【ネタバレ注意】徳川美術館の仕掛けに気づいた人はいるか?刀剣乱舞ONLINEとのコラボも話題の「時をかける名刀」展、後期日程の楽しみ方を紹介!
東京ウォーカー(全国版)
2025年7月29日より後期日程がスタートした徳川美術館・蓬左文庫 開館90周年記念夏季特別展「時をかける名刀」。すでに訪れたという刀剣ファンも多いことだろう。今回は開館90周年を記念した特別展とあって大規模企画展であること、またサービス開始10周年を迎えたゲーム「刀剣乱舞ONLINE」とのコラボレーションも注目ポイントになっている。

JR東海、日本料理 宝善亭、ガーデンレストラン徳川園、名古屋観光ホテルなど、展示とともにさまざまなコラボ企画を楽しめる本展。企画については徳川美術館も監修に協力しているのだが、とある仕掛けがあることに気づいた人はどのくらいいるだろうか。
「意外と気づかれていないみたいなんです」と、徳川美術館広報の吉川さん。せっかくなのでもっとたくさんの人に知ってほしい!ということで、今回は同展の「おすすめの楽しみ方」を紹介する。記事の最後でしっかりネタバレしているので、知りたくない人は注意。すでに訪れたにもかかわらず、気づかなかったという人はぜひ最後まで読んでみてほしい。
国宝の三日月宗近や岡田切を展示中!会期は9月7日(日)まで
6月14日にスタートした徳川美術館・蓬左文庫 開館90周年記念夏季特別展「時をかける名刀」は、尾張徳川家に伝来する国宝や重要文化財をはじめとした多くのコレクションのなかから、特に刀剣と刀装を中心に展示する展覧会だ。スマートフォンなどで楽しめるシミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」に登場する刀剣9振が展示され、ゲームとコラボした企画も好評を得て、連日多くのファンでにぎわっている。
特に、7月27日に終了した前期日程の展覧会内企画「伯仲燦然」では、徳川美術館所蔵の重文「刀 銘 本作長義(略)」(以下「本作長義」)と、足利市民文化財団所蔵の重文「刀 銘 九州日向住国広作(略)(号 山姥切)」(以下「山姥切国広」)を並べて展示し話題となった。7月29日から開催されている後期日程では、東京国立博物館所蔵の国宝「太刀 銘 三条 名物 三日月宗近」(以下「三日月宗近」)や国宝「太刀 銘 吉房(号 岡田切)」(以下「岡田切」)、三井記念美術館所蔵の国宝「短刀 無銘 正宗 名物 日向正宗」(以下「日向正宗」、展示は8月11日まで)を迎え、奥深い刀剣や刀装の世界、その魅力を紹介している。
後期日程の見どころはこれ!「全く同じエピソードを持つ鯰尾藤四郎と岡田切」
後期日程で注目してほしいのが、「岡田切」という東京国立博物館蔵の国宝、鎌倉時代に打たれたとされる太刀だ。刀剣乱舞ONLINEのゲームには登場していないので、馴染みのない人もいるかもしれないが、実はこの刀、徳川美術館蔵の脇指「鯰尾藤四郎」と全く同じエピソードを持つ刀として知られている。

鯰尾藤四郎のかつての所有者であった織田信雄(のぶかつ・織田信長次男)が、羽柴秀吉に内通したとして家臣であった岡田重孝を手討ちにした。これがきっかけとなり、小牧・長久手の戦い(1584年)が起こったとも言われている。その家臣、岡田重孝を切ったのが鯰尾藤四郎であると伝わっているのだが、同じく岡田切も、その名から分かるように「岡田重孝を切った刀」という伝承がある。どちらが本当に岡田重孝を切ったのか、どちらも伝説なのか、今となってはもう分からない。徳川家康の勝ち戦である小牧・長久手の戦いは江戸時代の徳川一門に重視され研究・顕彰されていたことから、そうした華々しい戦の由緒が後世、それに相応しい刀剣に付けられていった可能性も示されている。

まずは順路に沿って見てみよう。基本の回り方
徳川美術館の入り口は、黒門と呼ばれる徳川園の門をくぐった先にある。チケットは一般が1600円で、美術館窓口かオンラインチケットサイトにて購入できる。現在は通常開館となっており、予約は不要だ。受付を済ませて中に入ると、ロビーには図録や美術館のオリジナルグッズを販売する売店と、音声ガイドを販売ブースがある。音声ガイドを聞く場合には、こちらでチケット(1000円)を購入しよう。

入り口を入るとまずは、常設の「名品コレクション展示室」からスタート。ここでは、大名の生活と文化を5つのテーマに分け、茶の湯道具や書院飾りに使われた舶来品、婚礼調度など、大名や武家の生活を彩った品々を展示している。入ってすぐ左手にも刀剣の展示がある。


名品コレクション展示エリアを抜けると、渡り廊下の奥、「蓬左文庫展示室」から「時をかける名刀」が始まる。こちらには第一部として柄や鞘などの「刀装」が展示されている。基本的に展示室内の撮影は可能だが、フラッシュ撮影や、一部の展示品は撮影NGなので注意しよう。


