蒼井優「『最低』というのが一番の褒め言葉」 大阪で「彼女がその名を知らない鳥たち」舞台挨拶
関西ウォーカー
20万部を超える沼田まほかるのベストセラー・ミステリー小説「彼女がその名を知らない鳥たち」を同名タイトルで映画化、10月28日(土)より公開される。恋愛に依存せずには生きられない嫌な女・十和子(蒼井優)は15歳年上の陣治(阿部サダヲ)と暮らしながらも、8年前に分かれた黒崎(竹野内豊)が忘れられずにいた。そんな中ひょんなことで出会った妻子持ちの水島(松坂桃李)との不倫に溺れる。ある日、刑事から黒崎が失踪していることを告げられ、それに陣治が関わっているのではないかと疑い始め……というストーリー。
9月30日(土)大阪・梅田のブルク7にて舞台挨拶付上映会が行われ、上映後に主演の蒼井優、阿部サダヲ、メガホンを取った白石和彌監督が登壇した。
蒼井は「今回初めてご覧になった方の前でお話させていただけるということで、すごく楽しみにして来ました」と笑顔で挨拶。阿部は本作のプロモーション用にと、役名の陣治にちなんで「ジンジィ-」というブランドを作り、オーダーメイドのスーツで登壇。司会者から「不潔で下品な男・陣治を演じた」と紹介され、「今日はちょっと綺麗にしてきました」と第一声。「観終わった後の『何だろうこの気持ち』という感じではないですか、今。なんかちょっとゾワゾワしますよね」と作品の独特の世界観について触れた。白石監督は「去年の10月に大阪で撮影をしていました。大阪のみなさんは『あっ、ここ知ってる!』というところもあったかと思います。ようやく1年経って、みなさんに観てもらえるのが嬉しいです」と述べた。
完成した作品を観て蒼井は「自分が出ているとか関係なく、すごく好きな映画なんです。いろんな人に観てほしいなって思うんですけど」と前置きし、「薦める時って、いいところを言わなきゃいけないじゃないですか、でもこの映画って、ラストしかいいところがない……でも、ラストって絶対言えないから、すごく難しくて」と率直な感想を述べた。阿部は、ほとんどが蒼井とのシーンで、撮影中には松坂、竹野内とは会わなかったと話し、「映画を観た時に、『どうしようもない奴らだな』と思って…本当に僕は松坂桃李が好きじゃないです」と爆弾発言し、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。白石監督は、「『究極の愛』というキャッチコピーを出してるが、これは陣治の無償の愛の話。観終わったらいろんな人と話したくなると思う」と述べ、「是非10月28日と29日のできれば最初の土・日にお友達を誘ってもう一回観ていただければ」と早くも具体的に宣伝した。
全編大阪でロケを行い、関西弁での演技に臨んだ蒼井と阿部は大変苦労した模様。阿部は「聞き慣れてはいるんですけど、自分でしゃべると合っているかわからなくて」と不安な様子。観客から「大丈夫だった」との声が上がると、「本当に嬉しいですね。ずっと方言指導の方がつきっきりだったので。俺あいつも嫌いになっちゃったな」と松坂以外にも嫌いな人がいたと発言し、再び観客の笑いを誘った。
関西の印象について白石監督は、人と人との距離が近いと感じたと話し、「その分関西弁だと僕らのように標準語をしゃべっている人よりも、本音で語り合っているんじゃないかなという印象を持った」と言及した。
「共感度0%、不快度100%」というキャッチコピーの本作。役に対する共感度について蒼井は、最初は0%だったと言うが、演じていく内に面倒くさい女ではあるも、嫌な女というよりは、単純な女なんだと感じたと述べ、「0っちゃ0だし、100っちゃ100ですね。でも、共感できるって言うと、人として疑われると思うんですけど」と笑顔を見せた。阿部は「食べ方も汚いし、差し歯も治せばいいし…直してほしいところいっぱいありますよね」と不快な部分について述べた上で、「でも、そういう役だからこそ楽しめたというのはあります」と陣治を演じられたことについてまんざらでもなさそうな様子。
今までに無いような役の松坂桃李、竹野内豊との共演について蒼井は、「お二人とも始めてだったんですけど、本当に最低で…。こんな最低な役をこんなに最低なままできるって本当にすごいことなんですよね。この映画で役者さんに『最低』というのが一番の褒め言葉だと思う」と述べた。
続いて、キャッチコピーにちなんで、会場の共感度を測るというコーナーが設けられた。観客には入場時に、表に作品のイメージキャラクター「かの鳥」、裏に空が描かれた旗が配られ、登壇者3名からの質問に、Yesであれば「かの鳥」の面を、Noであれば空の面を向けるというルール。かの鳥を数えるために、特別ゲストとして、野鳥観測が趣味という方が登場し、「嘘くさいですねー」と阿部が一言。再び客席から笑いが起こった。
蒼井は「あんな水島でもいいと思う人」と質問。蒼井自身はと言うと「いい訳がないと思います」と述べ、男性のYesが多いことに対して、「結構うらやましいというか、憧れを持つ男性いるみたいです」と話した。23%という結果が出て、「朝ドラの視聴率くらいですね」と冷静に分析した。白石監督からは「『共感度0%』というキャッチコピーだが、この映画に非常に共感したという方」という質問が投げられ、93%という結果が出た。それを受け、「今からポスター作り直そうかな」という本音とも取れる感想を述べた。
その後、いくつかの共感度を測り、いよいよ最後の挨拶に。
白石監督は「ゲスだとか、クズだとか、最低な人たちだとかが前面に出てきているんですけど、それは表層的なもので、その奥に人間の愛というか、そういうものを提示できたのかなと思う」と話し、「10月28日公開ですので、みなさん何卒応援宜しくお願いします」と深々と頭を下げた。
阿部は、「監督の仰ったとおり、『愛って何なんだろう?』って考えさせられる映画だと思います。なかなかこういう映画ってないんじゃないかなって」と述べ、続けて「キラキラした映画もいいですけど、こういう映画って絶対あったほうがいいし、そういうのに出たいなって思ったし、あんだけ汚すこともないかもしれない。足の指の間にもゴミを詰めて頑張ったので、もし見逃していたらもう一度観ていただいて、みなさんと話し合っていただきたいです」と挨拶。最後に蒼井は「こういう映画を作れる日本映画界でありたいなと思います。そのためにはある程度観ていただかないと…」と満面の笑みを浮かべ、「この作品って掛けですから、最後の最後でどうかという勝負で。ただ私たちが球を投げる環境を私たちも守っていかなければなりませんし、私も映画人としても、映画ファンとしても守っていけたらいいなと思っています。みなさんここは共犯者だと思って、是非応援宜しくお願いします」とPRし、舞台挨拶は終了した。
【関西ウォーカー編集部/ライター南 華凛】
南 華凛
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