91歳現役バーテンダー。 転身のきっかけは妻のダンス!?
東京ウォーカー(全国版)
雪国というカクテルがある。「YUKIGUNI」として世界でも有名な和製スタンダードカクテルのひとつで、生みの親の井山計一さんは、大正15(1926)年生まれの91歳。現在も山形県酒田市中心部で「ケルン」という喫茶&バーを営んでいる。伝説のバーテンダーに直撃インタビューした。

日本一のカクテル「雪国」は、適当に作った(笑)
シャンと伸びた背筋で、カウンターの客と会話を交わしながらシェイカーを振ってカクテルを作り、ボックス席の客にも目を配る。普通の91歳がこんなにテキパキと仕事をこなせるもの?
「僕はもともと社交ダンスを教えていたの。でも一緒にやっていた妻がラテンダンスが下手くそで(苦笑)。こりゃダメだって職替えしようかと、仙台のキャバレーに行ったの」と井山さん。
なるほど、身のこなしが颯爽と軽やかなのも納得。そして当時、何百倍もの高倍率だったというバーテンダーに転身した。その後独立して昭和30年12月10日に「ケルン」を開店。昭和34年に現サントリー主催の「全日本ホーム・カクテル・コンクール」で「雪国」を出典してグランプリを受賞し、一躍脚光を浴びることに。ちなみに井山さんは下戸(げこ=お酒が飲めない人)。「カクテルは、リキュールとスピリッツの混合だから、その組み合わせがちゃんとわかっていればいい」のだそうだ。

ウオッカ、ライムジュース、ホワイトキュラソーなどで作られた「雪国」は、美しいグリーンのお酒の中に、ペパーミントづけのチェリーをイン。グラスのふちにグラニュー糖をつけたスノースタイルで、しんしんと音もなくと降り積もる雪のシーンをイメージしたそうだ。しかし、見た目とは異なり、アルコール度数がかなり強い!油断して何杯も飲むとつぶれてしまうだろう。女子を知らず知らずに酔わせる、いわゆる“レディーキラー系”カクテルだ。井山さんの「雪国」は評判となり、一時期は売り上げがグンと伸びた時期もあったようだが、それで大金持ちになったわけではない。
「80歳ぐらいまでは、鳴かず飛ばず(笑)。ただ長くやってきたのがよかったのかな。弟子はみんな死んじゃったけど、僕だけが生き残ってる。不整脈もあるけど、社交ダンスのリズムみたいに、脈がスロースロークイッククイックって動くんだと思えばどうってことない(笑)」と、あくまで明るい。
こんなチャーミングな井山さんの生涯と「雪国」の誕生秘話が、ドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」になる(来年公開予定)。「オリジナルカクテルがないバーテンダーもいるからね。僕は“雪国”のおかげで、日本一幸せなバーテンダーだと思うよ」【東京ウォーカー編集部】
東野りか
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