音楽と日本ワインに込めたメッセージを届ける。Kisvin Wineryの醸造家、斎藤まゆさんが目指すものは?「カルチャー日本ワイン」第2弾はジャズ×日本ワイン
東京ウォーカー(全国版)
カルチャーと日本ワインをかけあわせたイベント「カルチャー日本ワイン」。日本ワインの魅力を発信するブランド「wa-syu(ワシュ)」が仕掛けるこの新しい取り組みの第2弾、「Kisvin Winery × Jazz at TRUNK(HOTEL) 」が2024年12月15日に開催された。

カルチャーの語源は「耕す」を意味するラテン語の「colere」に由来するという。土を耕しブドウを育てることで生まれる「ワイン」と、心を耕し感性を育てることで生まれる「文化」のコラボレーションを実現するイベント、「カルチャー日本ワイン」第2弾のテーマは「ジャズ×日本ワイン」。ワインも歌も、どちらにも込めた想いを誰かに届ける力があるのだと、日本ワイン醸造家の斎藤まゆさんは語る。ワインに想いを込めて送り出すように、歌うことでまた想いを伝えたいと、幼いころより親しんできたジャズのボーカルトレーニングを続けてきた斎藤さん。その初リサイタルが、この日実現した。
日本ワイン醸造家として注目されている斎藤まゆさん
山梨県甲州市塩山の「Kisvin Winery(キスヴィンワイナリー)」で醸造責任者を務める斎藤まゆさんは、日本ワインの世界で今注目されている醸造家のひとりだ。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも特集されるほど、その功績は高く評価されている。特に、世界最優秀ソムリエの故ジェラール・バッセが「ユニークでセンセーショナル」と絶賛した赤ワインは、2013年に創設されたばかりのワイナリーを一躍有名にした。その名も「ピノノワール」。ブドウの品種名をそのまま冠するこの奇跡の1本は、斎藤さんがまさに想いを込めて生み出したワインなのだ。

斎藤さんはカリフォルニア州立大学のワイン醸造学科で学び、同校のワイナリーでアシスタントを務めたのちに渡仏、ブルゴーニュのワイナリーで修行した。海外で培ったブドウ栽培と醸造の技術を買われ、ちょうど醸造家を探していたKisvin Winery代表の荻原康弘さんにスカウトされる。帰国後は同ワイナリーの醸造責任者として、山梨県の塩山で日々ワイン造りに向き合っている。


「ワインと歌は同じ、メッセージを込めて誰かに届けることができる」偶然からうまれた唯一無二の企画
12月15日はそんな斎藤まゆさんの誕生日であり、またwa-syuのサイトがオープンした日。偶然にも誕生日が同じだったことが、今回のセッションのきっかけだったと斎藤まゆさん。「誕生日のメッセージが欲しいとwa-syuさんから依頼があったんですが、実はその日は私も誕生日なんですよ、と。それがきっかけなんです。音楽とワインを融合させたイベントをやってみないかという話になり、誕生日が一緒ならその日にやるしかないんじゃないですかということで、それが運命の始まりでした」

ワインの醸造家になる前からずっと夢があったという斎藤さん。それはワインの歌を自分でつくること。「フランスのブルゴーニュ地方にはワインの歌というものがあるんです。誰かひとりが歌い始めると、たとえばこのフロアの全員が歌い出すんです。歌詞は、あったりなかったり。とても簡単なメロディーで、ワインを造る人も飲む人も、みんなが一体となって歌う歌です。今まで海外で修行してきて、フランスでもアメリカでも必ずワインの歌というものがあったんですが、日本にはないので、そういう歌をつくって発信していきたいんです」

幼少期化からジャズに親しみピアノや声楽を嗜んできたが、それらはあくまで楽しみのひとつとしてだった。ワインの歌をつくりたいという夢のため、斎藤さんは大人になった今、あらためてジャズのボーカルトレーニングを始め、ワインをテーマにした詩を書き溜めている。作曲家に曲を書いてもらい、いつかワインの曲を作りたい。夢のために音楽活動を続けてきた斎藤さんにとって、この日は人前で歌う初めての日。「むちゃくちゃ緊張しています。だからさっき、キスヴィンのスパークリングを1杯飲みました」とこっそり教えてくれた。

ステージはクラブジャズシーンを牽引するDJの松浦俊夫さんとのセッション。「スカイラーク」、「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」、「スターダスト」とロマンチックなバラードを3曲セレクトした理由を聞いた。「スカイラーク」はヴィンヤードで頭上を飛ぶ鳥を、「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」は人々が思い合い愛し合うこととワイン造りに共通する普遍性を、「スターダスト」は移り気なワインラバーたちのワインへの愛を失恋に見立てた切なさを、それぞれイメージしたのだそう。「ブドウ畑で普段見ている景色、ワインを飲んでくれる人への想いや日常で感じていることを込めて届けるという点では、ワインと歌は同じだと思ってます」と斎藤さん。

「ワインは長い時間をかけ、ずっと造り続けていかなくてはなりません。人間の普遍的な部分や、そうそう変わらないもの、身近にあるのに当たり前すぎて誰もがつい忘れてしまうようなことを、ワインや歌に込めてお客さんに届ける、そのメッセージを受け取ってくれた誰かからさらに広がっていくと信じてます」。斎藤さんのワインを飲みながらその歌に聞き入ることで、そこに込められた多くのメッセージを受け取ることができる。wa-syuだからこそ実現できた、ユニークかつ新しいイベントだ。

会場となったホテルのラウンジは、イベントのゲストだけでなく、ホテルの宿泊客やバーでお酒を楽しむ人など多くの人で賑わっていたが、演奏が始まると全員が会話を止め、斎藤さんの歌声に聞き入っていた。

希少なKisvin Wineryのワインをグラスで味わえる
決して広くないKisvin Wineryの畑から生まれるワインはなかなかに希少だ。先述の「ピノノワール」や、国際線のファーストクラスで提供されていた「甲州」など、手に入りにくい銘柄もある。もとは食用のブドウを中心に栽培していた塩山のブドウ農家だったKisvin Wineryは、2002年ごろよりワイン用のブドウ栽培を始めた。その後2013年にワイナリーを建設し本格的にワイン醸造を開始した、まだ新しいワイナリーだ。わずか10年ほどでここまで有名になったのは、斎藤さんの功績が寄与するところも大きい。

イベントでは「甲州スパークリング2021」、「シャルドネ2023」、「ピノノワール2022」を提供。フラッグシップの「ピノノワール」を筆頭に、どれもKisvin Wineryのワインを楽しむための入り口としてふさわしい3本だ。受付でチケットを受け取り、バーカウンターでグラス1杯と交換できるシステム。バーカウンターではほかにもKisvin Wineryのワインをグラスで注文できるので、気になっていた1杯を試すことができた。
提供ワイン Kisvin Winery
甲州スパークリング 2021(泡/辛口)
シャルドネ 2023(白/辛口)
ピノノワール 2022(赤/フルボディ)
また、以下の5銘柄についてはSALON adam et rope 東急プラザ銀座店にて販売している。販売本数に限りがあるため、出合えたらその場で購入することをおすすめする。
SALON adam et rope 東急プラザ銀座店
甲州スパークリング 2021(4200円)
甲州 2023(4200円)
シャルドネ 2023(6500円)
ピノノワール 2022(2万円)
ピノノワールロゼ 2023(1万円)

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。
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