全国約8万人の中から“令和のカリスマ店員”に選出!接客コンテストで頂点を取った販売員は時短勤務だった

東京ウォーカー(全国版)

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新宿のにぎやかな街角に佇む、ユナイテッドアローズ 新宿店のスタッフとして働く仲希望さんは、接客コンテスト『STAFF OF THE YEAR 2023』で、全国約8万人の頂点に立ち令和のカリスマ店員という栄光をつかんだ。そんな彼女の背景には、時短勤務という形で仕事と家庭を両立させながら、類稀なる接客スキルと深いファッションへの愛情で多くの人々を魅了してきた、多忙ながらも充実した日々がある。3人の子どもを持つ母として、仕事に情熱を注ぎながらも家族を大切にする仲さんの生き方は、多くの人にとって大きな刺激となるはずだ。今回は、そんな彼女の仕事への情熱、家族との絆、そして日々の挑戦について聞いてみた。

ユナイテッドアローズ 新宿店 仲希望さん【撮影=オオノマコト】


時短勤務でも成果を出し続ける 仲希望さんの効率的な働き方

ーーユナイテッドアローズでの勤務は何年目ですか?
【仲希望】今年で21年目になります。2024年6月で22年目を迎えますね。

ーー学生時代からファッション業界での仕事に興味はありましたか?
【仲希望】はい、そうですね。文化服装学院に入学した時点で、将来はお洋服の仕事に就くと思っていました。田舎出身で周りにファッション関連のお店も少なかったので、大きな夢でした。

ーー文化服装学院にはどんな志望動機で?
【仲希望】お洋服が好きだったからです。大学というと勉強する場所というイメージが強かったので、勉強よりも好きなことをしたいと思って選びました。

【写真】文化服装学院のスタイリスト科を卒業後、2003年に入社。今年で22年目を迎える【撮影=オオノマコト】


ーー最初に配属された店舗はどこでしたか?
【仲希望】最初に配属されたのは、現在は閉店してしまった大阪のビューティー&ユースの心斎橋店でした。その後、神戸元町店、京都店を経て東京の二子玉川店に転勤し、2019年から新宿店に所属しています。

ーー転勤も経験されて、その後東京で結婚されたんですね。
【仲希望】はい、東京に来てから結婚しました。

ーーお子さんは現在何歳ですか?
【仲希望】中学1年生と小学5年生、小学2年生です。

ーーお子さんたちが大きくなったら、また環境が変わってくるかもしれませんが、何か考えていることはありますか?
【仲希望】特別ないですね。これまでにも思いがけないハプニングがたくさんあったので何とかなるかなと思っています。子どもたちのことは、結局、本人次第だなって思っているので、そこについてはあまり心配していません。子どもたち自身の意志が大切だと感じているんです。

ーー時短勤務になってから、働き方にどのような変化がありましたか?
【仲希望】出産を機に時短勤務にシフトしたのですが、かなり変わりましたね。以前は時間を気にせずに仕事ができたので、ひとつのタスクを最後まで責任を持って完遂できたんです。ほかのスタッフに対しても「もっとこうしたほうがいいんじゃないか?」と、アドバイスがしやすかったのですが、時短勤務になってからは「こうしたほうがいい」と提案したあとの、最終的な確認が難しくなりました。たとえば、休憩のシフトを組む際にも、自分がいない間に状況が変わってしまうことがあり、結果として休憩がうまく回らないことも。そういった経験から、時短勤務になってからは、もっとスタッフを見守る立場になったと感じています。

3人のお子さんを持つママでもある仲さん。現在は時短勤務の制度を利用し、限られた時間の中で最大限に活動している【撮影=オオノマコト】


ーー時短勤務になる前、フルタイムで働かれていた時は、店舗での役割は店長のような立場だったんですか?
【仲希望】いえ、売り場でリーダーやブランドリーダーを務めていましたが、店長が不在のときには、店舗の責任者を務めることもありました。

ーーなるほど、では責任ある立場にいたわけですね。つまり、頼りにされる存在だったと。
【仲希望】自分ではそこまで強く意識していませんでしたが、やはり「しっかりと責任を持って行動しなければ」とは思っていました。私が一番経験がありましたし。

