沖縄の知らなかった魅力を体感する!「エシカルトラベルオキナワ」で新たな魅力に出合う
東京ウォーカー(全国版)
近年よく耳にするようになった「エシカル」という言葉。英語の「ethical」(=倫理的な)のことで、一般社団法人エシカル協会によれば、「人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動」と意味される。最近では旅行でも“エシカルな旅”が注目されている。そんななか、“人や環境に配慮した新しい時代の旅のカタチ”として提案されている「エシカルトラベルオキナワ」を体験してきた。

「エシカルトラベルオキナワ」とは

ここ最近耳慣れた言葉になりつつある「エシカル」。詳しいことはわからなくても、何となく環境や未来にいいことなのではという認識を持っている人が多いかもしれない。「エシカルトラベルオキナワ」は、沖縄の自然環境や伝統、産業を維持・発展させ、沖縄の成長に繋がる持続可能な観光を目指しつつ、観光客・観光事業者・沖縄県民がともに「沖縄らしさ」を育み、発展することを目指す観光プロモーション。簡単に言えば、旅をする人も観光に関わる人も、地元に住んでいる人も、今ある沖縄を大切にする旅を心がけるということ。

エシカルトラベルコンテンツの考え方は「自然環境を大切にしている」「人と動物の命を大切にしている」「地域文化と伝統を大切にしている」「公平性・透明性を大切にしている」という4つ。現在、沖縄県内の60の事業者が関わり、さまざまな取り組みを行っている。そもそも沖縄は国内旅行先としても人気の高い地域。つまり、全国各地から老若男女問わず多くの人が訪れる。だからこそ、観光客・観光事業者・沖縄県民の三方が気持ちよく過ごせるエシカルな旅が注目される。

エシカルトラベルには「体験」、「環境を守る」、「アートと伝統文化」、「飲食」、「お土産」、「宿泊」、「地域還元」、「交通」という8つのカテゴリーがある。沖縄の人や社会、環境や地域に配慮した観光というと、やや難しい印象を受け、真面目でおもしろくなさそうに感じてしまうかもしれない。でも、実はもっともっと奥深く、沖縄を感じられる楽しくて新しい旅を体験できるキーワードでもある。
土地のものをその土地で食べる!「食」で感じる沖縄の魅力

旅行の中で大きなポイントともなるのが「食」。「食」を目的に旅行先を決めたり、「食」を軸に旅のスケジュールを決めたりするという人もいるほど、旅行には欠かせない要素。そして、わざわざ旅行で遠方に来たのだから、その土地の食材や料理を食べるのは旅の醍醐味というもの。地産地消という言葉があるように、その土地で採れた食材をその地で食べることは、地元の新鮮な食材を食べられるのはもちろん、その地の食文化や伝統を知る機会にもなる。実際に現地に行かなければ触れることができない食体験にも繋がる。


沖縄は食材の宝庫で、ほかの地域ではほとんど見かけない食材を使った料理も多数ある。沖縄料理店に行けば食べられるものもあるが、やはり現地の空気感で食べるのはひと味もふた味も違う。ということで、最初に訪れたのは「Cookhal(クックハル)」。名護市にあるアグリパーク内の農家カフェ&直売所。沖縄県北部の“やんばる”で、なるべく農薬不使用で育てた野菜やスパイスを使用した、野菜たっぷりのメニューが味わえる。

ランチタイムということもあり、「日替わり畑のランチプレート」をいただいた。このプレートに使われているお米や野菜、鶏肉はやんばるで生産されたもの。日替わりなのは、その日の朝収穫された野菜を使うため日々内容が変わるから。天ぷらや日替わりのデリ、サラダで地元野菜を味わうことができる。中には珍しい野菜もあり、見た目も鮮やかで野菜から力強さを感じる。


実際に食べてみると野菜がとにかくおいしい。食感も香りも味も、何もかもがおいしい。畑直送の野菜はまだ大地からのパワーを保持しているようで、味が濃い。きっと調理せずそのまま食べてもおいしいのだろうと思わせる強さがある。普段、野菜を食べて思うことはあまりないが、これはちょっと感動する。野菜本来の甘さやほろ苦さなど、一つひとつの味が味覚を刺激する。代表の芳野幸雄さんが「畑の声が聞こえるプレート」と説明されたのも納得だ。
お米は名護産のミルキーサマーに古代米を混ぜたもの。もちっとした食感が特徴でやさしい味わい。メインディッシュはやんばる若鶏。臭みがなく、ジューシーで肉質が柔らかいのが特徴。出荷前の一定期間、ハーブをブレンドした飼料を与えているのだそう。シンプルに塩焼きにすると肉のおいしさをダイレクトに感じられる。