蓬左文庫展示室を抜け、順路を進むと「本館展示室」に第二部として「刀剣」の展示がある。国宝「津田遠江長光」や先述の「岡田切」とともに、ゲームでお馴染みの刀たちもこちらで鑑賞することができる。


展示室を出て順路を進むと、講堂前のロビー、右手に中庭を眺める廊下に刀剣乱舞ONLINE等身大パネルの展示がある。8月中旬までは中庭の茶室で展示されていたが、現在は館内に移動している。より近くでパネルを見ることができ、また刀剣男士たちと2ショットでの撮影も可能だ。




館内の順路を先に進むとロビーに戻ることができる。ロビーのミュージアムショップでは展覧会の図録や、とくびぐみ2025セレブレイトコレクションオリジナルミュージアムグッズを販売している。ここでしか購入できないグッズもあるので、ぜひチェックしてみてほしい。

さらに売店の奥の通路、コインロッカーの先に描き下ろしイラストの展示がある。一度ロビーに戻っても、美術館から出なければ再び展示室を回ることができるので、ゆっくり展覧会を堪能しよう。

コラボ企画と連動した仕掛けがあることに気づいただろうか?
これから「時をかける名刀」を訪れるなら、刀剣乱舞ONLINEとのコラボ企画もチェックしておきたい。展示の魅力をさらに引き出してくれる企画ばかりだ。
徳川美術館×刀剣乱舞ONLINE with JR東海による推し旅コラボ企画として、名古屋まで新幹線で向かう人は、スマホから簡単に登録するだけで、刀剣男士・山姥切長義と山姥切国広による「オリジナルボイスドラマ」を楽しめる。ちなみに、車内で聞くボイスは走行中でないと再生されない仕組みのため、忘れないよう注意。このボイスドラマは、長義と国広と一緒に旅をしているような気分で徳川美術館へ向かい、美術館では「到着ボイス」を聞きながら、いざ「時をかける名刀」へ、という流れになっているのだが、実はボイスドラマからさらに音声ガイドへとストーリーが続いている。

刀剣乱舞ONLINEコラボレーショントラック付きスマートフォン専用音声ガイドは、刀剣乱舞ONLINEのゲーム内で鯰尾藤四郎役を演じている斉藤壮馬さんがガイドを務めている。展示品の解説だけでなく、ストーリー仕立てのコラボレーショントラック付きなところがポイントだ。長義、国広とともに徳川美術館に到着したら、そこから鯰尾藤四郎にバトンタッチ。解説を聞きながら、美術館デートさながら鯰尾藤四郎と展示をめぐり、見終わったあとは美術館の帰り道、自宅まで鯰尾藤四郎が一緒にお供してくれるという設定だ。
さらにこの音声ガイドはQRコードを読み込んでから12時間有効なので、帰宅後も繰り返し何度でも聞くことができる。解説とともに刀剣や刀装の画像がスマホに表示されるので、自宅でもう一度展覧会を楽しめるのだ。美術館のロビーで音声ガイドチケットを購入し、自分のスマホでQRコードを読み込むだけ(音声ガイドチケット1枚1000円※入館チケットとは別に購入が必要)。イヤホンの貸し出しは行っていないので、忘れずに持って行こう。

鯰尾藤四郎に案内されながら展示をめぐりつつ、このガイドの32番を注意して聞いてみてほしい。同展のコラボ企画と連動した仕掛けのヒントを聞くことができる。ちなみに32番は、刀剣や刀装ではなく、徳川美術館の旧玄関に関する解説となっている。ここで鯰尾藤四郎が説明してくれる「葦手(あしで)」がキーワードだ。この先は、実際に音声ガイドを聞きながら自身で最後までたどり着いてみよう。すでに同展を訪れ、音声ガイドを聞いたけれど気づかなかったという人は、この記事の最後にネタバレを載せておくので、後ほど確認してみてほしい。
ゲームきっかけでもいい!すごくおもしろい世界が待っているので、どんどん楽しんでいただけたら
徳川美術館・蓬左文庫 開館90周年記念夏季特別展「時をかける名刀」について、徳川美術館広報の吉川さんに話を聞いた。
――7月29日からスタートした後期の展示で特に注目してほしいポイント、見てほしいポイントはどんなところですか?
前期から展示を入れ替えて、後期は天下五剣の三日月宗近が展示されています。また、同じく東京国立博物館からお借りしている岡田切と、岡田重孝を切ったという同じエピソードを持つ鯰尾藤四郎が並んでいるのは、徳川美術館ならではの展示なので、ぜひ意識してご覧いただきたいです。鯰尾藤四郎と岡田切の物語は音声ガイドでも解説しているので、聞いてみてください。
――刀にまつわる物語っておもしろいですね。
そうなんです。刀は物語がきちんと残されていることの多い美術品で、特に徳川美術館には名刀といわれる刀が多くあるので、こういったストーリーも記録されていたりします。工芸品としての刀そのものの美しさももちろん見てもらいたいのですが、それ以外にも別の視点として、ストーリーや来歴のおもしろさ、歴史の奥深さもあわせて、文化が伝わるというのはこういうことなのだという点にも注目してほしいです。私たちの国である「日本」って何だろう、日本の守るべき文化って何だろうということを、あらためて考える気風というものが、近ごろ若い人たちの間にも生まれているように感じています。日本の文化について考えたときに、日本の古美術は難しくてわからないという人も多いと思うのですが、歴史やストーリーきっかけでも、もちろんゲームをきっかけでも、一度触れていただくとすごくおもしろい世界が待っているので、どんどん楽しんでいただけたらなと思います。

