なるメニューを飲み比べてみるのも一興だ。

好みの豆が選べるドリップコーヒー650円~


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