ほかにも、やんばる豚100%の自家製ソーセージをサンドしたホットドッグや、アップルバナナとピーナッツのスムージー、地元にある紅茶専門の茶農家「金川製茶」の沖縄県産100%の紅茶など、ここでしか食べられないもの、沖縄を感じるものが味わえる。芳野さんは「ここでは自社農園と仲間の作る野菜のみを使用しています。野菜は年間40~50種。ここには海も山もあり、米も収穫できる。さらにスパイスも多く栽培していて、いずれはスパイスの街としても盛り上げていきたいと思っています」と話す。

ほかでなかなか見ないのは、国産コショウ。店頭ではコショウの苗を販売しているが、近くにある国産コショウの展示圃場を見学し、コショウ栽培に挑戦するコショウ栽培ワークショップなるものも開催している。国産のコショウというだけでも興味をそそられるが、自分で育てることができるなんてワクワクする。
店内ではランチでも使われていた新鮮な地元野菜や手作りスイーツ、金川製茶の紅茶、地元メーカーの食材やスパイスなども販売している。「やんばるではこれだけいろいろな、おいしい野菜が採れる。まずそれを地元の方々に知ってほしいですね。そして観光で訪れた人たちにも広がって、やんばるって素晴らしい自然がある、魅力のある街だということがたくさんの人に伝わればと思っています」と芳野さん。カフェのメニューから野菜や米、やんばる鶏といった食材のおいしさを体感し、駅や空港で購入するのとはちょっと違う特別なお土産も手に入る。「クックハル」にはここに来なければできないおいしい体験がある。
宿泊することで地球環境保全に貢献できるホテル

宿泊するのは「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」。ちょっとおもしろい名前の「発酵」をテーマに人と地球にやさしいサステナブルなホテルだ。もともとは1972年に「沖縄ヒルトン」として開業したホテルで、その後シェラトンホテルに替わり、1990年代始めに別のグループに買収されたものの改装途中でその事業者が倒産。その後長く放置され、地元でも“幽霊ホテル”として認知されていたそう。そこでEM研究機構が2003年にホテルを引き受け、「EMウェルネスセンター」として2005年に開業した。





EM(Effective Microorganisms=有用微生物群)はEM菌と呼ばれ、微生物による発酵と合成の力で悪臭を消したり、土や川の微生物循環を整えたりすることができるという。ホテル内ではEM菌を活用したハウスケア用発酵液を用いてケミカルフリーな掃除や洗濯を行ったり、発酵の力を活用した食事を提供したりしている。ホテルのフロント前には発酵カフェ「暮らしの発酵DELI&CAFE」や人や環境にやさしいアイテムを販売するショップもある。


客室にアメニティは設置せず、ペットボトルの水なども置かない。その代わり、フロントのアメニティバーから必要なものだけをピックアップし、各フロアにあるウォーターサーバーからセルフ給水できるようになっている。細かいことだが、200室以上客室があるホテルではかなりのエコとなる。ケミカルフリーな清掃や石鹸洗剤でのリネン類の洗濯によって、アレルギーなどの不安がある人にもやさしい。


ホテルにはレストラン「キタナカガーデン」があり、朝食はかなりの人気で、宿泊者だけでなく近隣の住民をはじめ、わざわざ足を運ぶ人がいるほど。ブッフェスタイルで好きなものを好きなだけ食べられるが、大人3000円と決して安くはない。だが、それを上回る満足度が人気の理由。自社農場で有機栽培された旬の野菜、平飼い卵、地元の肉や魚介など、体にやさしい食材を使った多彩なメニューが楽しめる。

例えば、サラダバーでは自社農場の有機野菜はもちろん、沖縄素材を発酵させた自家製ドレッシングも注目。いろいろ試したくなるので、自然とたくさん野菜を食べてしまう。


さらに特徴的なのが、沖縄伝統の長寿料理「ぬちぐすい(命のくすり)」コーナー。女性長寿で知られる北中城村で受け継がれてきた、海藻や島野菜を中心とした昔ながらの健康的な料理が並ぶ。1食では普段の不摂生を取り返すには至らないが、食を見直すきっかけになったり、体にいい食事を参考にしたりできる体験にはなり得る。そして、何より、新鮮な野菜、地元の食材を使った料理やドリンク、スイーツまで幅広いラインナップで、おいしいと思えることは旅の記憶としても強く残る。


ブッフェメニューには数多く「発酵」の文字が付いている。発酵粥、発酵ローストハム、発酵ドレッシング、自家製豆腐や自家製パン、塩麹バター、自家製カスピ海ヨーグルトなど、身近な食材も実は発酵食だったと気づくものもあれば、こんなものにも発酵の力が関わっているのかと新しい発見もある。発酵の奥深さを感じ、おいしさも実感できる。そう、あれこれ難しく考える以前に、とにかくおいしい。珍しい食材や沖縄らしい料理を食べられて、それがおいしい。その背景に環境や人にやさしい農業や取り組みがあり、暮らしの知恵やヒントを持ち帰れる。



