中谷美紀が魅せる!舞台「黒蜥蜴」が大阪へ

関西ウォーカー

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過去出演した舞台3作品も、ストイックな姿勢で作り上げてきた中谷。今作にも期待が高まる撮影=舞山秀一


江戸川乱歩の探偵小説を三島由紀夫が戯曲化した名作「黒蜥蜴(くろとかげ)」。美貌の女盗賊・黒蜥蜴と名探偵・明智小五郎が繰り広げる耽美と闇の世界を、世界的に活躍する演出家、デヴィッド・ルヴォーが手がける。初来日から約30年、三島を敬愛するルヴォーは、念願の作品に見事、中谷美紀を主役に射止めた。相手役の明智小五郎を演じるのは井上芳雄。デビュー当時からミュージカル界のプリンスと呼ばれ続ける彼が、今回はハードボイルドな役柄に挑戦する。ほかに相楽 樹、朝海ひかる、たかお鷹、成河らが出演。

東京での制作発表会見。中谷は本番で使われる想定で作られた黒のドレスで登場撮影=舞山秀一


ルヴォー版の「黒蜥蜴」は、ダンスを取り入れ音楽のテーマにタンゴを使うといった新たな世界観で構築。黒蜥蜴に扮した中谷が着用する黒のドレスは、本番に使われる想定のものだ。東京の会見で披露されたルヴォーの舞台イメージの紹介の後に、大阪での会見が始まった。

中谷は4回目の舞台だが「舞台に上がるたびに体をナイフで自ら削っているような感覚に陥るので、毎回、気分的にはこれが最後と思いながら演じているんです」と語る。そのストイックなまでの姿勢が素晴らしい舞台を作り上げることは、過去3作品で証明済みだ。衣装を着て艶然と微笑む黒蜥蜴の中谷と、目の前で舞台の苦しさを語る中谷。その印象の差…。東京での会見翌日に来阪し、丁寧な受け答えで終始した中谷の会見内容を紹介しよう。

Q.今作への意気込みを

「素晴らしい作品ですので、デヴィッド・ルヴォーさんの演出と相まって、本当にめくるめく世界を皆様にご覧に入れることになるかと思うのですが、いかんせん私自身がまだ舞台の経験が浅く、とても緊張しています。少々荷が重すぎたかなと思いつつ、しかしデヴィッド・ルヴォーさんがとても大きな懐で導いてくださっていますので、本番までにはなんとか黒蜥蜴を見出せるように励みたいと思います」

Q.「黒蜥蜴」について作品の印象は?

「読み物としては、極めて読みごたえがあり、かつ、三島由紀夫さんの作品のなかで最もわかりやすいエンターテインメントだと思うのですが、その一方でいざ演じるとなりますと、言葉が大変詩的であり文学的であるがゆえに、記憶するのがすごく大変です」

Q.ルヴォーさんと会って「黒蜥蜴」のオファーを受けたと?

「私は常々、舞台に向いていない、自分は舞台に立つべき人間ではないと、ずっと思って来たんです。ですから今回「黒蜥蜴」のお話をいただいた折も、喜びというよりは恐れの方が勝っていました。ところが、ルヴォーさんに実際にお目にかかった時、本当に温かい眼差しで、懐深く受け入れてくださって。私の自信のなさや不安な気持ちですとか、そういったものもすべて受け止めてくださっているように思われました。人の心を操る天才ですね。なので、自分の能力も顧みず、ついつい…YESと言ってしまいました。大概、優れた演出の方々は詐欺師のように言葉巧みに私たちを言葉で魔法にかけてしまうので、その魔法にかかりまして。どうせなら最後までだましていただこうと思いまして(笑)」

美しいものが大好きなので、黒蜥蜴に共感する部分もあると話す撮影=舞山秀一


Q.黒蜥蜴はどんな女性だと思いますか?

「悲しくもあり、また幸せな人でもあるな、と。心がない、血も涙もない人間だったはずの黒蜥蜴が、明智小五郎という唯一のライバルに出会うことで、人間らしい恋心、あるいは愛というものを知る。そういった相手に出会えたという意味で幸せだと思いますし、その一方でそれまで美に執着するあまり、人間らしい血の通った生活をしてこなかったという意味ではとても悲しい人間だと思います」

Q.人間をはく製にするという独特の愛し方ですが?

「そうですね。でも、どこか共感してしまうんですよね、美しいものが私も大好きなので。黒蜥蜴が美しいものに触れるために生きているようなところは、少々共感してしまいます。人を殺したいとは思いませんが(笑)」

Q.「黒蜥蜴」の作品の魅力は?

「この耽美的な世界で行われる、残酷かつ官能的で美しい、胸がヒリヒリするような愛の物語と言いますか。なによりもそこが魅力なのではないかと。黒蜥蜴も明智小五郎も、共に犯罪に取り憑かれた2人が、陰と陽、あるいは磁石のプラスとマイナスのように、共に惹かれあい、でもどこかで牽制し合い…。おそらく原作より三島がこだわったのは、2人のラブ・ストーリー。かなり特化して描いてらっしゃるので、ルヴォーさんもそこを突き詰めていかれるのではないかなと思います」

Q.ルヴォー演出への期待は?

「おそらくト書きはかなり無視して、ルヴォーさんなりの新しい世界観でお見せすることになると思います。映画的な手法や、あるいは身体表現などを含めた新たなものを。ルヴォー版『黒蜥蜴』がどういうものになるかを、探り探り、作っていきたいなと思っています。この数日、ご一緒して感じたのは、ただ主役だけが引き立つ作品ではなくて、全体のバランスをとても大切にしてくださる演出家だなという印象がありますね。それは私自身もほんとにいつも望んでいることなので」

Q.舞台で心がけていることは?

「言葉が借り物にならないように、というか、言葉から自由になること。優れたパフォーマーを見ると、楽器にしても声にしても踊りにしても、ほんとに自由だなって。20年ほど前に初めてヨーヨー・マの演奏を聴いたときに、楽器がそこにあることを忘れてしまうぐらい楽器から自由になっているように見えました。シルヴィ・ギエムの踊りもそうですけれども、そうした姿を見ると、私はまだまだ囚われている、まだまだ自由になれていないなと思っています」

左からデヴィッド・ルヴォー、相楽 樹、井上芳雄、中谷美紀、成河、朝海ひかる撮影=舞山秀一


【関西ウォーカー編集部/ライター高橋晴代】

高橋晴代

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