「筑前煮を作れる子がタイプ」と平気で言う男がフラれて初めて知る自分の愚かさ【作者インタビュー】
東京ウォーカー(全国版)

鮎美が作る夕飯は、筑前煮やサバの味噌煮など勝男が好きな和食がメイン。勝男は「美味しい」「いつもありがとう」と言いつつも、「しいていうなら、全体的におかずが茶色すぎるかな?」とアドバイスした。この関係が順調だと思っていた勝男は、しかし、6年目の記念日にプロポーズをすると振られてしまう。失って初めて、彼女がどれだけ丁寧に料理を作っていたかを知る、
「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(ぶんか社)を紹介する
。「今夜すきやきだよ」(新潮社)で、第26回 手塚治虫文化賞 新生賞を受賞した谷口菜津子さん
(@nco0707)
の作品だ。
大学のミス&ミスター、完璧を求め続けた男がプロポーズで振られ、気づいた価値観のアップデートと変わる勇気



本作「じゃあ、あんたが作ってみろよ」を描いたきっかけについて、作者の谷口菜津子さんは「SNS上で時々見かける、料理のダメ出しをする夫への不満を読んで、腹が立ったり、悔しい気持ちになったりすることがありました」と明かす。そんな感情から、「もしその料理のダメ出しをした夫が、自ら料理を一から作ったらおもしろいだろうなと思ったのが、この作品のアイデアの種でした」と当時を振り返る。その後、編集者とやりとりしながら、「どんな兄弟構成なのか」「好きなドラマは?」といった背景を想像しながら、登場人物である勝男と鮎美が形づくられていったという。
キャラクターづくりの原点は、ある友人の言葉だった。「女の子らしい髪型が好きだし、スカートも好き。恋愛対象には男らしい姿を求めてしまう。でも今の時代、それを口にしていいのか迷う」と話していたという。そんな言葉に触れ、「ジェンダーや個人の自由など、いくつもの問題が重なっているように感じて、何て答えていいか分からず考え込んでしまいました」と振り返る。同時に、友人が社会の変化を受け止めながら、自分自身の好みにも改めて向き合おうとしている姿に「少し感動した」と語り、「自分自身は本当についていけているのか?と感じることが年々増えてきています」と、自らの価値観の揺らぎにも触れた。
「勝男が主人公なので、男性が価値観を更新する物語のように捉えられるかもしれませんが、どんな方でも変わることへの希望が持てるようにと願って、ストーリーやキャラクターを作っています」と語っており、本作には変化を受け入れることへのまなざしが丁寧に込められている。ぜひ、一度読んでみてほしい。
取材協力:谷口菜津子(@nco0707)
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