コーヒーで旅する日本/関東編|人々が集い、交流が生まれる場所。独自のバール文化を体現した地元の愛されカフェ「coffee stand 早川亭」

東京ウォーカー(全国版)

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刺激にあふれていて、常に先端のモノ・コトが集まっている日本一の大都市・東京。また、東京近郊の街にもそれぞれに個性があり、その分だけ衣食住を彩る店も多数。コーヒーショップも然りだ。

「暮らしやすい街にはいいコーヒー屋さんがある」
そのことを実感できるコーヒーのバトンリレーの旅へ。

東中野駅東口を出て徒歩約5分。客の9割を常連が占める、まさに地元の愛され店。初見でも気軽に立ち寄れる

第6回は東京都中野区にある「coffee stand 早川亭」。早川耕太さんが営むカフェで、都内の有名カフェやイタリアンレストランを経て2015年に開業。イタリアのバール文化に憧れ、店主なりにカタチにした空間となっている。多くの地元民に親しまれ、店主との会話に花を咲かせる、そんな気軽で落ち着く交流の場「早川亭」の魅力を探ってみた。

バール文化が楽しめる空間を目指して

早川耕太さん。常連から「似てる」と評判のイラストは自身で描いたもの

Profile|早川耕太(はやかわ・こうた)
1982年(昭和57年)、東京都生まれ。学生時代からゆったりと自由に過ごせるカフェの“空間”に魅力を感じ、アルバイト先のカフェではその魅力を体感し、コーヒーに関する知識を深めるきっかけに。次に勤務したイタリアンレストランで出合ったバール文化に魅了され、「地元民が集う場所」をつくりたいとお店のスタイルを確立していった。その後、老舗の喫茶店で働くかたわら、セミナーに通うなど抽出や焙煎の技術を高めていき、2015年に「coffee stand 早川亭」を開業。今年6月に創業10周年を迎えた。

店を構える東中野は、新宿エリアに近い都心部にありながら静かな住宅地が広がる穴場的スポット

もともとはカフェの“空間”が好きで、学生時代から友人同士やひとりでもカフェを利用することが多かった早川さん。学生時代にアルバイトをするとなったときも迷わずカフェを選び、そのなかでコーヒーに関する知識を深めていった。

「カフェは本を読んだり、友人と語りあったり、思い思いの時間が過ごせる、僕にとってとてもリラックスできる場所なんです。いざ働いてみるとカフェのよさを再認識して、自分の店を持ちたいという気持ちが徐々に芽生えていきました。当然ですがコーヒーと触れ合う機会が多かったので、興味を持つきっかけにもなりましたね。実はそれまでは、そんなにコーヒーを飲んでいたわけではなく、バリスタという言葉もここで知ったくらい。働きながらコーヒーについて興味を持ち、知識を深めたのもこの時期でした」

エスプレッソマシンは「シモネリ アッピア2」を採用。コンパクトながら、安定した抽出ができる

最初に勤務したカフェはエスプレッソに力を入れており、そのマシンに触れているうちに興味を持った早川さん。そこでエスプレッソはイタリアのバールから来ている(発祥の)ものだと知り、次はより本格的な場所で経験を積みたいと考え、エスプレッソを扱うイタリアンレストランで経験を積むことに。ここからが本格的なコーヒーの修業のはじまりとなった。またバール文化に触れたのも同店だった。カウンターをメインにしたおしゃれな内装をはじめ、メニューやサービス、シャツにベストというスタッフの服装まで本場を踏襲したスタイル。そこで体感したバールならではの空間、サービスは今のお店づくりに通じている。

交流が生まれる場所に

開業前に通ったセミナーでは、「REINO COFFEE STORE」の大友さんをはじめ、開業を志す人たちとの出会いがあった

バールとは誰でも気軽に立ち寄れ、スタッフやお客さんなどその場にいる人たちが会話を楽しみながら過ごす交流の場。また本場イタリアでは人それぞれに行きつけのお店があり、思い思いの時間を過ごしているそうだ。

バール文化を知れば知るほど憧れは強くなり、自分のお店も交流が生まれる場所にしたいと思うようになった。肌で感じたバール文化の魅力を今のお店づくりに反映している早川さん。さらにバールはエスプレッソマシンがあることが前提で、ストレートからラテなどのアレンジまでさまざまなメニューを展開しているのが定番。「早川亭」ではエスプレッソはもちろん、ドリップコーヒーを加えた2つをメインにメニューを展開している。

