オリンピックシーズン開幕!注目選手を総ざらい 【シニア女子・後編】

東海ウォーカー

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シニア女子編、後編では3名の選手をご紹介したい。一般的な報道ではどうしても紹介する選手が偏ってしまいがちだが、他にも魅力的な選手が沢山いることをお伝えできれば幸いだ。

まさかの引退撤回。そしてトリプルアクセル挑戦!細田采花


細田采香、サマーカップでのショートプログラムの演技


それは今年の1月、長野で開催された国体でのこと。大阪チームは一丸となって戦っていた。すべてはこの試合を最後に引退すると決めた、細田采花のためだった。彼女の花道を最高の形で飾りたい、その思いで持てる力をフルに発揮すべく、それぞれが精一杯の演技を披露していた。成年女子で細田采花とコンビを組んだ加藤利緒菜は不調にあえいでいたのだが、この試合では必死の演技を見せてくれた。「采花ちゃんと『表彰台に乗ろうね』と約束したのに、私のせいで彼女の引退試合を壊してしまったら、そう思うと怖くて怖くて」と、取材で涙をこぼした加藤利緒菜の姿が印象的だった。そして見事、チームとして表彰台に乗ることができたのだ。試合後のミックスゾーンは大騒ぎだった。泣いている選手も多数いたが、中でも人目をはばからず、最も激しく号泣していたのが本田太一だったことには触れておきたい。いや、彼はこの試合に出ていない!ただ応援に来ていただけなのだが、「なぜお前が泣く」と突っ込まれながらも号泣していた姿は印象的だった。私も「すいません、シャッター押してもらえますか?」と頼まれ、大阪チームの集合写真を撮ることになった。こうして細田采花は有終の美を飾り、引退した、はずだった。

それから数か月後、「細田采花、競技続けるってよ。トリプルアクセル降りてるってよ」との噂が聞こえてきた!実際、サマーカップでも6分間練習でトリプルアクセルを成功させる姿を間近に見ることで、これは話を聞かなければ、と、近畿ブロックにてコメントをもらうことにしたのだ。そもそも、どういった経緯でこんなことになったのか。

「競技を引退したら遊びでスケートをしようと思っていました。紀平梨花ちゃんと一緒にトリプルアクセルの練習をしようね、と話していたんです。トリプルアクセルの練習を始めたのは4月ぐらいです」

それが思いの外、跳べるようになってしまい、だったら試合で決めたい、と考えるようになったのだという。近畿ブロックのフリーでは、最初にトリプルアクセルを失敗したものの、演技後半に2回目のトリプルアクセル挑戦。失敗に終わったが、同じように演技後半に予定外のトリプルアクセルに挑んだ、アルベールビル五輪の伊藤みどりのことを思い出した。そう細田に伝えると、「私と違ってあの人は成功させたので」と笑っていた。

トリプルアクセル挑戦、という新たなモチベーションを得て臨む今季だが、驚いたことにどこまで続けるなどの目標を一切決めていないという。

「トリプルアクセルを成功させて、すっと辞めたいと考えています。西日本選手権で成功したら、そこで辞めるかもしれません」

どこが引退試合になるのかまったく分からない、そんな状況が今後も続くようだ。とはいえ、今季は好調だ。今辞めるのはもったいないようにも思える。

「気持ち的に去年よりも楽なんです。かかっているものがないので」

と、ノープレッシャーで挑めていることが今季の好調の理由だと分析する。しかし、今年練習を始めて、ここまでトリプルアクセルが跳べるようになってしまうというのは凄いことだ。もっと早く、本腰を入れて練習をしていたら良かったのでは?と直球の質問を投げかけてみると、「それは、、、まぁ、それはそれで(苦笑)」と、ごにょごにょとした返事が返ってきた。本人も今まで気づかなかった、高いポテンシャルがあったということなのだろう。

いつまで観られるか分からない、細田采花の演技。辞めてしまうのはもったいないと思うが、早くトリプルアクセル成功を見せてもらいたい気持ちも強い。今週の西日本選手権でも注目したい。

来季も現役続行が決定!悔いのないオリンピックシーズンにしたい、大庭雅


大庭雅、サマーカップでのフリープログラムの演技


昨シーズン、安藤美姫振付によるショートプログラム、“ミッション”との出会いによって、スケートへの取り組みが大きく変わった大庭雅。それまでは大学卒業を機に引退することが既定路線で、オリンピックへの挑戦などさらさら考えていない様子だったのが、コメントの随所に意欲、気迫が伺える様子へと変貌したのだ。素晴らしいプログラムとの出会いが、これほどまでに選手を変えてしまうものなのか。振付のパワーというものに、改めて感じ入った出来事だった。

