あの都市伝説「コトリバコ」が現世に蘇る。ゲームクリエイター・まだら牛×異才・手代木正太郎の最凶エンターテインメント

東京ウォーカー(全国版)

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 「コトリバコ」という言葉をご存知だろうか。2000年代、大手ネット掲示板「2ちゃんねる」(当時)に立ったあるスレッドが一部の人々の注目を集めた。その内容はいわゆるオカルト系のエピソードで、ここで語られていたのが「コトリバコ」にまつわる顛末だった。

スレッドはある人物の体験談として書き込まれており、さらにはスレッドを見た別のユーザーと思われる人々から「私もコトリバコを見たことがある」といった主旨のレスが付いたりもした。怪談のような、あるいは都市伝説のような、もしかしたら本当にあった出来事かも、と思わせられる記述もあり、「コトリバコ」という言葉は次第に多くの人の目に触れることになった。

都市伝説のように、時が経つにつれて「コトリバコ」のエピソードは徐々に変化していく。ある部分はより具体的な情報が付け足されたり、また別の部分はいくつかのバリエーションが生まれたりもした。

「コトリバコ」のエピソードには諸説あるが、ネット上に残る痕跡を総合すると概ね以下のような出来事だとされている。

ある大学生が寄せ木細工のような小箱を見つけ、友人たちの前に持ってくる。その場に居合わせた神社の息子は、真剣な面持ちで「これは呪いの箱、コトリバコだ」と告げる。神社の息子は嘔吐し、離れて暮らす父親に泣きながら電話をかけて「目の前にコトリバコがある。どうすればいいか」と助けを求める。父親の手引きのもと、神社の息子が不慣れながらもお祓いの儀式をやり遂げて事なきを得る。

出来事だけを並べるとオーソドックスな怪談話のようにも見えるが、「コトリバコ」のエピソードには詳細な記述が山のように詰め込まれていて、圧倒的なディテールが読む者に強烈な印象を残す。その一部だけでもいくつか紹介してみよう。

●「コトリバコ」は山陰地方のある集落が発祥で、1860年代後半から作られるようになった。●その地で実際にあった騒乱から逃げ延びた男が集落に迷い込み「命を助けてくれたら、強力な武器となり得るコトリバコの作り方を教える」と取引を持ちかけた。●からくり仕掛けの木箱を用意し、雌の獣の血液で箱を満たし、その中に死んだ子どもの身体の一部分を入れる、というのがコトリバコの作り方だった。●箱に入れる子どもの部位は、へその緒や人差し指の先など、子どもの年齢によって様々だった。●子どもの人数によって箱ごとに「イッポウ」「ニホウ」「サンポウ」と呼ばれ、7人の子どもの部位を使った「ハッカイ」は最も強力だった。●コトリバコがもたらす呪いは女性と子どもだけに限られており、ターゲットとなった一族の子孫は根絶やしとなった。●十数年にわたって十数個のコトリバコが作られたが、未使用のまま保管され続けたコトリバコもあった。●コトリバコの管理方法には厳格なルールがあり、暗く湿った場所に保管すること、約束の年数が過ぎるまで複数の家が持ち回りで管理すること、最終的には事情を知る神社に処理を依頼すること、などの厳しい取り決めがあった。


前置きが長くなったが、このたび発売となった『新約・コトリバコ』は、「コトリバコ」にまつわる都市伝説をまったく新しい解釈で紡ぎ上げたエンターテインメント作品だ。

小説「新約・コトリバコ」


本書の舞台となるのは、二〇××年の日本。日本近代以降最悪の呪物と悪名高いコトリバコをテロリストたちが強奪。その奪還のため、特務部隊「異形厄災霊査課(イヤサカ)」の隊員たちが、山陰地方・島根県沖の洋上に浮かぶ「八八式研究所」へ潜入することになる。しかし、この事件の奥底には、想像を絶する怪異的陰謀が横たわっていた――。

原案のまだら牛さんは、TRPG(Table talk Role-Playing Game)の大ヒットシナリオ「狂気山脈」シリーズの作者でもある人気クリエーター。TRPG版のシナリオ「新約・コトリバコ」も今回のノベライズ版に先駆けてリリースされており、まだら牛さんと作家の手代木正太郎さんがタッグを組んだ本書では、TRPG版をさらに濃く、さらに密に、掘り下げている。

ノベライズ版の描写の濃密さは圧倒的で、ベースとなった都市伝説が持っている圧倒的ディテールを彷彿とさせる。各キャラクターのバックグラウンドや心情などを丁寧かつ詳細に描写しているのはもちろん、TRPG版には登場しなかったノベライズ版の新キャラクターも加わり、テロリスト VS 特務部隊の戦いが展開していく。

また、もともとの「コトリバコ」の都市伝説は、日本的なムラ社会の風習やそこに漂う湿り気のある情緒を色濃く映し出した内容。だが、「新約・コトリバコ」は舞台設定を大きく変えてアクションシーンを盛り込むなど、大胆な新解釈によってエンターテインメント性を大きく引き上げており、オリジナルの都市伝説とはひと味違う手触りの作品に仕上がっている。

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