【連載/ウワサの映画 Vol.2】猿に味方したけれど…、終わってみれば「人間だもの」

東海ウォーカー

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1968年に製作されたSF映画の金字塔「猿の惑星」。約40年後の2011年に始動した”どうして人間は猿に支配されるハメになったのか”を明かす新シリーズも、1作目「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、2作目「猿の惑星:新世紀(ライジング)」を経て、ついに最終章「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」でオリジナル版へのリンクが完了。シリーズを通して社会問題を反映した奥の深さは、ほかのSF映画とは一線を画してきました。新シリーズでは猿を被験者にした新薬開発を悲劇の発端に設定、科学の危うさという現代のリアリティを織り込んだ、”今”リブートする意義があった作品と言えます。

猿は人間に危害を加えませんが、人間が執拗に攻撃してくるので猿も応戦せざるをえません©2017 Twentieth Century Fox Film.


そんな不穏な世界観にあおられて、「人間やめたくなるわぁ」ってことで猿側に加勢している人も多いことと思います(勝手な想像です)。社会のしがらみに疲れちゃった人とか、正義感が強い人とか…、心がねじれ気味の私もその一人。ジェームズ・フランコLOVEからのシーザーLOVEは、”最後は猿の圧勝でスッキリするんだろうな~”ってな不謹慎な期待にまで発展。が、そんな心境に変化が…。

【写真を見る】西部劇や日本の時代劇も研究した監督。大自然と融合した荘厳な映像世界は見もの©2017 Twentieth Century Fox Film.


前作で心を病み始めた猿界のカリスマ・シーザーが、復讐心に取りつかれ、ダークサイドに足を突っ込んじゃう本作。前作から2年後、猿たちを賢くしたウィルスが人間には病原菌となり、人類は激減し退化も始まっちゃいます。猿と人類の対立は激化、両者とも最重要課題は”種の存続”。そんな中、猿の抹殺に執念を燃やす人間の”大佐”がシーザーの妻子を殺し、両種の共存を願ってきたシーザーはブチギレ。ご乱心のまま群れと離れて復讐の旅に飛び出します。道中で出会う口のきけない人間の少女・ノバはオリジナル版の女性と同一キャラで、彼女の無垢さが、荒れるシーザーの(そして観る者の)中の”良きもの”を刺激し続けるのです。その間に仲間が全員捕まり、オリジナルの逆転版さながら、人間の奴隷となっている惨状を見たシーザーは、一転、種族を守る猛烈な使命感に震え…。

オリジナル版との直接のリンクとなる重要な少女・ノバ©2017 Twentieth Century Fox Film.


目まぐるしい感情に襲われるシーザーの葛藤が、もう痛々しいのなんの。シーザー役のアンディ・サーキス(「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラム役で有名)が、モーション・キャプチャーながらオスカー級の熱演で泣かせます。その怒りと憂いが極まったしかめっ面を見てたら、”ヒューマニティ”(=知能を得た者が持つ複雑怪奇な感情や思考)への愛しさが揺り起されたわけです。退化していく人間の切ない姿も、妙に愛しい。

極端に嫌~な人間”大佐”を振り切って演じるウディ・ハレルソン©2017 Twentieth Century Fox Film.


シーザーびいきの本質は、無辜な動物への同情を超えた、彼の宿すヒューマニティへの共感でした。人類破滅のディストピアを夢想してしまったのも、ノバのような”まっさらさ”への憧れからくるリセット願望なのでした。

シーザーや大佐のように観客を自身の闇と対峙させ、オリジナルからの核心テーマに立ち返らせる最終章。心の闘いが導く、戦争での決着よりも深遠な神話的ラストに驚きましょう。新キャラ、バッド・エイプのシュールな笑いも、ある意味サプライズ!【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!

おおまえ

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