ーー時短勤務に切り替わって、何か特別な工夫をされましたか?
【仲希望】信頼を得るために、自分の仕事は自分できちんとこなすように心がけました。子どものことで、急に休まなければならないこともあるので、その日の仕事はその日に終わらせるようにしました。「今日中に終わらせたい!」と強く思うようになりましたね。以前は、「まだ締め切り前だから、明日でいいや」と、自分のスケジュールで調整していました。でも、時短勤務になってからは、締め切りに余裕があっても前に前にと前倒しで取り組むようになりました。やっぱり、限られた時間でしか働けないので、その分ほかの方に迷惑をかけないように努力しました。

何事も前倒しで取り組むことが、時短勤務とうまく向き合うコツという【撮影=オオノマコト】


ーー同じような働き方をしている人は周りにいましたか?
【仲希望】13年前くらいですから、店舗にひとりいるかいないか程度だったんですよね。ですから、周りに時短勤務の方がほとんどおらず、相談することはできなかったです。

ーーそういうとき、どう乗り越えましたか?
【仲希望】ずっと自分で抱え込んでいましたね。自分自身で解決するしかなかったです。

ーー考え方を変えて働くとなると、ストレスが溜まってきますよね。そういうときは、どうやって発散していました?
【仲希望】発散できなくって、体調を1回崩してしまったんです。「もっとできるはずなのに」という焦りと、やりきれない感じでストレスが溜ってしまったんですね。子どもが生まれてから周りの方に「無理しなくていいよ」とか、「家庭を優先すればいいよ」とか、「家庭を7で仕事3の感じですれば大丈夫」っていうようなことを、すごく言っていただいたんです。でも、それは人によるんだなって思ったんですよね。働き方としてすごくすてきだと思いますが、私は“そのバランスじゃなかったんだな”って気づいて。最初は「家庭を優先しないと」って、すごく思っていましたが、家庭と仕事を10:10のバランスで取り組むようにしました。もしかしたら家庭を少しおろそかにしてしまっているかもしれませんが、臨機応変に対応することを心がけています。

周囲からは、「家庭を優先に」と気遣われたが、家庭も仕事も、どちらも100%で向き合うことが性格的にピッタリだった【撮影=オオノマコト】


ーー時短勤務の制度は入社当時からありましたか?
【仲希望】制度自体はありましたが、実際に利用している方を見たことがなく、詳細はよくわかりませんでした。以前は結婚や出産を機に退職する方も多く、時短勤務を利用している方と働く機会はほとんどなかったんです。

ーー時短勤務の制度については、いつ詳細を知ったのでしょうか?
【仲希望】最初は、結婚や出産するときがくれば退職するのかなと思っていました。その後、入社4年目くらいで時短勤務の制度があることを知ったのですが、自分がどのように働きたいかまでは想像できていませんでした。でもその後、実際に時短勤務されている方に出会い、思いっきり働いている姿を見て、「すごくかっこいいな」って感じたんです。もともとすごく仕事ができる方ではあったんですけど、その方のおかげで時短勤務も働き方のひとつと認識できました。

最初は、時短勤務を活用していた方の姿を見て、この働き方もかっこいいと思えたそう【撮影=オオノマコト】


ーー辞めようと考えたことはなかったんですか?
【仲希望】子どもができたことが理由で辞めようっていうのはなかったです。ただ仕事でうまくいかないことがあったときは、しょっちゅう辞めたいと思いますよ。割と毎日(笑)。でも、やっぱり毎日楽しいんですよね。思いどおりにいかないこともありますけど。それに性格上、1回始めたことは止められないっていうのもあって。よっぽどのことがない限り、辞めないんだろうなとは思っています。部活とかも嫌だなって思いながら、結局引退するまでやってるタイプだったので。

