小林薫、舞台挨拶で74歳の誕生日を祝福される!満島ひかりは戸塚純貴の“空っぽ”の演技に驚愕!?『ホウセンカ』完成披露上映会レポート
東京ウォーカー(全国版)
2021年に放送され、予測不能なストーリーで話題を呼んだTVアニメ『オッドタクシー』。同作を手掛けたクリエイター・木下麦さん(監督・キャラクターデザイン)と此元和津也さん(原作・脚本)が、再びタッグを組んで贈るオリジナルアニメ映画『ホウセンカ』(2025年10月10日(金)公開)の完成披露上映会が、9月4日に新宿バルト9(東京・新宿)で開催された。舞台挨拶には小林薫さん、戸塚純貴さん、満島ひかりさん、宮崎美子さん、ピエール瀧さんといったキャスト陣と木下麦監督が出席し、アフレコ時のエピソードや、印象的だったシーンなどについてトークを繰り広げた。

イベント終盤には小林薫の誕生日を祝うサプライズも!
上記のクリエイタータッグに加え、『映画大好きポンポさん』(2021年公開)や『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022年公開)を手掛けた制作スタジオ・CLAPが参加していることでも期待値が高まる本作。小林さんと戸塚さんは、独房で孤独な死を迎えようとしている無期懲役囚・阿久津の現在と過去を、宮崎さんと満島さんは、阿久津のパートナー・永田那奈の過去と現在を担当。そしてピエール瀧さんは人の言葉を操るホウセンカ役…といった配役で、そのストーリーは以下の通り。
無期懲役囚の老人・阿久津が独房で死を迎えようとしていたとき、声を掛けたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。“会話”の中で、阿久津は過去を振り返り始める。1987年、夏。海沿いの街。しがないヤクザの阿久津は、兄貴分・堤の世話で、年下の那奈とその息子と、ホウセンカが庭に咲くアパートで暮らし始めた。縁側からは大きな打ち上げ花火が見える。幸せな日々であったが、ある日突然、大金を用意しなければならなくなった阿久津は、組の金3億円の強奪を堤と共に企てることになり……。

舞台挨拶が始まり、まずはキャスト陣がひと言ずつ、映画の完成に対する喜びのコメントを述べるなか、木下監督も来場者に向けて感謝の言葉を述べた。
【木下麦監督】
本日は劇場まで足を運んでいただきまして、ありがとうございます。この映画はオリジナルの作品であり、なおかつ、けっこう攻めた内容にもなっています。収録からだいたい2年くらい経って、すべての作業を終えて、こうしてキャストの皆さんと一緒に、大勢の方にお披露目することができてうれしく思っています。本当にいい映画になったと自負しておりますので、どうぞ最後まで楽しんでいってください。

続けて、阿久津を演じた感想を聞かれた小林さんは、実写映画とは違う、アニメならではの収録のスタイルはなかなか大変だったと話す。
【小林薫】
「正直な話、役を演じたという実感がなくて。アニメの場合、すでにキャラクターが存在していて、そこに声だけを入れる作業なんですね。僕らが普段やっている仕事でいうと、実写映画の場合は、まずメイクさんがいて、衣装に着替えて、セットの中に入っていって。相手役と向かい合いながら、その空間で芝居をする…という形をとるので、スタンドマイクの前に立って、画面を見ながら声だけで芝居をするというのは馴染みがないといいますか。どうしても違和感があるんです」
「実写だったら全身で芝居をするところを、アニメだと声だけで表現しないといけないので、その分、余計に気合が入って、踏ん張ってしまうといいますか。普段とは違う力の入れ方をしたので、非常に疲れてしまって。収録の後は放心状態で家に帰ったんですけど、それもまさに、この現場ならではの経験でした」

そんな小林さんと一緒に収録に臨んだピエール瀧さんは、よかれと思ってしたことで、かえって恥ずかしい思いをしたという。
【ピエール瀧】
「収録では小林さんと二人で声を当てさせていただいたんですけど、僕の中では小林さんにアニメのイメージがなかったので、“ここは僕がいろいろとお教えしなければ…”と思い、アフレコの段取りとかをアドバイスさせていただいたんですね。そうしてひとしきりお伝えしたあとに、“そういえば小林さんって、スタジオジブリの作品にめちゃめちゃ出てるよな!?”ということを思い出して。ジブリ作品に何本も出演されている方に、えらそうにいろいろ言っちゃったよ…となって、非常に気まずいといいますか、ものすごく恥ずかしい思いをしました(笑)」
「とはいえ、そこからは気持ちを切り替えて、小林さんと2日間、みっちり収録をさせていただきました。間近で小林さんのお芝居を拝見させていただくという、なんとも貴重で濃密な体験をさせていただきまして、感謝の限りです」