オリンピックシーズンとして迎えた今季、残念ながら怪我との戦いのシーズン幕開けとなってしまった。予定していた邦和杯を棄権。今までのスケート人生で初めてのことだったという。8月のサマーカップには、十分な練習ができずに出場。大学内でのインカレ予選を兼ねた大会だったので、出ないわけにはいかなかったとのこと。ただそれでも本人の予想を上回る評価を得ることができ、手応えを掴んだようだ。

今季の大庭雅、最大の見どころは新作のフリープログラムだろう。安藤美姫振付の、“エデンの東”。この曲は、フィギュアスケート界で最初に使ったミッシェル・クワン以来、そのほとんどがショートプログラムでの使用だ。曲調が全体的に静かなこともあり、フリープログラムの長さではメリハリがつけにくいのだ。しかし大庭はあえてフリープログラムにこの曲を使うことを選んだ。最初と最後のポーズが、浅田真央のソチ五輪のプログラムにそっくりなのだが、これは特に浅田真央を意識したものではなく、別の意味があるのだという。

「主人公の葛藤を描いているんです。最初は自信のない悲し気なポーズ、最後は受け止めてもらって、理解してもらえた喜びのポーズ。同じ人が、成長して変わった、ということを同じポーズで表現しています」

これは振付の安藤美姫の提案だという。

「最初はただ綺麗に滑ろうと思っていました。ただ美姫先生から言われたんですが、それでは飽きてしまいます。ここはまだ受け止め切れていない、ここは心を開いている、など場面ごとに表現を考え、内面から成長していく様子を表しています」

こうして4分間を飽きさせないプログラムに仕上げる手ごたえをつかんだようだ。

「曲がスローなので踊りで強弱を付けなければいけません。滑らかに滑るところ、切り返して止まる動き、壮大なところはダイナミックに、そういった部分は何回も美姫先生に見てもらいました」

そして、この曲を選ぶことになった遠因に、昨年から使うショートプログラムの存在があったようだ。

「昔はジャンパーだったので、力強い曲を選んでいました。それが昨年のショートを滑ったことで、静かな曲でも綺麗に滑りこなせるという自信がついたんです」

こうして、大学生活最後のシーズン、加えてオリンピックシーズンに向けた、素晴らしいプログラムが仕上がった。

「オリンピックに向けて、全日本の最終舞台に向けて、感動するプログラムに仕上げたいと思います。好きなプログラムで試合に臨めると、大好きなスケートをすごく楽しく表現できます」

そして、ブロック大会の折には「西日本選手権までには決めていると思います」と語っていた来季の進路だが、東海東京証券への入社が決まったことが既に報じられている。現役続行が決まったことは実に喜ばしい。今後も更なる進化を見せてもらいたいものだ。

ロンバルディア杯での高評価を機にさらなる成長を見せる!松田悠良


松田悠良、中部ブロックでのショートプログラムの演技


今季、ここまでの活躍を見せるとは、率直に言って予想していなかった。というのも、昨シーズン後半から抱えた腰の怪我が、かなり深刻だとの情報が聞こえていたからだ。

「腰椎分離症でした。昨年の全日本選手権で痛めてしまい、その後、3,4か月、滑れない時期がありました。その間は陸上のトレーニングメニューを見直したり、バレエで体幹を鍛えたりして過ごしていました」

サマーカップの折にはまだ仕上がっていない様子で、満足の行く演技とは言えなかったのだが、続くロンバルディア杯では195.56という高い評価を得ることができた。これは国際大会でもかなりの上位に食い込むことができる点数だ。

「国際大会であの点数を出せたことは本当に嬉しかったんです。自分ももう少し上を目指していいのかな、という気持ちになりました」

と、自信につながったようだ。とはいうものの、この試合での疲れが腰に出てしまい、イタリアからの帰国後は思うような練習ができなかったようだ。症状は治まったとはいえ、腰に不安を抱えていることに加え、今年のプログラムが極めて高難度であることも負担につながっている様子だ。中部ブロックでは十分な練習が練習が積めず、不安を抱えた中での演技となったが、まずまずの出来栄えで山田真知子コーチからも褒めてもらえたという。今後は休養を入れながらの調整が続くことになりそうだ。万全の状態で、西日本選手権、そして全日本選手権に臨んでもらいたい。今の松田選手ならば、全日本選手権でも上位に食い込む力を十分に持っているのだから。

【東海ウォーカー】

中村康一 (Image works)

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