「実は、何度も辞めたいと思いました」と明かしてくれた仲さん。仕事の楽しさを知っていたから、思いとどまったという【撮影=オオノマコト】


ーー芯が強いタイプなんですね。
【仲希望】普段はブレブレですが、一度、こうと決めたことに関してはなかなか譲れない性格かもしれないです。

仲希望さんが語る、短時間勤務での成果と挑戦

ーーコロナ禍を機に、店頭販売と同時にオンラインストアでの販売も強化されたそうですね。店頭での対面接客以外の方法があると気づいたあと、時短勤務に対する考え方に変化はありましたか?
【仲希望】「この時間に上がらせてくれてありがとう」と、早い時間に上がれることに感謝はしています。まだ負い目を感じることはありますが、オンラインストアでは、365日24時間ずっと販売が続いていて、自分のスタイリングを見て何時に商品が売れたということもわかるようになっています。ですから、自分の退勤後の夜中に売れたりするのを目にすると、負い目も少しずつ軽くなってきたように思います。

オンラインストアでは、24時間結果が残せるので、勤務時間外でも努力が実を結ぶようになった。おかげで「時短勤務のプレッシャーから少し解放されましたね」と語る仲さん【撮影=オオノマコト】


【仲希望】それよりも、短時間勤務の方たちが、以前の私と同じような「申し訳ない」という感情で働いてほしくないと強く思っています。その時間内で最高のパフォーマンスを発揮できればそれでいいんです。短時間勤務でも、しっかりと会社に貢献していることをみんなに感じてほしいと思っています。

ーー短時間勤務でもしっかり貢献していることをみんなに伝えるために、具体的にどんなことをしていますか?直接話すこともありますか?
【仲希望】直接口に出して伝えることは少ないですね。自分はあまり話すのが得意ではなく、後輩指導もあまり得意ではありません。だから、自分の行動で示すしかないと思っています。実績をしっかり出して、新しい取り組みを続けていくことで、背中を見せることが大切だと感じています。

ーーそれはかっこいいですね。
【仲希望】いや、そんなことないですよ(笑)。でも、それが最近見つけた目標です。

ーーお客様からの感謝の言葉や印象に残ったエピソードはありますか?
【仲希望】お客様から「いつも服を選んでくれてありがとう」といった感謝の言葉をいただくことはありますが、私自身はそれを素直に受け取ることが難しいですね。ありがたいと思う反面、「そんなことないです」と思ってしまいます。お客様のニーズに対しては一生懸命対応したいと思っていますが、ほめられたことをそのまま受け入れるのは難しいです。

「お客様の望むことや目指すスタイルには全力で応えたい」と、日々店頭に立つ仲さん。その接客は、全国8万人のショップスタッフの頂点に立つだけあり、お客さんからも「ぴったりの服が見つかった」と、好評を得ている【撮影=オオノマコト】


ーーほめられたことを素直に受け入れることが難しいのは、どうしてですか?
【仲希望】自分では「そんなことはない」と感じてしまうため、ほめ言葉を直接受け止めるのが難しい性格なのだと思います。でも、それに対して感謝の気持ちはあります。そこで終わりにせずに、もっと自分を高めようとする姿勢を大切にしています。そして、お客様の望むことや目指すスタイルには全力で応えたいと思っています。

ーー最後に、時短勤務を活かして新たに挑戦したいことがあれば教えてください。
【仲希望】時短勤務で新しく始めたいことは特にないのですが、去年の自分を超えることを目指しています。それが新しい挑戦かもしれませんね。そのためには、今までと同じ方法では難しいでしょうから、新しいアプローチが必要かなと思っています。具体的な例としては、SNSの発信もそのひとつです。よりお客様に伝わるような、お客様目線での発信を心がけ、活動を進めていきたいと考えています。

ーーありがとうございました。

時短勤務を活用して、仕事と家庭のバランスを見事に保ちながら自らのキャリアを積極的に形成している姿は、働く母親たちにとっての希望であり、多くの人々にとってのモチベーションになるだろう。「限られた時間の中で最大限の努力をする」という価値観は、多くの働く人々にとって大切な教訓にもなる。仲さんの今後の活躍にエールを送りたい。

取材・文=北村康行、撮影=オオノマコト

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