修業先で培ったラテアートはさすがの腕前

「ドリップコーヒーに関しては中央区銀座の老舗『十一房珈琲店』で学びました。ここは今まで勤めていたイタリアンレストランとは異なる、いわゆる日本の喫茶店。お店ではおもに抽出の技術を学べ、“豆を焼く(=焙煎)”ということを見て知ることができたのが大きかった。開業前の約4年勤務しましたが、その間は休みを利用してセミナーに通うなど独学でもコーヒーの勉強がしっかりできた期間でしたね」(早川さん)

【写真】カウンター越しに店主との会話を楽しめる。まさにバール文化が体感できる一店だ

いざ開業となったとき、観光地やオフィス街ではなく「地元民が来てくれるエリア」を基準に選んだのが、現在店を構えている東中野。バールスタイルの店を展開するうえで外せないこだわりだったので、早川さんは「よい場所が見つかった」とこの場所を気に入っている。

老若男女問わず、客層は幅広い。なかには“いつもの”レモネードを注文する小学生がいるなど、その約9割が常連という脅威のリピート率だ。また「お店の空間づくりを第一に考え、コーヒーはあくまで場所を利用するための“切符代わり”」と話す早川さん。空間を楽しむためにコーヒーは重要なアイテムと考え、こだわりを持って仕上げている。

豆を活かしたコーヒーとともに休息のときを

それぞれの常連が求める豆の種類を把握し、その日に焙煎する量を決める

「フジローヤル 半熱風式3キロ」で自家焙煎を行い、焙煎度は浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りの4種類。

唐津焼のマグカップは素朴で温かみの風合いがいい。「早川マイルドブレンド」(550円)

「焙煎で大事にしているのは豆ごとの特徴をしっかりと見極めて活かすこと。たとえばブラジル産はナッツ感のある、いわゆる日本で一般的な“ブラジルらしい味”を出すために深煎りで。またエチオピア産は繊細な果実感を損なわないように特に浅く煎る、といった感じで素材ありきで考えています。シンプルですが『単純においしい』コーヒーを飲んでほしいので、これが最適かなと」

豆は「早川亭マイルドブレンド」(100グラム900円)など。100グラム単位で購入できる

月ごとに変わる限定のドリップコーヒーも用意。販売する豆はメニューと同じく7種類

豆はブレンドやブラジル、インドネシアなどのシングルオリジンで計7種類を定番で用意している。幅広く選べるラインナップだが、迷ったときはハウスブレンドの「早川亭マイルドブレンド」(550円)がおすすめ。ブラジル産をメインにグアテマラ産、コロンビア産の3種類の豆をブレンドした一杯は、その名の通りマイルドで飲みやすい。焙煎度は中深煎りだが、これは早川さんが浅煎り〜深煎りのなかでも苦くもなく、酸味も程よい、ちょうど中間の味わいと考えるから。はじめてでも親しみやすい同店の顔として相応しい一杯となっている。

「カフェラテ」(600円)

エスプレッソ(ストレートSingle450円ほか)ももちろん、同店のイチオシ。豆ごとの特徴をより深く味わうことができ、バールスタイルを体感できるメニューとなっている。

本の持ち込み、持ち帰りが自由にできるなど、人々が集う場所だからこそできる取り組みも

取材時にも店には次々と常連が訪れ、思い思いの時間を楽しむ様子が印象的だった。この場所は人が途切れることなく何気ない会話を楽しみながら交流を深める、早川さんなりのバールスタイルがカタチとなっている。

そして早川さんのほんわかとした人柄もまた、店全体のゆったりと落ち着いた雰囲気を醸し出す要因のひとつに。そんな「早川亭」で休息のときを満喫してみるのもいいかもしれない。

コーヒー各種に加え、月替わりのスイーツメニューも用意

「coffee stand 早川亭」レコメンドのコーヒーショップは「REINO COFFEE STORE」

「東京都練馬区にある『REINO COFFEE STORE』。店主の大友さんとは開業前に通っていたセミナーで知り合い、それから親交があります。店主は勉強熱心な一面があって、自家焙煎で良質な豆の香りや風味を出したコーヒーはもちろん、スイーツも確かな腕前なのでぜひ注目してほしいですね」(早川さん)

【「coffee stand 早川亭」のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 半熱風3キロ
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エスプレッソマシン(シモネリ アッピア2)
●焙煎度合い/浅〜深煎り
●テイクアウト/あり(550円〜)
●豆の販売/100グラム900円〜

取材・文/GAKU
撮影/大野博之(FAKE.)

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