人気漫画家なら「2桁万バズ」も可能?「魂売っても叶えなきゃ」売れない漫画家がバズを取るために選んだ方法は?【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
「描いてバズる保証はないけど、描かないと絶対にバズらない」28歳、崖っぷちアラサーの木村サエコは漫画家志望。非正規雇用の仕事の合間をぬって「SNSでバズ漫画を出したい!」「一度でいいから通知止まんなくなってみたい」と懸命に漫画を描く。そこに突然、幽霊になった元人気漫画家が現われ、「2桁万バズ」を約束する。漫画はバズり、承認欲求が満たされていく。けれど、サエコが思い描く世界とは程遠くて…。今回は、東山わかる(@wakarueast)さんの創作漫画「絶対にバズりたい女の話」を紹介するとともに、制作の経緯など話を聞く。
バズることそのものが「目的」になってしまったら、それはきっと苦しい。

SNSでバズる作品は、エロか流行りネタばかり。所詮、インスタントコンテンツ。自分が描く漫画はもっと消費されない、心に残る良作――。そう、自分を励まし続けているが、「SNSでバズ漫画を出したい!」「一度でいいから通知止まんなくなってみたい!」というのが、本音。

28歳、アラサーの木村サエコ、夢は漫画家。SNSに投稿する漫画は、相互フォロワーのいいねばかりで全くバズらない。そこに現われたのが、「キミの漫画、バズらせてあげる」という幽霊。「生前は人気漫画家だった」という。

幽霊はサエコに憑依し、漫画を描くという。目指すは「2桁万バズ」。憑依した漫画家が描いた作品を投稿すると、1.3万のいいねがついた。ずっと止まらない通知、コメントがついて自分が承認されていることに強い満足感を得るサエコ。しかし、バズりは一瞬。たった一回バズったくらいで、人生何にも変わらないことに気づかされる。

サエコは「約束の2桁万バズにいってない」と、幽霊とさらに契約を続行する。「やっと巡ってきた運」「魂売っても叶えなきゃ」と、幽霊に体を空け渡したのだ。その結果、彼女が手に入れたものは一体…。
大きくバズるとたくさんの方に読んでいただけるので素晴らしい!ただ、バズというのは作品を多くの人に届けるためのひとつの「手段」にすぎない
本作は「漫画のオンラインスクールで半年ほど勉強していたのですが、その卒業制作として描いたもの」だという。今回は、東山わかるさんに作品に込めた思いを聞く。

――61ページという大作ですが、漫画家志望の女の子のキャラのパワーもあってか、一気に読み進めてしまいました!制作するうえでこだわったところ、悩んだ箇所などあれば教えてください。
一気に読んでもらえてとてもうれしいです。60ページ強というボリュームはSNSに載せる漫画としては多いものですし、「どうしたら飽きずに最後まで読んでもらえるか?」という部分にはけっこう気を遣いました。悩んだ箇所はたくさんあるんですが、わたし自身がキャラクター作りにまだ慣れておらず、「主人公は読者に受け入れられるキャラなのか?」というのはずっと気がかりでした。全話公開後に、主人公に「共感した」「かわいい」という感想をいただけてホッとしました。

――漫画家志望の子に死んだ漫画家が憑依して、バズ漫画を作るというコンセプトがおもしろかったです。結末はどのように決めましたか?また別のラストがあったなど、制作過程の秘話があれば教えてください。
結末は最初から決まっていて、別のエンディングは考えていませんでした。実はこのお話の構想はもっと長いもので、60ページではとても収まりきらなかったので、キリがよく、いいシーンになりそうな場面をラストにすることに決めました。そして、ありがたいことに公開後に編集者さんから声をかけていただき、現在この続きを一緒に作っているところです。作品はXで公開する予定です。引き続き応援よろしくお願いします。

――個人的には、俯瞰からみた汚部屋やちょっとHな憑依シーンが好きです。東山さんの一番のお気に入りのシーンはどこですか?
ありがとうございます。わたしのお気に入りのシーンはたくさんあって1番を挙げるのは難しいので、質問の中にあったふたつのシーンについてお話します。まず、俯瞰の汚部屋は単純に絵として面白いだろうと思ったので入れたシーンです。子供のころ「◯◯を探せ」みたいな絵本が好きだったんですが、室内の状況を俯瞰で捉える絵にはそういった種類のワクワク感があるようにも思っています。
憑依シーンは、不安と緊張、期待とトキメキの混ざったようなドキドキを読者に感じてもらえたらいいなという気持ちで描きました。それはもしかすると「初エッチ」にも似た感情かもしれないと思っていたので、読んだ方から「エッチだ」という感想をたくさんいただき、ある意味で狙いどおりの反応だったのでうれしかったです。

――本作で「バズってほしいな」と思いますが、東山さんとしてはバズりたいという気持ちはありますか?
あります。大きくバズるとたくさんの方に読んでいただけるので素晴らしいなと思います。想像もしなかったほど遠くまで作品が届き、思いがけない反応をいただくこともあり、それはわたしにとってある種の奇跡のようにも感じられる体験です。ただ、バズというのは作品を多くの人に届けるためのひとつの「手段」にすぎないので、バズることそのものが「目的」になってしまったら、それはきっと苦しいことだと思います。本作の主人公はまさにそこにはまり込んでしまった人間なんです。そういった部分にも注目して読んでもらえるとうれしいです。

――その他どのような漫画を描いていますか?また、どのような漫画を描きたいか展望を聞かせてください。
今までに描いた作品をふりかえると、現状に不満を抱いている主人公が自分の人生に満足したいと願って奮闘したり、ありのままの自分を認めてくれる異性と心を通わせ救われるようなお話をよく描いている気がします。成長物語+ラブコメ的な作風が得意なのかもしれないです。これからも読者がキュンとしたり感動したりできるお話を作りたいなと思っているので、次の作品もぜひまた読んでください!よろしくお願いします。
取材協力:東山わかる(@wakarueast)
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