“過去の阿久津”を演じる戸塚さんは、先に収録された小林さんの“現在の阿久津”の声を参考にしつつ、演技のプランを考えたという。
【戸塚純貴】
「アニメのアフレコは初めての経験で、普段やっているお芝居とはまた違う作り方でしたし、収録するタイミングがそれぞれバラバラだというのも衝撃的でした。阿久津というキャラクターに関しては、先に小林さんが収録されていて。その声を聞いたうえで、僕が過去の阿久津を演じる…という段取りだったんですけど、僕が考えていた阿久津のイメージと、小林さんが演じられた阿久津はちょっと違っていて。最初は戸惑ったんですけど、ただ単に真似をするのではなく、最終的に小林さんの演じられる“現在の阿久津”につながっていく…ということを意識して。そこに自分の考えも落とし込み、“過去の阿久津”を演じさせていただきました」

“現在の那奈”を演じた宮崎さんは、アニメならではの収録の形に慣れておらず、終始、バタバタしていました…と話す。
【宮崎美子】
「私は小林さんとピエールさんよりあとの収録だったので、お二人の声を聞かせていただきながら、お芝居をさせていただきました。ただ、アフレコは不慣れなので、なかなか声優さんのようにうまくはできなくて…。隣の人に話しかけようとすると、ついついマイクから外れて、本当に横を向いちゃうんですね。それで、“あ、違う違う!”となって、録り直しをお願いして…ということが何度もあって。私の収録時はスタジオはずっとバタバタしていましたね」

“過去の那奈”を演じる満島さんは、自身の収録が始まる前に宮崎さんと会って、キャラクターのイメージのすり合わせをしたそうで、それにより、スムーズに役作りに取り組めたと話す。
【満島ひかり】
「収録の前に宮崎さんとお会いして、那奈の人物像についてお話をする機会があったので、阿久津と比べるとイメージはつかみやすかったように思います。私の視点で見る那奈と、宮崎さんの視点で見られる那奈には、細かいところで違いがあったんですけど、それをすり合わせることで、キャラクター像がどんどん膨らんでいって。“ものすごくエネルギーが溢れているけど、純粋な部分や優しい部分もある女性”というイメージで、演じさせていただきました」

そうして那奈のイメージを固めたうえで、戸塚さんと一緒に“若いころの阿久津と那奈”の芝居に取り組んだそうだが、満島さんにとって、そこでの戸塚さんの芝居は非常に印象的だったという。
【満島ひかり】
「これは悪口じゃなくて、いい意味でなんですけど、空っぽのお芝居なんですよね。本当はすごく考えたうえで“何も考えないで喋っているんだろうな”と感じさせるお芝居をされていると思うんですけど、収録ではそういった場面がいっぱいあって。作中では、いろいろな情報が飛び交っているんですけど、それを見ようとせず、反芻もしない阿久津のイメージに、戸塚さんの“空っぽさ”がぴったり当てはまっていて、見ているうちにどんどん阿久津を愛おしく感じるようになりました」
これを受けて戸塚さんは「それ、本当にいい意味で言ってるんですよね?記者の皆さん、記事ではちゃんと、そのあたりの意味が伝わるように書いてくださいね!」と話し、会場を沸かせた。

さらにイベントの後半では、9月4日が小林さんの74回目の誕生日…ということで、サプライズのお祝いも実施。戸塚さんからは花束が、そして木下監督からは、アニメのカラーモデル風に描かれた小林さんの似顔絵が贈られ、これらを受け取った小林さんは「最初に見たときは“阿久津が描かれているのかな…”と思ったんですけど、アニメ風のデザインで僕を描いてくださったということで、こんなにうれしいことはないですね。家宝にさせていただきます!」と話し、客席からは歓声があがった。


取材・文=ソムタム田井
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