――刀剣乱舞ONLINEの人気をきっかけにファンの方がたくさん訪れるようになりましたが、そういった変化についてはいかがですか?
みなさんが盛り上がってくださって、徳川美術館としてはとてもうれしく思っています。刀剣乱舞ONLINEで最初に鯰尾藤四郎が登場したときに、ゲームをきっかけに知ってくださった人たちもたくさんいらして。ただ、なかには、美術館というのは美術品を見たい人たちが行く場所であり、文化の継承を目的にした崇高な施設なのだから、ゲームをきっかけにキャラクターを重ねて気軽に行っていい場所ではないと、自粛される方もいらっしゃいました。そんなふうに距離を取られる存在であったのかと、そのとき反省したんです。それから徳川美術館は、誰にでもいつもで来てくださいと、きちんとお伝えしていくことにしました。
――刀剣乱舞ONLINEから刀剣に興味を持った人たちもどんどん来てほしい、と。
等身大パネルを目的に来てくださっても、もちろん大歓迎です。でも、来たからには展示室を一周していかれると思いますし、きっと本物の美術品を一目見たら感動してもらえる、好きになってもらえるという絶対的な自信を、私たちは持っています。パネル目的、イラスト目的、何でもOKです。もっと気軽に、カジュアルに来てほしいなと思っています。

――服装や展示物の撮影など、マナーについてSNSで話題になっていましたが。
最低限のマナーは守ってほしい部分ももちろんあるのですが、かえって腰が引けてしまう部分があるくらいなら、気にせずに見に来てくださったほうがうれしいです。服装ひとつでも、危険物の持ち込みや、下駄など音がしてほかのお客様に迷惑がかかるようなもの以外なら、なんでもOKです。もしわからないことがあれば、いつでもお問い合わせください。あまり気負わずに、来たいと思う好奇心で来てほしい。美術館はそんなにハードルの高い場所ではないので、買い物や映画に行くような感覚で、日常生活の一部にしてほしいです。
――最後にファンのみなさんへ、ひと言お願いします。
今年は90周年ということで、このあとも展覧会をいろいろと企画しています。本当にどれもいい展覧会ばかりです。今年の展覧会をひととおり見ていただければ、徳川美術館のおもな名品はすべて見たと言っていいくらいです。今年を逃す手はない。今回の「時をかける名刀」に限らず、次の展覧会もぜひ見に来てください。

ここから先はネタバレ注意!コラボ企画の仕掛けとは?
冒頭で触れた、コラボ企画に組み込まれた仕掛けについてネタバレを解説しよう。まず、先述の通り徳川美術館×刀剣乱舞ONLINE with JR東海の推し旅コラボ企画では、山姥切長義と山姥切国広によるボイスドラマを聞くことができる。新幹線に乗って名古屋へ、その道中の会話と、徳川美術館に到着した際の会話になっている。到着ボイスを聞いたら、オリジナルノベルティ「きっぷ風記念カードセット」を美術館のロビー売店で受け取り、刀剣乱舞ONLINEコラボレーショントラック付きスマートフォン専用音声ガイドを購入しよう。こちらも先述の通り、鯰尾藤四郎の案内で展示室を回りながら、ガイドの32番を聞くのがポイント。

刀剣の展示室、ちょうど本作長義の展示ケースのうしろあたりが該当箇所になる。この扉の向こう側が旧玄関となっているのだが、鯰尾藤四郎がその壁に掘られた意匠について解説してくれる。「葦手(あしで)」、または「葦手絵」と呼ばれる装飾文様の一種で、文字を絵の中のモチーフになぞらえて書いたもののこと。壁に描かれた絵の中に、文字を見つけることができる。そのまま展示を一周したらロビーに戻ろう。

ロビーの売店の奥に続く廊下に描き下ろしイラストが展示されているのだが、実はこのイラストの背景にこの「葦手」を使った言葉が隠されているのだ。左右の黒い部分、よく見ると右側に「とくび」、左側に「とうらぶ」と描かれている。刀をきっかけに、いろいろな日本文化に触れてほしいとの思いで考えられた仕掛けなのだそう。こんなに細部にまで愛がこもった「時をかける名刀」、会期も残りわずかとなったが、最後までしっかり楽しみ尽くしたい。
「時をかける名刀」開催概要
会期:2025年6月14日~9月7日(日)
前期日程:6月14日~7月27日
後期日程:7月29日~9月7日(日)
会場:徳川美術館 本館展示室 / 名古屋市蓬左文庫展示室
料金:一般1600円、高大生800円、小中生500円
開館時間:10時~17時(最終入館16時30分)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
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