このホテルで使っている野菜は、ホテルのレストランで出た食品残渣を発酵させ、肥料として自社農場で使用し、育てたもの。生ゴミはゴミではなく資源。循環型農業を実践し、収穫した野菜はまたホテルのレストランやカフェでの材料となり、ショップで販売される。平飼いで飼育された鶏の卵もまた、自社の養鶏場で育てている。ここにも発酵の力が関わっていて、鶏たちは発酵飼料を食べ、発酵による衛生的な環境下で自由に動き回りストレスなく育っていく。

そして、ホテルには有料のワークショッププログラムがあり、味噌作りや無添加発酵ソーセージ作り、みりん作り、漢方講座など、発酵に関係するものを中心に多彩な内容で展開している。毎回、どのプログラムも人気で、宿泊者はもちろん、ワークショップのみに参加することもできるため、県内外から多くの人が参加している。実際に自分で体験することで、より一層、暮らしの中に取り入れられるヒントに出会えそうだ。
旅の体験が形に残る!やちむんの絵付け体験


旅行の楽しみのひとつが新しい体験。今回訪れたのは「壺屋焼 陶眞窯」。50年以上続くやちむん工房。やちむんとは、沖縄の言葉で焼物のことで、那覇市壺屋地区を中心に焼かれるものを「壺屋焼」という。「壺屋焼 陶眞窯」では、ギャラリーショップでやちむんを購入できるだけでなく、工房見学や陶芸体験、シーサー作りができる。


工房見学は定休日の日曜日を除き毎日行われていて、自由見学となっている。板状の土タタラの成形や伝統的な魚紋の線彫りなどの加飾技法など、タイミングによっていろいろな職人技を見ることができる。陶芸体験をする場合は工房見学ツアーとしてスタッフの方が説明をしながら案内してくれる。せっかくなら体験とセットで予約するのがおすすめだ。


今回はツアーとして見学。ガラス越しとかではなく、本当に間近で焼物を作る様子を見ることができる。職人の技を見る機会はなかなかないし、見ていて飽きない。実際の作業を見せてもらっているのでじゃまにならないように、気をつけながら工房内を回る。多くの職人が分業作業でやちむんを完成させていて、機械化が進む中、手作りにこだわり、100年後も続くものづくりに取り組んでいることを実感できる。



体験は一番人気のうつわ作り陶芸体験のほか、シーサー作り体験、電動ろくろ陶芸体験、絵付け陶芸体験がある。今回は15分ほどでできる絵付け陶芸体験にトライした。素焼きの皿に専用の道具で模様をつけていく簡単な工程。ポンポンと点を打っていくだけだが、色を選んだり、点の大きさや配置を考えたり、意外と悩む。一度付けた点は消すことはできないので、だいたいの全体図を想定しながら絵付けをしていく。作業はとても簡単だが、あれこれ悩むのも楽しいし、自分だけの1枚を作れる特別感がある。1回の体験で5寸皿(約15センチ)と3寸皿(約9センチ)の2枚。同じ柄でも違う柄でも好きにデザインできる。絵付けが終わったものは焼き上げて郵送で自宅に届く。忘れたころに自分の作品が送られてくるので帰宅後の楽しみが増える。


工房の隣には、ここで焼いた皿や器に料理を盛り付けて食事ができる「やちむん&カフェ群青」がある。破損した陶器のかけらを使って作ったピザ窯で、オーダーを受けてから焼くピザが楽しめる。マルゲリータやゴルゴンゾーラ・蜂蜜などの定番もあるが、ぜひ食べたいのが島野菜のピザ。ハンダマ(水前寺菜)という葉野菜、ゴーヤ、パパイヤなど沖縄野菜をのせたピザで見た目も鮮やか。高温で一気に焼き上げるので野菜の風味や食感も残って、1枚あっという間に食べられる。



それ以外のピザでも、県産の野菜や、沖縄のメーカー「オキハム」の「くんちゃまベーコン」(豚トロ付近の希少部位を使ったベーコン)など、地元の食材を使っている。とにかく生地がおいしくて、具材の組み合わせも絶妙なので、どれを選んでも間違いなし。おなかに余裕をもって訪れること、できれば複数でいくつか種類をシェアすることを強くおすすめしたい。陶芸体験と合わせて、沖縄ならではのピザを存分に堪能しよう。
エシカルな旅と聞いて、ちょっと難しい印象を受けていたが、実際に足を運んでみると楽しくて、おいしくて、満足度の高い旅だった。今回訪れたところはほんの一部。沖縄にはまだまだたくさんのエシカルなスポットや楽しみ方があり、何度か沖縄に行ったことがある人も、これから初めて行くという人も、きっと充実した時間を過ごせるはず。ぜひ、エシカルに沖縄旅行を楽しもう。
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