30歳のOL ！生産性を求められる職場で「望んだ未来は本当にこれでよかったの？」ふと心に問いかける！友人の悲報に自身の夢を思い出して【インタビュー】

150パーセントの生産性を求められる職場に就く。こなせないようなノルマも何とか乗り切り、気づけば30歳。SNSで友達の訃報を知り、主人公は「自分が望んだ未来は、本当にこれでよかったのか？」と葛藤する。一度は心がつながった友との過去の思い出が、諦めた夢への背中を後押しするきっかけとなった、町田ねねこ(@ne_machida)さんの創作漫画「このマンガが、なっちゃんへ届きますように」を紹介するとともに制作に込めた思いを聞く。

友達の訃報を知り、思い出したのは「諦めてしまった夢」

SNSで友達の訃報を知った。友達とは、もう十数年間疎遠だった。学生のころ描いていた漫画を「おもしろい」と言ってくれたことがきっかけで仲良くなった。そのうち、漫画賞に応募してみることにしたが、結果は落選――。傷つくくらいなら始めからやらなければよかったと後悔し、漫画をやめた。友達は「続きを描いてよ」と言ってくれたが、そのまま疎遠になった。あれから、十数年。まさか友人の死をSNSで知ることになるとは…。

この出来事をきっかけに、30歳になった自分は「果たして自分は思い描いた未来に立っているのか？」と、自問自答する。夢は夢、叶えられない夢は諦めて現実を生きる、という考え方もあるだろう。給与もいい、仕事に不満はない。ただ、生産性ばかり求められ、形の残らない仕事にどこかモヤモヤする気持ちはあった。「30代、この先どう生きるか？」誰しもぶち当たるであろう迷いと葛藤を描いた本作には、「社会に出て、同じような体験をしたことがある」「多くの人の背中を押してくれる良品」などのコメントが届く。

迷い、葛藤した心境が読者にも「自分ごと」として感じられるように意識して描いた

――本作を制作したきっかけを教えてください。

本作は今年の1月に卒業した「コルクラボマンガ専科」というオンラインスクールの卒業制作のために描いた作品です。32ページのオリジナルの読み切り漫画を描くのは初めてでした。そのため、どういうテーマを題材にするかはすごく迷いました。

授業のなかで「自分が知っている感情を漫画の中に描こう」と言われていました。私自身、社会人として頑張るなかで「本当にこれでよかったのか？」と迷い、生きてきたような気がします。その葛藤を形にしたのが、この作品です。

――漫画を描くうえで、どのような点に気を付けて制作しましたか？

基本的には創作漫画ですが、ところどころ実際にあったことがベースになっています。特に気をつけたのは、感情の描写です。感情は嘘をつくことができないので、それが読者にも「自分ごと」として感じられるように、キャラクターの心情を丁寧に描くことを意識しました。

――優しいタッチの絵柄ですが、描写はリアルでグッとくる場面が多々ありました。制作するうえで、町田さんがこだわったところはどこですか？

キャラクターの表情には特にこだわりました。頭身が低くシンプルな絵柄だからこそ、ちょっとした目線の動きや、口元の微妙な変化で感情を表現できるように意識しました。「わたしの望んだ未来は本当にこれでよかったんだっけ？」の場面では、主人公が自分の「空虚な気持ち」に気づく瞬間を強調したいと思いました。表情のない表情を描くことで、彼女の中の空虚さを感じてもらえるように意識しました。

――本作を描いたことで心境の変化はありましたか？

描く前の私は、「好きなことに本気で向き合うと、うまくいかなかったときに傷ついてしまう」と思っていました。だからこそ、どこかで最初から自分の可能性を低く見積もり、挑戦する前に諦めることが多かったです。でも、この作品を描くうちに気づきました。「好きなこと」を守るために距離を取るのではなく、真正面から向き合うことこそが、本当の意味で自分の人生を生きていくうえで大切なのではないかと。たとえ傷つくことがあったとしても、それ以上に得られるものがあるかもしれないと思えるようになりました。この作品は、そんな私自身の小さな一歩でもあります。

――今後はどのような作品を描いていきたいですか？

「読者の心がじんわりと温かくなる作品」を目指したいです。ただ優しいだけじゃなく、読んだあとに、「自分の過ごす日々のなかにも、小さな幸せや希望があるかもしれない」と思えるような作品を描いていきたいと思っています。

取材協力：町田ねねこ(@ne_machida)