「いい芝居になる」 マキノノゾミの予感にハズレなし!
関西ウォーカー

演劇ライターのはーこがお届けする最新ステージ情報などをお届けするWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.47!今回は、劇作家・演出家のマキノノゾミさんのインタビューをお届けします。
劇作家・演出家のマキノノゾミが率いた劇団M.O.P.が解散して7年になる。小劇場の時代から、ずっと「いいものを作りたい」と演劇に臨んできたマキノ。今年は青年座に新作「わが兄の弟 贋作アントン・チェーホフ傳」を書き下ろし、音楽劇『大悪名 The badboys Last Stand!』(東京・大阪・神奈川・千葉・栃木他)の作・演出、『ローマの休日』の脚本・演出、『魔都夜曲』の脚本と、4本続けて書いた舞台の上演が相次いだ。これからは「自分の中で乗らないものはやりたくない。書くにしても演出するにしても、1本1本を大事にしたい。そのために時間を使いたいと思うんです」と語る。そして今回、今年5本目の舞台『オーファンズ』で上演台本・演出を手がける。「自分の好きな本を演出するのが一番好き」と言う彼が、自身も楽しみにしている作品。少人数の男の濃密な芝居をマキノ演出で。これはもう、保証付きの舞台だ。

【物語】
フィラデルフィアの廃屋で暮らす孤児の兄弟。恐喝や泥棒で稼ぐ凶暴な兄・トリートと部屋で待ち続ける臆病な弟・フィリップ。兄は弟を外に出さず支配し、奇妙なバランスで関係を保っている。そこに、かつて孤児だった中年のやくざ者・ハロルドが迷い込み、3人は疑似家族のような生活を始めて…。
1983年にロサンゼルスで初演し、87年に映画化。日本では86年に劇団四季が初演して以降、2000年の椎名桔平、伊藤隆史、根津甚八(演出・栗田芳宏)や、昨年の柳下 大、平埜生成、高橋和也(演出・宮田慶子)らのメンバーで上演された。この名作戯曲をマキノノゾミがどう演出するのか。間もなく上演台本を完成させ、9月から稽古開始という彼に話を聞いた。
【テーマについて】
テーマはとても普遍的だと思います。ひと言でいえば「人間は他者と関わらないと生きていけないし、成熟できない」という話ですね。
最初、兄弟の関係はすごく閉じているのですが、それがハロルドという他者と出会うことによって開かざるを得なくなっていく。人間がこの世の中で生きていくためには、他者と出会って、まず社会と関わることを学ばなきゃいけない。そのことを、いわば原始的な形でシンプルに描いている。
人は1人では生きていけない。他者と関わり合って互いに認め合うことを学ばないと、成熟できないんだという普遍的なテーマ。だから観客の共感を得て、現在まで上演され続けているんでしょうね。
【作品の魅力について】
台本を読むより、観た方がどんな話かよくわかる芝居です。すごくストレートに入ってくる。ハロルドが登場することで、兄弟の関係性が変わって行く。観ていると、観客も同時にそのヒリヒリする感覚を共有できる。そこがおもしろい芝居なんだと思います。
俳優の個性と、その組み合わせで、いろんな色の違いもおもしろく出る。そういう意味で、バランスのいい戯曲で、隠れた名作と言えるでしょうね。

【演出のポイント】
まずは書かれてある通りに「やってみる」ことですね。この作品の登場人物たちは教養人たちではなく、むしろ体ごと会話している人たちの話なので、まずは体を通すことが重要だと考えています。肩を抱いたり触れあったりという行為が多く、しかも大事なツールになっているので、実際に稽古場で抱き合ってみたらわかる、みたいなことも多々あるだろうと。この芝居は、身体を通さないと本当の根っこのところがわからない。3人の関係が生々しく見えるように、実際に俳優の体の中で心の中で生々しく起こるものを大事にしたいなと思っています。
【上演への想い】
じっくり向き合える作品なので、僕も楽しみにしています。最低限のクオリティは保証します(笑)。別に変わったことをするわけではないけど、今回僕は俳優たちと早くこの作品を体験したいという思いが強いんです。こういう想いでやる以上は、随分いいものになるだろうと思いますよ。予感としてはね(笑)。
【関西ウォーカー編集部/演劇ライター・はーこ】
演劇ライター・はーこ
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