「お母さん聞こえてる?」声をかけると、まばたきひとつ。話すことも指を動かすこともできなくなった母に伝えたい「大好き」【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
緩和病棟に入院したイラストレーターの枇杷かな子(@kanakobiwa)さんのお母さん。時が過ぎ、言葉を話すことも指を動かすこともできなくなった。最後に言っておきたい言葉は「大好き」だった。亡くなった母親とのエピソードを詰め込んだシリーズより『だいすき』を紹介するとともに話を聞く。
「大好きだよ、お母さん」言葉にしたら涙が止まらなくなってしまう気がした




緩和病棟に入院した枇杷さんのお母さん。時間とともに言葉を話すことも指を動かすこともできなくなった。「両親の介護中さまざまな葛藤があったり、母との時間はあと少しなのだな…と思うと、かけがえのない時間を残したい気持ちがあって、描くことにしました」と、枇杷さんは当時の思いを振り返りながら漫画を描く。





声をかけると、まぶたがパチン。まばたきをした。「応えてくれてるのかな」と、話しかけてはまばたきを見て喜んだ。本作では、母の葬儀で枇杷さんが喪主を務めた日のことも描かれている。「今も寂しさが強く、介護中の後悔もたくさん残っています。ただ、母との話は思い出しては泣きながら描いていて、少し心の整理もしているのだなと感じます」




枇杷さんとよく一緒に訪れるのは、お母さんの妹。叔母は、「一緒にいるからね」「姉ちゃんが大事だよ」と声をかけた。枇杷さんも「大好きだよ、お母さん」と、伝えたい気持ちはあった。しかし、言葉にすると泣いてしまいそうで言えなかった。そんなある日、お母さんの乾いた唇を保湿した。「自慢の唇をもっときれいにしますよー」と言いながらお母さんを見ていると「お母さん、大好きだよ」心から言葉が溢れた。泣きながら「だいすきだよ」を何度も伝えた。すると、お母さんのまぶたがパチン。まばたきをした。声が届いたのだと思って、また胸が熱くなった。




「はじめは流れに沿って描きだめして投稿していたのですが、『あのことも描いておきたいな』など気持ちのままに描くこともあります。正直こんなにたくさんの方に読んでいただけると思っておらず、驚きました。同じ境遇の方やご家族をあらためて大事にしたくなった方など、皆さんの心のこもった感想が読めてとてもありがたいです」と、枇杷さん。「今、認知症の両親の介護を一人でしていて、時々自分でもいっぱいいっぱいになりますが、心が洗われました」「母がこれまでにくれた言葉を胸に抱えて一日一日必死に生きています」などの共感のコメントが数多く届く。



介護生活と並行して描いていた新刊『余命300日の毒親』が発売された。書籍は毒親の介護に直面する物語だ。「少しでも介護による孤独がなくなってほしい、そんな気持ちをこめて描きました。そして、主人公ヒトミのお話とは別に、この本だからこそ描いた私の介護エッセイも載せています。ぜひ読んでいただけたらうれしいです」と、制作に込めた思いを話してくれた。
取材協力:枇杷かな子(@kanakobiwa)
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